7 / 68
第一章 英雄の憎悪
06 大隊長の到着
しおりを挟む
「お待ちしておりました、大隊長」
ヴェルヘルム大隊長の眼前には自らの配下である五人の中隊長が並ぶ。
声を掛けたのは、筆頭中隊長であるブラド千人将だ。
彼はこの大隊の中でヴェルムに次ぐ地位に就く。
我らがグレンは、この時点で第二中隊長なので、ヴェルヘルム大隊(兵五千)の中では三番手にあたる地位に居た。
「お待たせして申し訳ありません、ブラド千人将。」
五人の前に姿を現したのは。身長180も後半に届こうかと言う大柄な男であった。
しかし威圧感などを全く感じさせない穏やかな物腰が、彼の育ちの良さを表していた。
背中まで伸ばした真っ黒い髪を一つに結び上げた、気品にあふれる端正な顔立ちの色男・・・
それが世間の一般的なヴェルヘルムに対する評価である。
対するグレンと言えば、身長も170に届くかどうかの、この国の男はもちろん女にも容易に抜かされる程度の、小男と言って差し支えない程度の背丈だった。
肩まで伸びた髪の色は黒。
瞳の色は、意思と目的を表すが如く漆黒。
鍛え上げられた両腕。
顔立ちだけで言えば悪くない。
だがその顔面は、大小の傷に覆われている。
左耳は一部が欠損している。
そして分厚い首の右側には、今こうして生きているのが不思議な程の、刃物による大きな裂傷痕が見受けられた。
この男はこの当時、皇國東部戦線において、敵味方を問わずある渾名で呼ばれていた。
“戦闘龍”グレン そう呼ばれていたのだ。
「ご指示通り、全中隊用意は整っております」
「ありがとうございます。流石に手際がいい」
2週間も放置しておいて手際も何もあった物ではないだろうが、その点を指摘するだけの度胸をグレンは持ち合わせてはいなかった。
他の中隊長に至っては特に疑問にも感じていないようだった。
“くそ狸が・・・”
グレンは腹の内で思わず毒づいた。
この大隊長には明確な二面性が見受けられる。
他の将兵を始めとして、その漆黒の本性と真紅の目的に気付いている者はほとんどいなかった。
10年近く仕えているグレンにして見ても、それら全てを把握しているわけではない。
グレンはグレンで、護国とは全く別の目標の為に軍務に服し、ヴェルヘルムの下に降ったのだ。
その目的とは
報復である。
ヴェルヘルム大隊長の眼前には自らの配下である五人の中隊長が並ぶ。
声を掛けたのは、筆頭中隊長であるブラド千人将だ。
彼はこの大隊の中でヴェルムに次ぐ地位に就く。
我らがグレンは、この時点で第二中隊長なので、ヴェルヘルム大隊(兵五千)の中では三番手にあたる地位に居た。
「お待たせして申し訳ありません、ブラド千人将。」
五人の前に姿を現したのは。身長180も後半に届こうかと言う大柄な男であった。
しかし威圧感などを全く感じさせない穏やかな物腰が、彼の育ちの良さを表していた。
背中まで伸ばした真っ黒い髪を一つに結び上げた、気品にあふれる端正な顔立ちの色男・・・
それが世間の一般的なヴェルヘルムに対する評価である。
対するグレンと言えば、身長も170に届くかどうかの、この国の男はもちろん女にも容易に抜かされる程度の、小男と言って差し支えない程度の背丈だった。
肩まで伸びた髪の色は黒。
瞳の色は、意思と目的を表すが如く漆黒。
鍛え上げられた両腕。
顔立ちだけで言えば悪くない。
だがその顔面は、大小の傷に覆われている。
左耳は一部が欠損している。
そして分厚い首の右側には、今こうして生きているのが不思議な程の、刃物による大きな裂傷痕が見受けられた。
この男はこの当時、皇國東部戦線において、敵味方を問わずある渾名で呼ばれていた。
“戦闘龍”グレン そう呼ばれていたのだ。
「ご指示通り、全中隊用意は整っております」
「ありがとうございます。流石に手際がいい」
2週間も放置しておいて手際も何もあった物ではないだろうが、その点を指摘するだけの度胸をグレンは持ち合わせてはいなかった。
他の中隊長に至っては特に疑問にも感じていないようだった。
“くそ狸が・・・”
グレンは腹の内で思わず毒づいた。
この大隊長には明確な二面性が見受けられる。
他の将兵を始めとして、その漆黒の本性と真紅の目的に気付いている者はほとんどいなかった。
10年近く仕えているグレンにして見ても、それら全てを把握しているわけではない。
グレンはグレンで、護国とは全く別の目標の為に軍務に服し、ヴェルヘルムの下に降ったのだ。
その目的とは
報復である。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
サディストの私がM男を多頭飼いした時のお話
トシコ
ファンタジー
素人の女王様である私がマゾの男性を飼うのはリスクもありますが、生活に余裕の出来た私には癒しの空間でした。結婚しないで管理職になった女性は周りから見る目も厳しく、私は自分だけの城を作りまあした。そこで私とM男の週末の生活を祖紹介します。半分はノンフィクション、そして半分はフィクションです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる