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91話「ハンナさんの決意と転移陣の魔導具」
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「子どもが……出来た……だと?」
俺とカズミを前にして、驚愕の表情で固まる父さん。
……多分『ハンナさんに』という主語が耳に入ってないよこの人……
「シンジさん!もう……ちゃんとヒロヤの話聞いた?この子達のお手伝いさんのハンナさんが妊娠したって話なのよ?」
母さんが固まる父さんの肩を掴んで揺する。
「そ……そうだったな……私はミュラー殿になんと言ったらいいかと……つい取り乱してしまった……すまない」
「領主様、そんな事はまだ先の話です……」
カズミ、照れた顔でそういう事を言わないように。そして正気に戻った父さんから手を離し、母さんはニコニコしながら俺に向き直る。
「……で、ヒロヤは未亡人に手を出しちゃった訳なの?」
「なんでそうなるかな?!」
「え?だって……」
「八週目!亡くなった旦那さんの子ども!……まったく、俺達がハンナさん救い出してからまだ二週間程しか経ってないんだよ?」
もうやだよこの天然夫婦。
「……そっか……なぁんだ……」
「そもそも、俺まだ七歳目前だからね?自分の息子をなんだと思ってるの?」
「なんだと思ってるって……可愛い子ばかりたくさんはべらしたハーレム主──かな?」
「……カズミ……この天然過ぎる母さんになんとか言ってやって?」
俺は頭を抱えて、カズミに丸投げした。
「そうですよお母様!いえお義母様!レナとマルティナはまd……」
「言わせないよ!」
慌ててカズミの口を塞ぐ。そうだった。カズミもうっかり屋さんだったわ。
「と、とにかく、亡くなった旦那さんの忘れ形見でもあるし、亡くなったカイちゃんの弟か妹でもある訳だから、なんとか産んでほしいんだよ俺達は。だから……」
「ダンジョン攻略の為に、お前たちが留守にしている間のハンナ嬢の面倒を見て欲しい……という訳だな?」
ようやくこちらの世界に帰ってきた父さんが、本来の威厳を取り戻した様子。
「お前達の留守を預かる大切な仲間だったな彼女は。……村に新しい生命が誕生するのも実に喜ばしい事である。ステラさんにお願いしておこうか」
「いいの?」
「もちろん!そもそも、ステラさんはメイド長だけどヒロヤ専属のメイドさんでもあるんだから、問題ないはずよ?ねぇ?ステラさん?」
母さんが俺達にウインクをし、ちょうどお茶を運んできたステラさんに声を掛ける。
「……ヒロヤ坊っちゃんのお願いですから、わたしが全力でハンナさんのお世話をさせて頂きますよ」
事情を説明したら、ステラさんは快く引き受けてくれた。
「ヒロヤ坊っちゃんの赤ちゃん……お産まれになったら、さぞお可愛いでしょうね」
「違うからね?」
「おや?」
ステラさんまで。
◆
取り敢えず、明日からしばらくダンジョン攻略に出発する事を告げて、ステラさんに宿のハンナさんの事をお願いしてから屋敷を出た。
「治療院に行く?多分、まだみんな居ると思うんだけど」
カズミが腕を絡めて俺の右側を歩く。
「だね。後はハンナさんの気持ちを聞かないと」
「その後はギルドにも顔出さなきゃね。明日はいよいよダンジョン攻略の第一歩だし」
デレてたカズミの表情が引き締まる。
「森への侵入ルートの申請と、後は……」
「ダンジョン探索用に『転移陣』のスクロールを受け取らないと……ミリア校長に感謝だね」
「あぁ。じゃあ急いで治療院に行こう」
俺達は手を繋いで駆けていった。
◆
俺とカズミが治療院に入ると、待合室にリズとマルティナ、ドロシーが居た。
