聖騎士たちに尻を狙われています!

トノサキミツル

文字の大きさ
13 / 14

13

しおりを挟む
 青白く月光が輝く夜。
 目を覚ますと、すぐ横でクロが腕を組んでむすっとした顔で立っていた。いや、そんなんじゃない。
 甲冑を脱いでいるが、刀を抜かんばかりに激昂し、猛烈に怒っている。
 まさに鬼の形相というか、降魔の相というか、とにかく恐ろしい顔をしていた。

「……おい。どうみても、…………俺には事後にしかみえないのだが」

 クロの声が怒りで尖っている。
 ごもっともというべきか。
 そうだともいうべきか。
 俺はいそいそと起きあがり、正座した。
 なんせ、浴室でも行為はとまらず、そのまま寝台に連れていかれ、もつれた糸のように絡みあってしまった。
 意識が遠ざかりながらも抵抗しても、しっかりと開発された身体が敏感に反応を返してとまらなかった。ペットを散歩してきた側にとって卑猥極まりない行為だとおもう。

「ええっ、もう帰ってきたの?」
「ランス、どういうことか説明してもらおうか?」
「え~、めんどくさいよ~」
「面倒臭いならそのままでいろ。ソウタは服をきろ」
「……はい」

 いそいそと、クロから手渡された上着を羽織る。
 ランスは着替える気はないらしく、全裸のまますらりと脚を伸ばして、手枕のまま横になっている。

「一発やっただけじゃん。あっ、一発じゃないや。何発だろう。そうだなぁ、五発はでたかな。でもさ、メスイキをなんどもしながらたくさんだしたしね……っ」

 そのときだ。
 部屋中に音がどすんと響いた。
 剣を引き抜き、迅雷の勢いで剣を落とし、ひらひらと羽毛が真上から落ちてくる。
 目の前で、長い剣が寝台にまっすぐと突き刺さっている。
「いっ……」
「…………だまれ。俺が聞きたいことはそうじゃない」
「ええ~。じゃあさ、なにを聞きたいの?」
「同意は?」

 クロは質問をはね返した。目が怒りで燃えている。

「は?」
「同意はあったのか?」

 クロは激しい目で睨みつけて、刺さっているものを持ちあげた。そして剣を正眼にかまえて、いまにも斬りかかりそうだ。

「あるわけないじゃん。そんなのどうでもいいじゃん~」

 クロはランスに先鋭な切先を突きつけた。ぎろりと凄まれて、ひっと横にいる俺は飛びあがる。

「だまれ。俺にとっては大事なことなんだ。ソウタの高潔な貞節を汚し、強引に奪ったことは許すことはできない。処女を奪ったんだぞ」

 いや、ケツに処女はない。
 だけど俺の尻を大切にしてくれてうれしい。いや、いやいやいや。奪うとか貞潔とかちょっとわからない。

「ちょっ……」
「ソータのはじめてもらってごめんね~?」
「いい加減にし……」
 
 ランスの挑発的なせりふに、握りを力をこめて掴み取っている。全身が、怒りでわなわなと震えている。
 やばい、これはやばいやばい。
 俺はどうどうと手をだして、思いとどめさせる。

「ま、まあまあ。……クロ、とりあえず剣は危ないからさ。……し、しまえよ」
「……………そうか」

 不機嫌そうに眉をひそめ、苛々としながら剣を鞘におさめた。露骨に不満の表情をみせている。
 ランスといえば、両手にぐっと上に伸ばしてあくびをしている。

「結婚の話もしちゃったし~」
「俺は結婚などしない」
「え、なんで……」
「その話はすでに破談してる。許嫁はすでにいない。そもそも七年も国を出ているんだ。むこうは所帯をもって、りっぱな賢妻になっていると聞いている。それについてはランス、おまえにも言ったはずだ」

 クロはうんざりと舌打ちをして、またかとあきれている。

「そうだっけ~?」
「そうだ」
「そ、そうなのか。そうなると、ずっと童貞じゃん」
「……そうだな」

 ぎろりとすごまれて、俺はしょんぼりと背を丸める。
「あ、薬飲ませてやったから、ソータはわるくないよ」
「どういうことだ?」
「痺れ薬を飲ませたんだよ。なんだかクロがあげた指輪を見てたらイライラしちゃってさ。指輪のせいで、僕のギフトが能力を増したみたい」
「……おまえのギフトのせいか」
 クロの凛々しい眉がぴくりと上がる。

「そうかも。でもクロのギフトも増し増しですごいでしょ~。なんかヤバノちゃんといるとギフトが累増していく気がするんだよね~」
「…………そうだな」
「は?」
 ふたりとも見つめあって、頷きあっている。ど、どういうことだよ。
 ギフト、執着って……。

「俺たちのギフトはやっかいなんだ。俺は獲物に対する熾烈な執着を持っている。それとランスは相手を放埓的に操りたいという性的倒錯性がそうだ」
「……は?」
「ちょっと人より性欲があって、閉じ込めたくなるだけだよ~。いわゆるヤンデレというかそんな感じかな~」

 なにそれ。
 やばいやつじゃん。
 おもわず、のろのろと尻が後退る。クロは静かに首を横にふって距離を縮める。

「ランス、おまえのはちょっとじゃない」
「だからさ、ヤバノちゃんといると満たされて、もっともっと気持ちよくさせて、監禁して貞操帯つけて喘えがせ……」
「それ以上はやめろ。黙ってろ」
「えー。だって僕の本望だよ。えっちなカラダだから聞いてほしいんだよ~」
「ランス、黙れ」
「はいはい」
「…………わ、わ、わ。こ、こえぇよ」

 なんだ、このふたりは。
 いままで一緒にいたのはなんだったのか。
 剣の才能があるとか。
 魔法や治癒能力があるとか。
 体力があるとか。
 そういうギフトじゃなかったのかよ……。
 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

「これからも応援してます」と言おう思ったら誘拐された

あまさき
BL
国民的アイドル×リアコファン社会人 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 学生時代からずっと大好きな国民的アイドルのシャロンくん。デビューから一度たりともファンと直接交流してこなかった彼が、初めて握手会を開くことになったらしい。一名様限定の激レアチケットを手に入れてしまった僕は、感動の対面に胸を躍らせていると… 「あぁ、ずっと会いたかった俺の天使」 気付けば、僕の世界は180°変わってしまっていた。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 初めましてです。お手柔らかにお願いします。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話

八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。 古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

ハッピーエンドのために妹に代わって惚れ薬を飲んだ悪役兄の101回目

カギカッコ「」
BL
ヤられて不幸になる妹のハッピーエンドのため、リバース転生し続けている兄は我が身を犠牲にする。妹が飲むはずだった惚れ薬を代わりに飲んで。

処理中です...