皇國の防戦記

長上郡司

文字の大きさ
10 / 68
第一章 英雄の憎悪

09 終了報告

しおりを挟む
「クソっう・・・お!ごはっ!」




仮眠中のグレンが飛び起きた。




その拍子に、頭から簡易ベッドを転げ落ちた。




「隊長、何やってんですか?・・・」




数少ない年下の小隊長であるエリアが、まるで不審者を見つめるが如く話しかけてきた。




作戦終了後の報告書を投げられた挙句に、惰眠を貪った挙句の果てにベッドから転げ落ち、頭を




強打して唸っている上司を目の当たりにしては、まあ無理も無いが・・・




「夢見が良さそうだったので、起こさないでおきましたよいやぁ出来る部下だなぁ、我ながら」




「・・・最低の目覚めだよ、畜生が」




“こんな所で何をやってんだ俺は・・・”




「・・・?どういう状況だったっか?」




「戦闘は終了ですよ、被害は予想よりも少なく抑えられました。うちと第一中隊を投入後に決着は




付きました。




アイラはやはり凄いですね、瞬殺でしたよ」




「あぁ、そうかあいつか・・・」




「現在は城門を封鎖、守備固めを行っています。これでどうにか守りきれるでしょう」




「・・・そうか」




いまいち記憶に無い




あまりにも夢見が悪かったからだろうか?




「・・・隊長、大丈夫ですか?戦り終わってすぐに寝込んだから他の者も心配していましたよ」




「すまんかったな、それは俺がやらなきゃいかんのに・・・」




「別に構いませんよ、いつかは自分もやることですから」




このエリアと言う男は、憎まれ口こそ叩くものの、確かな実力を持ち合わせた優秀なグレンの




部下である。




年齢はグレンの一つ下で、主に諜報活動による情報収集を得意とする。




対人の戦闘はあまり得意ではないが・・・




「エリア、終わったよ・・・あっ隊長起きたの?」




天幕に入ってきたのは、先ほどの会話にも出てきたアイラと呼ばれる小柄な女だ。




「あぁ、何が終わったんだ?」




「掃討」




「・・何持ってんだ?お前」




「これ?お土産」




グレンに投げて渡したそれは、人間の生首だった。




「いらねえよ、俺に渡してどうすんだこんなもん。本営に行けや」




「めんどい」




「つれないですねえ隊長も。素直に褒めたらどうですか?喜びますよ?」




「この女がそんな殊勝な性格だと思ってんのか?お前」




「いやぁ、自分は褒められたら素直に嬉しいですよ?もっと褒めてくださいよ隊長」




「気持ち悪りぃ、吐きそうだわ」




一見和やかな雰囲気の会話だが、三人の中央には、未だに血が滴っている敵の首が




転がっていた・・・

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

サディストの私がM男を多頭飼いした時のお話

トシコ
ファンタジー
素人の女王様である私がマゾの男性を飼うのはリスクもありますが、生活に余裕の出来た私には癒しの空間でした。結婚しないで管理職になった女性は周りから見る目も厳しく、私は自分だけの城を作りまあした。そこで私とM男の週末の生活を祖紹介します。半分はノンフィクション、そして半分はフィクションです。

処理中です...