「レナはハンナさんと診察室。結構経つけど……まだ悩んでるのかな」
リズが心配そうに診察室の扉を見つめている。
「……みんなで話聞いてみない?」
カズミの言葉にみんな頷く。
「ルドルフ先生、みんな揃ってるんですけど……ハンナさんとお話いいですか?」
診察室の扉越しにカズミが声を掛けると、中からルドルフさんの返事が返ってきた。
「うん。みんな入ってきてくれるかな」
◆
「妊娠初期としては順調だよ。安定期までは気を付ける必要はあるけど、軽い家事なら全く問題無いんだ」
ルドルフさんが、俺達全員に説明してくれる。おそらくハンナさんには既に伝えてある事なんだろう。
「……それでも出産に不安があるかい?ハンナさん、君の事情は私も分かっているつもりだよ。……でもそういった事情も含めて、既に芽生えている生命を粗末に扱っていい理由にはならないんだよ?」
「でも……」
多分、ルドルフさんの言葉はハンナさんも重々承知している事だろう。頭では。でも……心のほうがまだ整理出来ていないんだと思う。
「ハンナさん。俺達はみんな『ハンナさんには産んでほしい』って思ってる。もちろんあなたの事情を知った上で」
俺はまっすぐハンナさんを見つめて言った。みんなも頷いている。
「それはね。そのお腹の中の赤ちゃんがハンナさんの子であり、亡くなった旦那さんの子であり、カイちゃんの弟か妹でもあるからなの。亡くなってしまった二人の残した『家族』なのよ。だからこそ、みんな産んでほしいと思ってるの」
カズミが静かに、ゆっくりとハンナさんに話しかける。
「……でも、まだあの人とカイの事が……忘れられなくて……悲しくて……」
「忘れる事なんてないんですよ……いつまでも想っている事も、残った人の役目なんですから」
人狩りに祖父、父、兄を殺され、淫紋によって故郷に帰る事すら出来なくなったドロシー。もちろんそういう事情はハンナさんも知っている。
「ドロシーさん……」
涙を浮かべてドロシーを見つめるハンナさん。
「アタイは頭悪いから、分かりやすい言い回しとか出来ないけど……その子を産んで育てる事は、亡くなった二人とその子自身に対する義務だと思うし、ハンナさんが果たすべき責任だと思う。……アタイ達もできる範囲で協力するからさ」
リズの言葉に、小さく首を振るハンナさん。
「いえ、わたくしの事で、皆さんに迷惑を掛ける訳には……」
「迷惑掛けて欲しいの。一緒に生活してる私達は、もう『家族』なんだから」
カズミが涙目で訴える。
「あたしは……赤ちゃんが産まれたら、色んな事してあげたい。あたしがお母さんを知らないから、ハンナさんと一緒にお母さんみたいに可愛がってあげたいな」
孤児だったマルティナがニッコリと微笑む。
「れなは妹も弟も居ないから、赤ちゃんが産まれたら一緒に遊んであげたい」
レナがハンナさんの手を取って、優しく包み込むように握り締める。
「俺は……子育てなんて何も分からないけど……ハンナさんと赤ちゃんの生活を守るよ」
男って無力だわ。
「そうよハンナさん。住むところも生活も、何も心配する事無い。私達はあなたと赤ちゃんが一緒に生活してくれるだけで……頑張れるよ。これからも、冒険から帰ってきた私達を『お帰り』って迎えてくれるだけで頑張れるんだ」
カズミが続ける。
「だから……産んで欲しいの。私達の赤ちゃんを」
みんなの気持ちを聞いたからか、ハンナさんが顔を伏せて泣き出した。肩を震わせ、小さな嗚咽を洩らして。
やがて顔を上げたハンナさんが何度も頷く。
「産みます……産みたいです。でも……良いんですか?産んでも……みんなに迷惑掛けちゃっても……」
「もちろん。れな達はみんなパパなんだから!」
◆
結論が出た。それもみんなが望んだ方向で。
