素晴らしい世界から脱却を

秋霧ゆう

文字の大きさ
12 / 28

第12話 イベントへ③ 魔法飛ばし

しおりを挟む
 次の日、ソードと合流した拓海。

「昨日はごめんな」
「良いって、きっとリアルで何か問題が起きたんだろ」
「そうなんだよ。マジでさ、昨日行きたかったんだよ」
「お疲れ」
「それでさリアルも大変だったんだけどゴリラエンジン、お前も心配で。何事もなく普通に行けたか?」

 その瞬間、一気にテンションが下がった。

「何かあったのか…」

 ちゃんと察してくれるソードに涙目になる拓海。

「また、社畜ギルドリーダーに絡まれた」
「お、おぅ。どんまい」
「今日は獣人の町から行くだろ?」
「当たり前だ」
「じゃあ、そろそろ行くか」

 2人はのんびりと獣人の町へと向かった。

 獣人の町も人間の町とほとんど変わらない。ただ、行き交う人々は獣人が多いということ以外は。

 歩いていると笑われていることに拓海は気がついた。拓海自身も初めて人間の町に行った時にコソコソ言われたが、今日はそれだけじゃない。普段、ソード呼びをしてるため忘れていたが、ソードのゲーム名が“オ○二ーソード”だということを今思い出した。

 そして拓海はソードより2、3歩後に歩き始めた。
 ソードは足を止め、拓海に質問した。

「なぁ、なんで俺の後ろ歩いてんの?さっきまでは横に居たじゃん」
「お前、自分の名前忘れてねぇか?」

 ハッとしたように顔が赤くなった。

「い、いいだろ!横歩けよ」
「嫌だよ。俺はお前の後を着いてくから先に行けって」

 言い争っているともっと注目され、2人はそそくさと裏門へ移動した。

「はぁ。恥ずかしい目にあった」
「お前のせいだろ」
「お前も変わらないだろ」

 そしてまた今日も階段を登り始めた。
 そして10分経過した時、拓海は思い出していた。

「なぁゴラリエンジン。長くね?こんなもんなのか??」
「…ソード。言いずらいんだけどさ、昨日教えてもらったんだ。登り初めて3段目の階段を全力で足踏みをするとバグで競技場前まで行けるらしい」
「え?」
「本当に言いずらいんだけどさ」
「先に言えよ」
「忘れてたんだからしょうがねぇじゃん」

 2人は階段を全力で登った。そして、辿り着くとまた始まっていた。

ワァァァァ。

 盛り上がる場内。

『魚群ギルドのロッカさん。お疲れ様でしたー。続いては社畜ギルドの信長さんお願いします』

「燃え上がれ火槍ファイアーランス

『飛距離は、おぉこれはデカい115mだ。お疲れ様でしたー。さくさく行きますよ。次は狩りギルドシルバームーンさんお願いします」

火球ファイアーボール

『これはこれはプッ。5m、お疲れ様でした』

「笑ってんじゃねぇぞ実況!!俺達狩りギルドには魔法使いなんて居ねぇんだからしょうがねぇだろ」

『はいはい。ふふっ。お疲れ様でした』

「テメッ」

 今にも戦いが起きそうになる獣人と実況。

『続きまして、BWOにおいて最強の魔法使い!!自由ギルド所属、ナナー!!!!』

ウォォォォォ!!!!

 今日一の盛り上がりを見せる。

「あ、ナナ!!」
「知り合い!?」
「おう。友達であり師匠だ」
「マジ!?」
「あぁ。何か問題あるか?」
「問題っていうか、ナナさんは、誰も弟子を取らないって有名なんだ。話しかけても無視されたりでナナさんとフレンドになってるやつとか初めて見た。ゴリラエンジン、ナナさんとフレンドとか言わねぇ方がいいぞ」
「は?なんで?」

 少しキレ気味にソードに聞いた。
 友達のことを秘密にするように言われたことにイラついていた。

「ナナさんとフレンドだって知ったらまた社畜ギルドに目つけられるぞ」

 ハッとする拓海。

「先に教えてくれてありがとな。ソード」

『それでは、やって頂きましょう。ナナさん、お願いします!!』

雷球サンダーボール

 この雷球サンダーボールは拓海の使う火魔法、火球ファイアーボールと似ている。圧縮した雷を遠くへ飛ばすことが出来る。ナナの場合、これに火のイメージを少し入れることで爆発力のある球を作りだすのだ。

 拓海が出す火球ファイアーボールはテニスボールぐらいの大きさだが、ナナが使う雷球サンダーボールはバスケットボールぐらいの大きさである。
 その光景を見た拓海は思わず口に出る。

「すっげ…」

 そして、結果は。

『飛距離不明。競技場、破壊!!さすがはこの女。強い、強すぎる!!優勝はエルフ!!!!』

ウォォォォォ。

『今回の魔法使いによる魔法飛ばしは1位自由。2位社畜。3位魚群。4位狩り、となりましたー。皆さん、お疲れ様でした。明日の競技はLv50以下によるギルド対抗戦だ!!』

「お前の師匠、やっぱやばいな」
「だろ」

 ドヤ顔する拓海。

 そうして、イベント2日目は幕を閉じた。










しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...