俺と可愛い死神

ヴルペル

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俺から見た世界

十一日目

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いつの間に寝ていたのだろうか……
気がつくと俺はソファで横になっており、布団がかけられていた。
起き上がろうとしたが体がいつもより重い。
布団が盛り上がっている所を押してみる。むにっとした。
布団をはぐとお腹の方で寝息を立てながら死神が寝ていた。

昨日はだいぶ遅くまで付き合わせてしまったからな……
優しく頭を撫でる。
幸せそうな顔で寝返りをうつ死神が愛おしく感じた。

電話が鳴る。

誰からだろうと思い、開いて確認をすると会社からだ。
今日は出勤日だったが、時間を確認すると朝の号令の時間をゆうに過ぎていた。
あのことがあったから、会社に行きたくない。
行ったらまた……

昨日起きた出来事を思い出し、頭から血の気が引いていく。
思い出しただけでも過呼吸になり、心臓が跳ね上がる……
うつろな視線で携帯を握りしめていた俺の手を死神が握って。頭を擦り付けて甘えてくる。

「今日は休みなよ。無理したらまた昨日みたいになってしまう……僕はそれが一番怖いよ」

俺は電話が鳴りっぱなしの携帯の電源をオフにした。
死神の言う通りだった。
優しく腕を伸ばし死神を抱き抱えると死神の頭を撫でる。
ふわふわとした感覚が気持ちいい。温もりを感じ、とても癒されていく気がした。
死神は満更でもない顔でうとうとし始める。

「いつも料理作ってもらってるから今日は俺が作ろうかな」

「!?」

死神が勢いよく起き上がったせいで顎(あご)に思い切りぶつかり、鈍(にぶ)い音がした。

「本当かい!?  作ってくれるの!?」

期待に満ちた顔で俺の体を揺さぶる。

「僕!  作りたかったけどどうしても分からない料理があったんだ!!」

そう言うと俺の手を引っ張り、台所に付箋がびっしり貼ってある料理本を手慣れた手つきで開いていく。
あるページでピタリとやめ、そのページを指さす。

「これ!!」

見せてきたのはふわとろオムライス??
半熟の卵を上に乗せ、真ん中で割ってふわっと広げるものらしい。
それのぱかって割る部分をやりたくて何度も挑戦していたらしいが、上手くいった試しがないという。
俺もやったことがないけど……できるかな???

見よう見まねで挑戦してみるが、やはり上手くいかない……
なにかコツがあるんだろうか?
レシピを何度も見直しながら挑戦を繰り返す。

「なになに?  卵にマヨネーズを入れて……生クリーム??」

卵に生クリームとは斬新だ。俺はいつも卵に砂糖を少し入れて、お出汁の素を入れるのが好きでよく作っていた。
試しに生クリームを近くのスーパーで購入し、挑戦してみる。

「おぉ!?  なんかさっきまでと違う!」

先程とはうってかわり、ふわふわに仕上がっている気がする
これをそのまま巻き込むようにして焼きすぎないように気をつける。
予め盛り付けたチキンライスの上に卵をトッピングして死神に渡す。

「なんか……できてる気がする!!」

「試しに割ってみて」

死神が慎重に真ん中を割いて見ると……
ふわっと湯気がたちながら両方に開いた。綺麗な半熟でとても美味しそうに出来上がっている。
顔を見合せながらできたことに喜びを感じ、ハイタッチを繰り返す。

「ん~!!!  ふわとろでおいしい!!  しょっぱいチキンライスと甘めの卵の相性抜群だね!!」

美味しそうにオムライスを頬張る死神のほっぺについたチキンライスを拭き取ってやりながら、俺もオムライスを口に運ぶ。

「うん!  ちゃんと美味しくできてる!」

成功したことを噛み締めながら空の胃袋にオムライスを流し込む。
急にお腹に固形物を入れたせいか、少しお腹を壊したが、これもいい思い出になるだろう。

死神は自分でもチャレンジをしたいらしく、今度はオムレツを俺も手伝いながら一緒に作った。

ほうれん草とマヨネーズを入れたものや、ケチャップを入れたり、漬物を入れたものも作った。
中でも、チーズとベーコンを入れたものが1番美味しかった。

洗い物をしながら今更会社を休んだことの罪悪感が襲ってくる。
絶対何か言われる。間違いなく課長にはねちっこく付きまとわれる。

ふと、視界がふわふわしたもので隠れる。

「ふふ!  だーれだ!!」

「死神だろ?」

「あったりー!  バレちゃったかー!」

俺はひとり暮らしだから俺以外には死神しかいないんだが(笑)思わず口元がにやける。

「やっと笑ってくれた!」

「え?」

「ずっと暗い顔してたら幸せが逃げちゃうぞ!  もっと笑って笑って!」

口角を上げられ、引きつった笑いになったが俺は過去最高に幸せを感じていた。
心から楽しいと思える出来事に出会えた喜び。
死神となら俺は心からの笑顔で過ごせる。そう確信した。

こんなことを言ったら死神は気味悪がるかな?軽蔑するかな?引くかな?俺の前から姿を消すかな?

いいや……きっと死神ならこうするだろうな。

嬉しそうに俺を見つめて。

ふふーん!  やっと僕の凄さに気がついたの?  僕のおかげだよ!  感謝してよね!

と、ドヤ顔で肉球をほっぺに押し付けてくるだろう。

俺は幸せな気持ちを心の棚にしまい込み、大切に、大切に鍵をかけた。
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