カズミとマルティナとドロシーにハンナさんを宿に送ってもらい、俺とレナ、リズはその足でギルドへと向かった。
「侵入ルートは前回と同じ。ヒロヤが見つけた入り口からダンジョンに突入するよ」
リズがミヨリに申請する。
「分かりました。一応、旧ダンジョンの地図を渡しておきますね。恐らくはほとんど変わってしまってると思いますが。後は……これですね。『賢者』ミリアさんから預かっていたものです」
そう言って、ミヨリが地図とスクロールと、魔瘴気の塊に似た石をカウンターに置いた。
「これが『転移陣』のスクロールです。この石は『魔導石』で、これをダンジョン入り口付近に埋めておいてください。そして、ダンジョンの探索を中断する時に、このスクロールで『転移』の魔術を使えば、魔導石を埋めたところまで安全に転移されます」
これが、ミリア校長が作った『転移陣』の魔導具。ダンジョン探索が圧倒的に捗る代物だ。『転移』魔術は上位でもかなり困難な魔術らしい。それをこうやって簡単に使えるなんて。
「そして、また探索を再開する時は、魔導石を埋めた場所で『転移』と唱えるだけで、スクロールで転移陣を張った場所に転移されます」
「……これは捗るね……探索を再開する前に、ここでスクロールをまた受け取ってから行けば良いんだよね?」
スクロールと魔導石を眺めながら、ミヨリに訊ねるリズ。
「はい。それを繰り返して……最深部を目指してください。かなり負担が軽減されるはずです」
ミヨリがニッコリ微笑む。
「軽減どころか……一階から順番に何度も潜って行かなくて良いんだぜ?……思ったより全然早く最深部目指せるよ」
リズがニヤリと微笑み返す。
「それと、森の危険度が以前程度に下がっています。馬で向かっても問題無いと思いますよ」
「そいつぁ助かるね。こちとら身重の女房を家に残して探索に出るんだ。早く帰れるのは嬉しいね」
「身重の女房……?」
リズの言葉に首を傾げるミヨリ。
「あぁ、気にしないで。こっちの話だから」
俺はフォローを入れておく。
「あ、スクロールの使用には結構な魔力が必要とされますので……そうですね、レナさんかカズミさん、あるいはドロシーさん辺りにお任せすれば良いと思います」
「うん。大体使い方はミヨリの説明で分かった」
レナがスクロールと魔導石を受け取ってポーチに仕舞う。
「それでは、明日からの探索……気を付けて行ってらっしゃい」
ミヨリが頭を下げる。
「うん。ありがとね。頑張ってくるよ」
ミヨリに手を振って、俺達はギルドを出て宿へと向かった。
俺とカズミを前にして、驚愕の表情で固まる父さん。
……多分『ハンナさんに』という主語が耳に入ってないよこの人……
「シンジさん!もう……ちゃんとヒロヤの話聞いた?この子達のお手伝いさんのハンナさんが妊娠したって話なのよ?」
母さんが固まる父さんの肩を掴んで揺する。
「そ……そうだったな……私はミュラー殿になんと言ったらいいかと……つい取り乱してしまった……すまない」
「領主様、そんな事はまだ先の話です……」
カズミ、照れた顔でそういう事を言わないように。そして正気に戻った父さんから手を離し、母さんはニコニコしながら俺に向き直る。
「……で、ヒロヤは未亡人に手を出しちゃった訳なの?」
「なんでそうなるかな?!」
「え?だって……」
「八週目!亡くなった旦那さんの子ども!……まったく、俺達がハンナさん救い出してからまだ二週間程しか経ってないんだよ?」
もうやだよこの天然夫婦。
「……そっか……なぁんだ……」
「そもそも、俺まだ七歳目前だからね?自分の息子をなんだと思ってるの?」
「なんだと思ってるって……可愛い子ばかりたくさんはべらしたハーレム主──かな?」
