俺と可愛い死神

ヴルペル

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俺から見た世界

十九日目(思い出編)

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佐久間との出会いは高校二年生の春。
グラウンドですごい格好をしてカメラを木に向けて連射していた。
少し覗き込もうと足を移動させたら近くにあった枝を踏んでしまった。

こちらに気づかれてしまった……佐久間は指を口に当てて静かに待ってるように俺に言った。

(まぁ別に帰っても用事ないし……少しくらい待つのはいいかな……)

しばらくすると佐久間が俺に向かって走ってきた。

「いやぁ!  ごめんごめん!  鳥のひなが寝てたからさ!  これ!  さっきの画像!  見る!?」

そう言ってごついカメラの画面を俺に見せてきた。

「めっちゃかわいいだろー!?  これはシャッターチャンス!  って思ってつい連射してたよ!!」

快活(かいかつ)に笑いながら何枚も写真を見せてくれる……どれも木の枝に作られた素の中にひなが身を寄せあって眠っていた……かわいい……可愛いんだけど……

(全部画像ブレてる……)

カメラを貸してもらって全部の写真を見て見たが、全てぼやけていたり、ブレていたり……
写真をガン見していると……

「お前カメラに興味あるのか!?」 

「おれ写真部なんだけどさ!  廃部寸前なんだよねー!  良かったら来いよ!」

言い終わる前に腕を引っ張られる。

学校に連れ戻されて部室に案内された。部屋には様々な写真が額縁に飾られていていかにも写真部って感じだ。

部室自体は広いが…肝心の部員が見当たらない。
俺が部屋を見渡していると何かを察知した佐久間が口を開いた。

「あー!!!……前は三年の先輩がいたんだけど……みんな卒業しちゃっていまはおれだけなんだよなー!」

ほっぺをかきながら少し苦し紛れに教えてくれた。

「あーっ!!  ごめんな!  自己紹介まだだったよな!?  おれは佐久間  祐太郎!  お前と同じクラスだけど……覚えてないよなぁ……はは」

すごい元気なやつだな……俺は全く覚えていなかったのを見透かされ、少し気まずい空気を感じた。

「いやぁ!  ごめんごめん!  お前いつも本読んでるから何読んでるか気になってたんだよな!  気持ち悪かったらごめんな?」

「あー……いや俺の方こそまだクラスの人覚えてなくてごめんな」

「いーっていーって!  これからよろしくな!  ところで!  写真部とかどう!?  掛け持ちOKだし!  入ってくれたらすんごい嬉しいんだけど!」

手を握られながらグイグイ押してくる……

「これがかわいい女の子なら良かったのに……」

「そんなこと言うなって!  よろしくな!  はいこれ入部届け。俺に出してくれたらいいからな!  そんじゃ!また明日!」

すごい勢いでカバンから入部届けを出して俺の手に押付けた
かと思いきや次の瞬間には部室から出て姿を消している。

「嵐のようなやつだ……」

おれは手に押し付けられた入部届をカバンにしまって帰宅した。

ー次の日。

「おっはよー!!!」

思い切り背中を叩かれた。

「ごふっ!  え?  あ……おはよ」

「朝から元気ないぞー!?  ほら!  元気出せよ!」

教室中に聞こえる音量で佐久間は俺に絡んできた。
廊下で歩いている時も。移動教室も。俺を見かける度に話しかけてくれた。

「あ!  ところでさ!  入部届け書いてくれた?」

俺はカバンから名前を書いた入部届けを佐久間の机に置く。

「え!?  嘘!?  まじ!?  うーわー!」

顔を机に打ち付けて足をバタバタさせる。


「めっちゃ嬉しい……」

放課後、部員として初めて部室に足を踏み入れた。
昨日とは違って気が引き締まる。

「お前ってさ?  カメラ触ったことある?」

昨日のごついカメラを抱えて俺に渡す。腕にずっしりとした感覚がある思ったより重量があった。

「ここを回してこうやって……ここを押すと……」

ピピッカシャッ

「ほら!  撮れた!  今日は天気もいいし!  そのカメラ貸してやるから外に写真取りに行こうぜ!!」

半ば強引に校外に連れ出された。好きな場所でいい感じの撮れよ!  って言ったっきり佐久間はどこかへ走り去って行った。

(十七時グラウンドで集合つってもなぁ……何枚かは撮らなきゃいけないよな)

とりあえず近くに生えていた草を撮った。なんかこれじゃない感じがして校舎を撮ってみた。これじゃない……
グラウンド、校舎裏、花壇、空。
次第に撮るのが楽しくなり、時間が過ぎるのがあっという間に感じた。

「もう十七時か」

待ち合わせの場所に着いたが、佐久間の姿が見当たらない。
待っている間、撮った写真を眺めながら特にお気に入りの写真をピックアップした。
遠くから足音が近づいてくる。

「いやぁ!  ごめんごめん!  撮ってたら夢中になってさ!  どんなの撮れた!?  見せて見せて!」

俺のカメラを手渡して画像フォルダを見ていく。

「ちょ(笑)  お前わかんなかったからって草はないわー(笑)  へー!  グラウンドの雰囲気めっちゃいいじゃん!  こっちも!  へー……………」

写真を見る手が止まる。次の瞬間俺の方を大きく揺さぶられた。

「お前!  写真のセンスあるな!?  なんで黙ってたんだよ!!  これならコンテストに応募してもいいんじゃないか!?」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「そんなこんなでコンテストに応募して、入賞は出来なかったけどハッピー賞は貰えたな(笑)  そこから俺も写真にハマって親父にカメラ買ってくれ!  ってめっちゃせがんだなぁ……」

「へー!!  そんなエピソードがあったんだね!  もう撮らないの?」

「んー……カメラ売ってしまったし……会社が忙しくてなかなか時間取れなかったしなぁ……」

俺が言葉を濁すと死神は少し考えてあることを思いついた顔をした。
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