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俺から見た世界
二十日目
しおりを挟む「おっはよー!!!」
元気よく部屋の扉を開いて死神が入ってきた。何やらいつもよりテンションが高い気がする…体の上にのしかかってきてゆさゆさ揺れる。
「起きて起きて! いい天気だよ!」
「ええぇ……なんで??」
「散歩に行きたいから! ほら! 早く早く!」
無理やり寝ていたからだを叩き起される。まだ眠気が残っていて意識がはっきりしない。
虚ろなまま服を着替えて外に出た。
「なぁ? 死神」
「ん?」
俺はふとした疑問をなげかけた。
「お前が散歩したいって珍しいな。いつもはもっと無茶ぶりばっかり言ってるのに」
少し不安そうに聞いたが、死神は鼻を鳴らしてたくらむ表情に変わる。
「ふふ~ん! 君に見せたい景色があってね!」
ニカッと笑い、俺の手を引く。道路を抜けて少し坂を登ると
水の音が聞こえてくる………ここは……?
「……土手?」
着いた場所を見回すと川があり、橋があり、草が生えているまさに土手としか思えない場所だった。
「せいかーい!!」
えへへと笑う死神。俺に見せたかった場所が土手なのは少し意外だった……正直言うと……少し期待していたぶんガッカリ感もある。
土手の周りを一周しようと死神に提案されて、散歩道を歩く。
天気が良く涼しい風が頬を撫でた。少し暑いくらいだが、それも風のおかげでうまい具合に中和されていた。
「たまには散歩もいいな」
俺がつぶやくと嬉しそうに死神は歩き出した。ふと足を止めてしゃがみこむ。
何があったのかと思い、俺も同じようにしゃがんでみる。
死神が草をかき分けていた。手元を見ると小さい黄色の花が一輪だけ咲いている。
「ねぇねぇ! これ撮って!」
「え? カメラとか持ってないけど……」
「スマホがあるじゃん! 僕ちゃんと見てたんだからね!」
死神が撮ればいいんじゃ……って思ったが
僕が撮ったら花が隠れちゃうでしょ! と死神の言葉でかき消された。仕方がなくスマホのカメラを向けてシャッターを押す。
カシャッ
「どう!? うまく撮れた!?」
小さい花と可愛らしい猫のお手手……ゲフンゲフン
がきちんと写真に収められていた。
死神は満足気に確認して、別の場所を撮るように言われカメラを向ける。
カシャッ……カシャッ……カシャッ……
撮る枚数が増える度に楽しくなってきた。こんなに心が踊るのはいつぶりだろうか。死神にもカメラを向ける。
「かっこよく撮ってくれよ?」
カシャッ
思い出の一枚が増えた。そのまま帰ろうとしたら死神に袖を引かれた。
「一緒に撮ろうよ!」
せっかくなので一緒に撮ることにした俺は、死神を抱き抱える形で持ち上げて、インカメラを起動する。
自撮りをする感じで写真を撮った。
思い出の一枚が増えた。
帰りに写真をプリントアウトして、百均で写真たてを購入した。
ふと帰ろえとした時、公園の方からすすり泣きが聞こえてきた。
「なんだ?」
「……ちょっと行ってくる!」
どこから出したか分からないマントをひるがえして死神が飛んだ。
すごい勢いで公園へ向かっていく。
追いつこうとしたが死神が一足先に公園に到着した。
声の方を向いたら女の子がしゃがみこんでいて泣いていた。
服に泥が泥がついて、膝がすりむけていた。
「お嬢ちゃん大丈夫!?」
慌てて駆け寄り、肩を触ろうとする……しかし少女の手がそれを阻止した。
警戒されているのだろうか?不審者だと思われたら大変だ。
「い! いやぁ! 俺は怪しいものじゃないよ!? ど……どうしたのかな?? コケちゃったの? お母さんは? 一緒じゃないの?」
明らかに挙動不審で怪しい聞き方をしてしまった。俺の度胸の無さを恨みたい……
少女は少しの間だけ涙を止めていたが、自分の膝を見てまた泣き出してしまった。
「あぁぁぁ……えっと……とりあえず水で洗おう! 近くの蛇口のところまで行ける?」
「………」
コクリッ
少女は口をきゅっと閉ざしたまま静かに頷いた。俺は少女をゆっくり立たせて水道の場所まで歩く。
蛇口をひねり、勢いよく水が出るのをすくってゆっくり膝にかけてやる。
「痛かったら言ってな」
泥を落とすように慎重に膝を洗う。
拭くものがハンカチしか持ってないな……
「お嬢ちゃん。このハンカチをあげるから家に帰るまで傷口にあててね。血が止まったら外してもいいから!」
「……ありがとーございます」
深々とお辞儀をされた。とても礼儀が正しいいいとこのお嬢さんな雰囲気が漂っている。
親御さんが迎えに来るまで見張っとこうか……どうせすることないし。
「お嬢ちゃんはお母さんとここに来たの?」
「ブランコで遊んでたの……」
「へー! そうなんだ! お母さんは今どこにいるかわかる?」
「お母さん……まま……」
女の子が目に涙をうかべる。大粒の涙が頬を伝って次々に落ちる。
「あー!! ごめんごめん!! 泣かせたかった訳じゃなくて! あのー……そのー……」
思いっきりたじろいだら死神から猫パンチが飛んできた。衝撃で後ろに倒れた。
「泣かせちゃダメでしょ!! はたから見たら完全に誘拐犯だよ!!」
的確なところを突かれて痛い……
「じゃあどうするんだよ! 女の子一人置いてくのは心配だろ!? 出来るだけ早く見つけてあげたいじゃん!」
「気持ちはわかるけども!! とりあえず今はなだめるところからだよ!」
ぎゃーぎゃー死神と口論をしていたが……女の子は口を開けてじっと俺と何も無いところを交互に見つめてる。
(やべぇ……俺一人で喋ってると思われている……)
「猫ちゃんと喋れるの??」
「ん???」
猫ちゃんと喋る??……
しばらくアホ顔で女の子を見つめていた。
ハッ!
「君! この猫見えるの!?」
女の子は小さく頷いた。死神は初めから視線を感じていたらしく気づいているようだった。
「すごいね! わたししゃべる猫見るの初めて!! わたしも話せるかな??」
こんにちはと少女が話しかけると死神が元気よく返事した。ノリが良い奴だ。
「わー! 可愛いねこちゃん!!」
死神を抱きしめると頭を撫でくりまわした。少女の腕に抱かれている死神は何やらドヤ顔で俺を見た。
「ふふーん僕の可愛さをわかる人がいたねぇ? 君も僕のこと可愛がってくれてもいいんだぞー?」
女の子に可愛がられて大層ご満悦の表情だ。
少しすると少女の父親が迎えに来て、俺に頭を深くさげてお礼を言われた。
少女は別れ際も何度も振り返って手を振ってくれた。
「かわいいなぁ……」
「……ロリコン……」
ボソッ
「うっせーよ!」
俺と死神はお互い小突きあいながら帰宅した。
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