「……カズミ……この天然過ぎる母さんになんとか言ってやって?」
俺は頭を抱えて、カズミに丸投げした。
「そうですよお母様!いえお義母様!レナとマルティナはまd……」
「言わせないよ!」
慌ててカズミの口を塞ぐ。そうだった。カズミもうっかり屋さんだったわ。
「と、とにかく、亡くなった旦那さんの忘れ形見でもあるし、亡くなったカイちゃんの弟か妹でもある訳だから、なんとか産んでほしいんだよ俺達は。だから……」
「ダンジョン攻略の為に、お前たちが留守にしている間のハンナ嬢の面倒を見て欲しい……という訳だな?」
ようやくこちらの世界に帰ってきた父さんが、本来の威厳を取り戻した様子。
「お前達の留守を預かる大切な仲間だったな彼女は。……村に新しい生命が誕生するのも実に喜ばしい事である。ステラさんにお願いしておこうか」
「いいの?」
「もちろん!そもそも、ステラさんはメイド長だけどヒロヤ専属のメイドさんでもあるんだから、問題ないはずよ?ねぇ?ステラさん?」
母さんが俺達にウインクをし、ちょうどお茶を運んできたステラさんに声を掛ける。
「……ヒロヤ坊っちゃんのお願いですから、わたしが全力でハンナさんのお世話をさせて頂きますよ」
事情を説明したら、ステラさんは快く引き受けてくれた。
「ヒロヤ坊っちゃんの赤ちゃん……お産まれになったら、さぞお可愛いでしょうね」
「違うからね?」
「おや?」
ステラさんまで。
◆
取り敢えず、明日からしばらくダンジョン攻略に出発する事を告げて、ステラさんに宿のハンナさんの事をお願いしてから屋敷を出た。
「治療院に行く?多分、まだみんな居ると思うんだけど」
カズミが腕を絡めて俺の右側を歩く。
「だね。後はハンナさんの気持ちを聞かないと」
「その後はギルドにも顔出さなきゃね。明日はいよいよダンジョン攻略の第一歩だし」
デレてたカズミの表情が引き締まる。
「森への侵入ルートの申請と、後は……」
「ダンジョン探索用に『転移陣』のスクロールを受け取らないと……ミリア校長に感謝だね」
「あぁ。じゃあ急いで治療院に行こう」
俺達は手を繋いで駆けていった。
◆
俺とカズミが治療院に入ると、待合室にリズとマルティナ、ドロシーが居た。
「レナはハンナさんと診察室。結構経つけど……まだ悩んでるのかな」
リズが心配そうに診察室の扉を見つめている。
「……みんなで話聞いてみない?」
カズミの言葉にみんな頷く。
「ルドルフ先生、みんな揃ってるんですけど……ハンナさんとお話いいですか?」
診察室の扉越しにカズミが声を掛けると、中からルドルフさんの返事が返ってきた。
「うん。みんな入ってきてくれるかな」
◆
「妊娠初期としては順調だよ。安定期までは気を付ける必要はあるけど、軽い家事なら全く問題無いんだ」
ルドルフさんが、俺達全員に説明してくれる。おそらくハンナさんには既に伝えてある事なんだろう。
「……それでも出産に不安があるかい?ハンナさん、君の事情は私も分かっているつもりだよ。……でもそういった事情も含めて、既に芽生えている生命を粗末に扱っていい理由にはならないんだよ?」
「でも……」
多分、ルドルフさんの言葉はハンナさんも重々承知している事だろう。頭では。でも……心のほうがまだ整理出来ていないんだと思う。
「ハンナさん。俺達はみんな『ハンナさんには産んでほしい』って思ってる。もちろんあなたの事情を知った上で」
俺はまっすぐハンナさんを見つめて言った。みんなも頷いている。
「それはね。そのお腹の中の赤ちゃんがハンナさんの子であり、亡くなった旦那さんの子であり、カイちゃんの弟か妹でもあるからなの。亡くなってしまった二人の残した『家族』なのよ。だからこそ、みんな産んでほしいと思ってるの」
