殿下、悪役騎士を堕として、騎士育成学園での円卓瓦解を防ぎますのでご安心ください

トノサキミツル

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第十一話 森

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 パカ……、パカ……、ゴリ。
 ゴリ、パカ……、ゴリゴリ。パカパカ。
 パカパカ。ゴリゴリ……、パカパカゴリゴリ……、ゴリ、ゴリ……。
 馬にまたがりながら舗装されていない道を歩くたびに、ケツに硬いものが当たって擦りつけられる。
 これはそういう音だ。
 灌木や草木が生い茂る森なのに、俺の気持ちはどよんと沈んでいた。

 ……あっ、アナにはいろうとしてねぇか?

 陽光は緑に遮られ、落ちてくる光が枯葉を照らすなか孔の縁にぐいぐいと剛直がおしあてられる。
 俺は眉をひそめながら、しっかりと鞍のへりをつかんで前方を見つめた。そして、少し間をおいて口をひらいた。

「あの……」
「どうしたの?」
 柔らかな口調が耳許にひびき、あまい香りが鼻を打つ。平然とした声音で、耳たぶをくすぐる。
「あのさ……」
「具合でもわるい?」

 べったりと身体を密着させながら、穏やかに応えてくるこの男。

 ……ガチガチに勃起している。

 ありえない。

 振動するたびに、バキバキのちんぽを尻たぶにすり寄せてくるのだ。
 しかも澄ました顔をして、振り返ると湖のような静謐のような笑みでほほ笑み返してきた。


「きみさ、……たっ、……てない?」
「えっ」

 えっ……ってなんだ。
 えって。

「ちんこ、勃ってるよね?」
「えっ、そうかな?」
 なんなんだ、そのわざとらしい反応は。
 めちゃくちゃ勃起してるの、さっきからバレバレなんだよ。


「……つかぬこと聞くけど、ランスロットくんさ、勃起してるよね。アナルにいれようとしてない?」
「うん」

 だよね。
 知ってた。
 即答か。

「……」
「……」

 沈黙が落ちたが、すぐに湖畔の騎士とよばれる男が口をひらいた。

「あのさ……」
「なに?」
「アナルじゃなくて、アヌスだよ。アナルだと形容動詞になる」
「えっ、そうなの!?」
「うん。それにさランスって呼んでよ。くんづけ、なんかしっくりこないからさ」

 ……からさ、じゃねぇよ!!

「……ランス?」
「そう!」

 俺はびっくりしながら振り返ったが、あたりまえのように男は頷く。
 ちなみに、ちょっとちんぽの先っちょがぴくんと動いた。
 チンピクで答えるなよ。
 機嫌が良くなったランスロットを無視して、俺はぷいっと前方を向き直した。
 とりあえずあと少し我慢すれば、数十分もしないうちに到着する。とにかく馬を歩かせて進まねばならない。遅れたら、罰として週末の予定が潰されてしまう。

「……あのさ、俺たちそんなに仲よくないよ」
「だって、契ったんだよ?」
「あれは事故だよ」
「事故だとしても、愛を誓ったじゃないか」
「……記憶にないんだ。ごめん、目が覚めたら、同室の奴が服を着換えさせててくれてさ」
「記憶がない……? 服を着換えさせた?」

 馬の動きがぴたりっと止まった。

「……う、うん」
「じゃあ、僕となにをしたのかも忘れたの?」
「あ、それは覚えてる」
「じゃあ、僕のことを愛してくれるんだよね」
「……そ、それは」

 ちょっと、展開はやすぎて無理でしょう……。
 つうか、重い。気持ちが重い。
 背中にのしかかってるのも重い。
 美形じゃなかったら、ちょっと危ないかなって思う。

「神に誓ったじゃないか」
「そ、そうだっけ……」
 
 やべぇ、まったく記憶にない。
 つうか、一回やっただけで彼氏ヅラじゃなくて結婚したかのようにいうのやめて欲しい。
 真剣な眼差しが全身を突き刺すが、俺は前を向き続けた。
 うう。ガウェインとアーサーさま達、どこ行ったんだよお……!!
 さっきまで前方にいたくせに、曲がったとたん姿がみえなくなったじゃないか……!





 時間は一時間前にさかのぼる。

「げ」
「……よかった。同じだね」

 安堵するような声、やめろ。
 あああああ。よかったじゃねぇよ。
 さ、さいあくだ。
 俺はくじ引きで発狂してしまうところだった。

「ちょっと……、ランスロットの相手あのクソチビだって……」
「ね、マジであの平凡庶民ありえないわ」
「そうだよな、僕もそう思ってる」

 くすくすとジャニ系男子が後ろで笑っている。
 はいはい。俺もそう思うわ。
 なんで、アーサーさまじゃなくて、このキラキラ野郎とペアを組まされるわけ?

「ランスロット、俺が代わる」
「いたっ」
「必要ないよ。くじ引きなんだから、神の身のままに従うべきだ」
「いたっ」
「いらん。ジョンは俺が面倒をみる」
「いたっ」

 横からガウェインが手をひっぱり、その反対の腕を引き寄せようとランスロットが手首を掴む。
 まるで土にささった十字架のように俺は突っ立てる。

「イタイイタイ! ホント、どっちでもいいから離してくれ」
「ならガウェインは王子を守ったほうがいい。ほら、先生がお呼びだよ。しっかりと護衛するべきだ」

 ついっと親指を立てて、手をふる武術担当教師を差した。
「くそッ」
「ガウェイン、俺は大丈夫だからいけよ」
 ガウェインはちいさく舌打ちをすると、渋々踵を返した。

「ジョン、なにかあればすぐに呼べよ。いいか?」
「は、はい」

 つうことになったんだけど……。
 はあ、ついてない。
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