素晴らしい世界から脱却を

秋霧ゆう

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第27話 最終決戦へ

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 剣崎頭領との一騎打ちが決まり、誰が出るのか話し合いで決めることになった。

「ナナはゴリラエンジンが出るべきだと思うぞ。話を聞く限り、ゴリラエンジンはソードの家に乗り込んだんのか?」
「え。あぁ。…彼方の最後の姿を見た」

 唇噛み締め、手を固く握る拓海。

「…絶対に。絶対に勝って下さいね!」
「俺でいいのか?」
「ここでは彼方の親友はあなただった。あなたが彼方の無念を払って下さい」
「あぁ。絶対に勝つ!」

 弓月に決まったことを伝える。

「そうか。頑張れ」
「はい!!」

「やっと決まったか。それじゃあ」

 まず先に剣崎頭領が切りかかってきた。剣崎頭領も彼方と同じ、獣人族で剣を使うようだ。
 だが、それは弓月が簡単に受け止めた。

「貴様…」
「ここではなくコロシアムでやろう」
「コロシアム?そんなところがあるのか。では行くぞ。案内しろ」

 怒りが溜まってるメンバーは嫌がらせを決行する。
 コロシアムの行き方は街の裏門から長い長い階段を登ると着く。

「ここをひたすら登ると着きます」
「そうか」

 剣崎頭領は走って階段を登っていく。
 拓海達は階段を登り始めて3段目。そこを全力足踏みするとバグで簡単に辿り着くという裏技を使い上に行った。
 先に辿り着いたのは剣崎頭領だった。
 やっと来たのか、と言わんばかりの表情で拓海達を見ている。

「さあ、始めよう」

 コロシアムには拓海と剣崎頭領。
 観客席にはあの争いを見ていたメンバー。

『どーも!実況者でーす!出番かなっと思い今回も実況席に着かせて頂きました。きっと、苛つく人も多かったはず。それを打破すべく立ち上がったのは狂気のゴリラこと、ゴリラエンジン!なんと言ってもお2人は親友のようでしたからね~。そして、剣崎頭領はソード君の実の父親みたいですね』

 ザワつく観客席。

「実の父親?」
「嘘だろ。父親が子供のことゴミって言ってたのか?」
「毒親」

 など。そんな言葉が飛び交う。

「私はあのようなゴミの子供は居ない」
「テメェ」

『なななーんとですね、今の発言もかなりびっくりする内容でしたが、ソード君は日常的に父親から暴力を受けていたと。そりゃ、このゲームに逃げ込みたくなりますよね!』

「ぶっ殺せー」
「やっちまえ、狂気のゴリラ!」

 など。観客から怒号が飛び交う。

『それではね、そろそろ始めましょうか』

 3・2・1 START!!!

『先に動くは剣崎頭領!これは速い。本当にこのゲームを始めたばかりなのか!』

 スタートと同時に剣崎頭領が動き出す。拓海は殴られる直前に魔法を唱える。

土壁アースウォール

 土壁アースウォールを作るも一撃で破壊され、拓海は殴られ後方へ吹っ飛ばされた。

「クソっ」
「こんなものか」
「剣だけじゃねぇのかよ」
「獣は殴りの方が強いと言われたのでな。物は試しだ」
火弾ファイアショット

 次にしかけたのは拓海だ。
 拳銃のように速い弾なのに軽々と避けられてしまう。

「つまらんな」

 拓海に向かって剣を振り下ろす。

火矢ファイアアロー

 無数の火の矢が剣崎頭領向かって空から降ってきた。
 剣崎頭領はひたすらに避ける。魔法を切ろうとしても火の矢は切れずに剣崎頭領を攻撃し続ける。魔法を切ることが出来るのはドワーフ工房の武器だけだ。

雷球サンダーボール

 拓海は火矢ファイアアローに続き、雷球サンダーボールを放った。
 火と雷が合わさり爆発力アップを狙った。

「はぁはぁ。どうだ」

 煙の中から剣崎頭領が出てきた。
 が、ダメージを食らった形跡はなく、何事も無かったかのように現れた。

「嘘、だろ」
「次は私から行こう」

 剣崎頭領は拓海に向かって攻撃を開始した。猛スピードで拓海に切りかかる。
 防御をしようと思っても剣崎頭領の速さには適わなく猛攻撃を受ける。

「ぐわぁ」

 剣崎頭領が攻撃を止めた時、拓海は足がふらついていた。
 あと、一撃でも食らったら倒れてしまいそうな程に。

(負けられねぇんだ。イメージしろ。イメージしろ!イメージしろ!!ナナが大運動会の時にやっていたあの技を!!!)

「なんだ?動きが止まったな。諦めたのか?」

 剣崎頭領は拓海へ最後の攻撃を開始する。

「動け!動けよ、ゴリラエンジン!俺たちを代表して戦ってるんだろ!!負けたら、許さねぇからな」

 観客席からアリスが声を上げた。

 誰もが拓海の勝利は無いと思ったその時、拓海の持っていた杖が赤く光り拓海が呟いた。

炎地獄インフェルノ

 拓海の周りから炎が湧き上がり、競技場を囲った。
 剣崎頭領も避けようとするが、炎で全てを囲い焼き尽くすこの技にすぐには動けずにいた。
 だが、簡単にやられる剣崎頭領ではない。
 焼かれながらも拓海に剣を振るった。

(もっとだ。もっともっと)

「炎よ!燃えろ!!!」

 剣崎頭領が振るった剣が拓海の首に当たったその時、剣崎頭領は消えた。
 強制ログアウトしたのだ。

 数秒後に魔法を解き、拓海はその場に倒れる。
 直後、剣崎頭領はゲーム内に帰ってきた。

「ふざけるな。ふざけるな!!私が負けなどありえる訳がないんだ!」

 倒れ、体が動かなくなっている拓海に攻撃しようとする。
 観客達は一斉に拓海の元へ向かおうとするも間に合いそうにない。
 そんな時、1番に拓海の元へ駆けつけ、剣崎頭領の剣を弾き飛ばす者が。

『決着は着きましたよ。剣崎頭領さん?」
「貴様、実況の」
『はい。この戦いはこのゴリラエンジンの勝利です』
「なんだと?私は負けてなどいない」
『強制ログアウトの時点であなたの負けです。敗北です』

 怒りが収まらない剣崎頭領に実況は話続ける。

『あなたはこのゲームに相応しくない』
「は?」
『あなたをこのゲームから完全に除外します』
「そんな権限が貴様にあるとでも?」
『あります。私は実況という名のこのゲームを作った張本人ですからね』

 実況が剣崎頭領に向かって指パッチンをするとその場で強制ログアウトされた。

 その後、何度も何度も剣崎頭領はログインを試みるもゲーム内に入ることは出来なかった。全てはヘッドホンの脳周波によって妨害された。

 それどころか、ピーンポーンと家の鐘がなる。

「警察です。近隣住民の方々から通報がありました。息子さんへの暴行障害罪により剣崎健生さん、あなたを逮捕します」

 剣崎頭領は逮捕され、やっと息をつける拓海達であった。

 これで、彼方も幸せにこの世を去れるであろう。


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