【アルファポリス版は転載中止中・ノクターンノベルズ版へどうぞ】会社の女上司と一緒に異世界転生して幼馴染になった

思考機械

文字の大きさ
38 / 287

38話「これからどうする?」

しおりを挟む
「……お、これかな?」

 先程マルティナを助けた現場まで戻って、淫魔の死体が四散した付近で『黒く輝く石』を見つけたので拾い上げた。
 リズ曰く「せっかく淫魔を討伐したのだから、その証明も拾っておかないと」との事。

 その足で最初に俺が淫魔を倒した場所へと赴く。

「あったあった」

 夜の闇の中でも、弱くではあるが輝きを放つ黒い石。なんでも『妖魔の体内にある魔瘴気の塊』なんだそうだ。子供の(つまりは俺の)握り拳大の石。俺は2つの石を拾って馬車へと戻る。

(いくらなんでも終わってる……よな……)

 カズミとレナが馬車から降りてきて、そこに俺達が居たら流石にバツが悪いだろうと、手分けして周辺の探索を行う事にした。ついでに妖魔の石を拾っていたのだ。



 馬車に帰る途中でリズに会う。

「お帰り。あった?」

 腰のポーチから2つの石を取り出してリズに手渡す。

「この大きさ、やっぱり高位淫魔だ。……よく倒せたもんだわ……」

 リズもポーチから2つの石を取り出して見せる。

「王都に行ったらギルドで換金できるし。アタイの冒険者ランクも上がっちゃうかもね」

 そう言って笑うものの、俺と目を合わそうとしないリズ。まぁ、俺もまともに見れないんだけどね。

「で、御者さんや商人さん見つかった?」
「……」

 俺の問いに無言で首を振るリズ。
 二人で並んで馬車に向かう。

「……やっぱ淫魔に殺られたかもね。アタイが奴らと戦う前には、既に姿が見えなかったし」
「そっか……」
「やつら、男には用が無いからね。食っちまってお終いだ」
「そっか……」

 沈黙……

「あ、あのさ……」

 リズが真剣な目で俺を見る。うん。ちゃんと目を見てる。俺も。

「ヒロヤにあんな事しちゃったから……その……ちょっと照れがあってな。……よそよそしくしてスマン」
「いや、俺もちょっと……ごめん」

 二人でお互いに頭を下げる。

「……身体……つかあんな場所、男に触られたのは、は、初めてでさ……あ、淫魔はノーカンな」
「うん」
「アタイ、アレスの事気になってんのに……ヒロヤにあんな事させたのが……は……恥ずかしくて……申し訳なくて……さ」

 真っ赤な顔で俯くリズ。

「……ごめん……」
「いや!ひ、ヒロヤは悪くねーんだ!……だからその……アタイこそすまん!」

 また頭を下げるリズ。

「うん。……俺もリズも、お互い『無かった事』には出来ないけど……」
「そうだな。でも、今までどおり仲良くしよう。『姉貴分』と『弟分』として」
「ああ。もちろんだよ。これからもよろしく」

 そう言って、ようやくお互いの顔を見合って笑った。



 馬車に戻ると、マルティナとレナが泣いてるカズミを必死に宥めてた。

「もう私、お嫁にいけない……」

 ……いや、俺んとこに嫁に来るんだろカズミ。
 俺とリズが戻ってきたのに気がついたカズミが、一段と泣く。

「ヒロヤに知られちゃったー!」

 ……いや、もうとっくに知ってますよカズミが自慰してるの。前に言ってたじゃん。
 レナも俺を見るやいなや、真っ赤な顔をして俯く。

「なんかごめん……」

 もう、俺の存在自体が罪である様な気がしてきた。



「とにかく気にすんなって。淫魔の仕業なんだから抗えないって。誰も責めたりしないし、気にもしてないから」

 これからどうするか?を相談する為に、焚き火を熾して囲んだ。
 リズが必死にカズミを宥めるのを横目で見ながら、レナに小声で聞いてみた。

「……女神様でも欲情したりすr……」

 最後まで言い終わらないうちに、レナが後頭部を叩く。

「……これは人間の身体なの。だから仕方ないの」
「……ごめんなさい。気になっちゃったから」

 そうこうしてるうちに、しゃくり上げながらもカズミがなんとか泣きやんだので、本題に入る……と思った時に、マルティナが手を挙げて口を開いた。

「ちょっと良いかな?大切な話なの」

 俺は知っているけど、カズミ、レナ、リズには伝えておかなきゃいけない大事な事。

「あたし……記憶が戻ったんだ。……その……あの屋敷であった事も……」
「「「!」」」
「大丈夫なの?」
「頭痛いとかない?」
「気分悪くないか?ちゃんとアタイ達の事わかるか?」

