皇國の防戦記

長上郡司

文字の大きさ
49 / 68
第三章 山岳城塞奪還戦

48 あのクソ野郎

しおりを挟む
城壁の階段に座り、グレンを始めとした中隊の隊員達は、何かを眺めていた。




それが何かは、全員が分かっている。




だが、脳が理解を拒絶しているのだ。




何故か?










「おい・・・ヴォルゲン」




「俺は、知らんぞ・・・」




ヴォルゲンは、目をそらす。




❝何であいつが・・・❞




城門が開かれた。




第六十大隊の総力を結集し、この固く閉ざされた城門は落とされたのだ。




「おかしいだろ、ガランさんよお・・・」




「いやいや、俺に言うなよ・・・」




ガランは苦笑い以外に何も反応が出来ない。




❝どうやって・・・❞




当然、大隊の面々は我が隊のみで落としたとは誰一人として考えてはいない。




正面から、死を覚悟の上で囮となり、散っていった多数の同胞たちの活躍が合ってこそ、自分たちは今こうして自らの足で、城壁の上にいるのだ。




「お前ら、誰も気づかなっかたのか?」




「隊長も一緒でしょう?・・・」




ヴィクトルは、只々呆然としていた。




❝いつのまにここまで・・・❞
















「はっはー!!!この城は!!このクロード・ヴァルテウスが乗っ取たァ!!!!」




何故か、城門が開くと同時に、後方待機中だったはずのクロード中隊がなだれ込んで来た。




瞬く間に残兵を蹴散らすと、クロードはボロボロのグレン第二中隊の前で調子に乗り腐っていた。










その様を見たグレンは静かに怒りを滾らせていた。




首筋と両腕には太い血管が浮き出している。




結果的に、クロードがこの城の城門突破一番乗りとなってしまった。




ただ後方で待機していただけの男が・・・



















「エリア、あいつに向かって弩を撃て、頭な」




「いや、身内殺しは流石にちょっと・・・」




「アイラ、あいつ切ってこい、胴丸バッサリと」




「私の仕事は終わったから嫌」




「じゃあ、メルヴィン突き殺せ」




「あいつ嫌いなので、近寄りたくないです」




矢継ぎ早に同胞殺しの指示を出すが、尽く断られるグレン。




先程までの味方に感謝的な気持ちは何処へやら・・・




「隊長、気持ちは分かるが・・・」




「ほっときましょうよ隊長、精神衛生に悪いだけですよ、あんなの相手にしても」




見かねたヴォルゲンとヴィクトルが止めに入る。




「・・・はぁ、分かったよ」




部下の慰めに素直に応じることにしたグレンは、そのまま立ち上がりブラドやソフィアの元に向かおうとした所だったが・・・




「どうした!?グレン!!えらいズタボロだなあ!!腕鈍ったんじゃねえの!?あっはっはっはっは!!!」




グレンに気がついたクロードが、無邪気に挑発した。




それを聞いたグレン中隊の配下は、何かを察したようにそっと、グレンのそばを離れた。




ヴィクトルに至っては頭を抱えている。




「・・・・・くっそがァ!俺ン直に行ってくらァ!!こンのボケクズがァ!!!」




グレンは全速力で走り出し、クロード中隊の元に向かった。




かくしてクロード・ヴァルテウスの命運はここに尽きた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

サディストの私がM男を多頭飼いした時のお話

トシコ
ファンタジー
素人の女王様である私がマゾの男性を飼うのはリスクもありますが、生活に余裕の出来た私には癒しの空間でした。結婚しないで管理職になった女性は周りから見る目も厳しく、私は自分だけの城を作りまあした。そこで私とM男の週末の生活を祖紹介します。半分はノンフィクション、そして半分はフィクションです。

処理中です...