皇國の防戦記

長上郡司

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第三章 山岳城塞奪還戦

44 亡国の遺言

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グレンの刃はボルゾフの右肩から、胸を抜け左の脇腹までを、袈裟懸けに切り裂いた。




体格差が大きかった為か、完全な両断は出来なかった。




たが、腹の傷口から腸を垂れ流している。




ボルゾフは片腕で傷口を押さえ、もう片腕と両膝を地に着いた。




「ごはっ!・・・」




口から大量に吐血をし、呼吸が荒い。




最早、落命までは時間の問題だ。




「素晴らしい・・・グレン・・・本当に、よくぞ・・・練り上げた・・・」




荒い呼吸の合間合間に、勝者グレンを讃えるボルゾフ。




「申し訳ありません、ボルゾフ将軍。即死させられませんでした。

今、止めを」




「いや・・・いい・・・」




「苦しむことになりますよ」




「無駄に・・・生き長らえてしまった・・・今まで・・・」




「え?」




「隊長、聞いてやれ」




「ヴォルゲン?」




「かつての英雄の最期だ」




「あぁ・・・」













「人質に取られた私は・・・戦いもせず、敵に降った・・・だがボルドは・・・戦った」




過去の悪夢がボルゾフの脳裏に蘇る。




「グレン・バルザード・・・」




「はい」




ボルゾフの呼び掛けに、グレンは素直に応える。




「お前は・・・私みたいに、為るな・・・」




「・・・ええ」




英雄からの忠告を受ける。




「ボルド・・・すまない・・・」













そうして、塞将・ボルゾフは敗死した。










「・・・・・・ヴォルゲン」




「あぁ、良いのか?」




「やってくれ」




「わかった」










ヴォルゲンは大きく息を吸い込み、叫ぶ。










「帝国塞将、ボルゾフの首!我らが“戦闘龍”グレン・バルザード隊長が!!討ち取ったァ!!!」













城塞内に歓声が鳴り響いた。

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