 三者三様の心配の仕方に、俺とマルティナは顔を見合わせて笑う。

「……屋敷での出来事以外の事は、夏休みの終わりぐらいから徐々に思い出してたの。……でも、みんなとの関係が終わっちゃう気がして……言えなかった」

 マルティナが俯く。そして、さっき起こった淫魔との出来事をぽつぽつと話し出した。



「あの野郎!ぶっ殺してやる!」
「落ち着いてリズ……もう俺が殺したから……」
「あ……ああ、そうだったな。それにしても卑劣な事しやがる!」
「……でも、全部思い出せて良かったって思うんだ……」

 マルティナが微笑みながら俺を見る。

「こんなあたしだけど……みんなと一緒に居て良いのかな?」
「何言ってるの!」

 カズミが立ち上がってマルティナに怒鳴った。

「私達がマルティナと一緒に居たいの!もうマルティナは私達の友達、仲間、いえ……家族なの!あなたが居ないなんて……私自身が考えられないのよ!」
「……でも……あたしは……あたしの身体は、ゴブリンに穢されて……汚れて……」
「汚れてなんかないよ」

 リズがマルティナに微笑みかける。

「ん、れなも汚れてるなんて思った事ない」

 レナがマルティナの膝に頭をのせる。

「俺もそんな風に思った事なんてないよ」
「ほら。みんなマルティナの事大好きなんだから!」

 カズミがドヤ顔でマルティナを見つめる。

「……みんなと手を繋いでもいいの?」
「もちろん!」
「……ヒロヤ兄ちゃんの事、今までみたいにギュッとしていいの?」
「あ……それはちょっと」
「いいよ」

 俺はためらうようなカズミの返事に被せるように答えた。

「ヒロヤ!……まぁ仕方ないか」

 一瞬、頬を膨らませたカズミだったが、笑って許可した。

「……わかった!これからもみんなの事ギュッてする!」

 涙を流してはいるものの、マルティナは最高の笑顔で答えてくれた。



「でだ……これからどうするか?なんだけど」

 リズが焚き火に薪を焚べる。

「四頭立ての馬車が二台。護衛が使ってた乗馬が四頭……」
「あたし馬車使えるよ」
「あ、アタイも」

 腕を組んだカズミにマルティナとリズが手を挙げる。

「じゃあ馬車で次の宿場町までは行けそうだね」

 カズミが両手でビシッと二人を指差す。

「まぁ宿場町まで行けば、馬車の中継所も有るだろうし。そこが御者を手配してくれれば、アタイ達はそのまま王都に向かえばいいし……だめなら……」
「お馬さんで行く?れな乗れるよ?」

 席を外していたレナが、馬を一頭連れてリズに提案する。

「この子たち賢いよ。馬車に並走してちゃんと付いてきてくれると思う」

 レナに鼻先を撫でられた馬が軽く嘶いた。そういや、護衛が交代で休憩する時もカラ馬で付いてきてたよな。

「あ、俺見たよ。人が乗ってなくてもちゃんと付いてきてくれてるの」
「でしょ~?」

 レナが得意げに胸を反らした。

「じゃあ取り敢えず、宿場町までは馬車で行くという事で」

 リズが結論を出した。

「……商人さん達の荷物も運んであげたいしね」

 カズミがボソリと呟いた。このままここに放置するのもなんか辛いよな確かに。

「よし!明日の為に寝るか!頑張って明日の夜までには着くよ!」
「「「おー!」」」

 リズが焚き火を消し、俺達は馬車に入って行った。

「あのさ……今日はマルティナの膝で寝ていいかな?」
「あー!れなもそれ考えてたのに!」

 馬車に戻ると、早速マルティナの奪い合いを始めるカズミとレナ。

「じゃあカズミ姉ちゃんはこっち。レナ姉ちゃんはこっち」

 マルティナが両太腿をポンポンと叩く。あ……俺も膝枕してもらいたかったな……。

「来るか?少年」

 リズが太腿をポンポンと叩く。

「……いや、たまには一人で寝ます」

 非常に魅力的なお誘いだけどね。少しシュンとしたリズに笑いかけてから俺は毛布を被った。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

処理中です...