皇國の防戦記

長上郡司

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第三章 山岳城塞奪還戦

31 本命の今頃

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「きっついなこの崖・・・!」




「黙って登れ、右翼はとっくにやり合ってんだぞ・・・」




右翼のブラド隊が必死に敵を引き付けている時、グレン率いる左翼部隊は、頑張って崖を踏破している所だった。




「くっそ・・・こっち・・・外れだったかな・・・右翼は・・・飛び降りるだけだもんな・・・」




「何なら今飛び降りさしてやっても良いぞ、ガラン」




「ばか言え・・・身内に殺されてたまるか・・・せめて戦闘中に死ぬわ」




「お前が死んだら子供は片親だぞ、ガラン。まだ二歳だろ」




その隣を頑張って登っているヴォルゲンからツッコミが入る。




「しかし・・・キツイなこの崖は・・・」




「だから元々見張りが手薄らしいぞ、斥候の話だとな」




上を見ると、とっくに登りきっているアイラとエリアが手を降っている。




「ガラン見ろよ、頑張れってさ。可愛い後輩達が」




「俺は・・・アイツ等を・・・可愛いと・・・思ったことは・・・・・・無い」




息も絶え絶えだが、自分の主張ははっきりとしているガラン。




「よいしょっと・・・よしガラン手ぇ出せ」




先に登りきったグレンが、天に召されそうなガランを引き上げる。




「ガラン大丈夫かお前、今から戦うんだぞ?」




続いて登りきったヴォルゲンが、水を飲みながら心配する。




「俺にも・・・くれ・・・」




「飲みきっていいぞ」




ゴクゴクと、一気に水袋の中身を飲み干すガラン




「何とか、大丈夫だ・・・戦える」




「礼を言えよ、まずは」




「ありがとな、ヴォルゲン」




グレンの突っ込みを受け、ヴォルゲンに感謝を伝える。




「隊長、まだ行かないの?」




先に登りきっていたアイラが尋ねてきた、すごく涼しい顔で。




「一人でいってもいいぞ、俺らはもうちょっと集まってきたら出るから。何なら一人で敵皆殺しにしてきてくれや。」




アイラを見向きもせずに答えるグレン。




「またそうやって意地の悪い事を言うなよ、グレン・・・」




辛辣な物言いのグレンをなだめるヴォルゲン




「今、どのくらい登り切った?」




「・・・・・大体、七割ほど・・・です・・・・」




今にも死にそうな顔のヴィクトルが答える。




何とか登りきった上で、数を数え報告したのだ。




素晴らしい職業意識と言える。




「そうか、なら八割が踏破した段階で突撃を仕掛ける・・・準備しろ」




「・・・承知・・・しました・・・」




「・・・ん?エレナは?」




「・・・あそこでぶっ倒れてんのエレナじゃないか?」




ガランが指差す方向を見るとそこには




「・・・あぁ・・・エレナだなありゃ・・・」




エレナがうつ伏せで倒れている所を、彼女の部下が介抱している。




「ありゃあ、無理じゃないか・・・隊長」




「・・・・・・八割方登りきったな!行くぞ!」




エレナは置いていくことにした。




❝城塞を開放してから迎えに来よう❞、そう思ったグレン達だった。

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