カズミが静かに、ゆっくりとハンナさんに話しかける。
「……でも、まだあの人とカイの事が……忘れられなくて……悲しくて……」
「忘れる事なんてないんですよ……いつまでも想っている事も、残った人の役目なんですから」
人狩りに祖父、父、兄を殺され、淫紋によって故郷に帰る事すら出来なくなったドロシー。もちろんそういう事情はハンナさんも知っている。
「ドロシーさん……」
涙を浮かべてドロシーを見つめるハンナさん。
「アタイは頭悪いから、分かりやすい言い回しとか出来ないけど……その子を産んで育てる事は、亡くなった二人とその子自身に対する義務だと思うし、ハンナさんが果たすべき責任だと思う。……アタイ達もできる範囲で協力するからさ」
リズの言葉に、小さく首を振るハンナさん。
「いえ、わたくしの事で、皆さんに迷惑を掛ける訳には……」
「迷惑掛けて欲しいの。一緒に生活してる私達は、もう『家族』なんだから」
カズミが涙目で訴える。
「あたしは……赤ちゃんが産まれたら、色んな事してあげたい。あたしがお母さんを知らないから、ハンナさんと一緒にお母さんみたいに可愛がってあげたいな」
孤児だったマルティナがニッコリと微笑む。
「れなは妹も弟も居ないから、赤ちゃんが産まれたら一緒に遊んであげたい」
レナがハンナさんの手を取って、優しく包み込むように握り締める。
「俺は……子育てなんて何も分からないけど……ハンナさんと赤ちゃんの生活を守るよ」
男って無力だわ。
「そうよハンナさん。住むところも生活も、何も心配する事無い。私達はあなたと赤ちゃんが一緒に生活してくれるだけで……頑張れるよ。これからも、冒険から帰ってきた私達を『お帰り』って迎えてくれるだけで頑張れるんだ」
カズミが続ける。
「だから……産んで欲しいの。私達の赤ちゃんを」
みんなの気持ちを聞いたからか、ハンナさんが顔を伏せて泣き出した。肩を震わせ、小さな嗚咽を洩らして。
やがて顔を上げたハンナさんが何度も頷く。
「産みます……産みたいです。でも……良いんですか?産んでも……みんなに迷惑掛けちゃっても……」
「もちろん。れな達はみんなパパなんだから!」
◆
結論が出た。それもみんなが望んだ方向で。
カズミとマルティナとドロシーにハンナさんを宿に送ってもらい、俺とレナ、リズはその足でギルドへと向かった。
「侵入ルートは前回と同じ。ヒロヤが見つけた入り口からダンジョンに突入するよ」
リズがミヨリに申請する。
「分かりました。一応、旧ダンジョンの地図を渡しておきますね。恐らくはほとんど変わってしまってると思いますが。後は……これですね。『賢者』ミリアさんから預かっていたものです」
そう言って、ミヨリが地図とスクロールと、魔瘴気の塊に似た石をカウンターに置いた。
「これが『転移陣』のスクロールです。この石は『魔導石』で、これをダンジョン入り口付近に埋めておいてください。そして、ダンジョンの探索を中断する時に、このスクロールで『転移』の魔術を使えば、魔導石を埋めたところまで安全に転移されます」
これが、ミリア校長が作った『転移陣』の魔導具。ダンジョン探索が圧倒的に捗る代物だ。『転移』魔術は上位でもかなり困難な魔術らしい。それをこうやって簡単に使えるなんて。
「そして、また探索を再開する時は、魔導石を埋めた場所で『転移』と唱えるだけで、スクロールで転移陣を張った場所に転移されます」
「……これは捗るね……探索を再開する前に、ここでスクロールをまた受け取ってから行けば良いんだよね?」
スクロールと魔導石を眺めながら、ミヨリに訊ねるリズ。
「はい。それを繰り返して……最深部を目指してください。かなり負担が軽減されるはずです」
ミヨリがニッコリ微笑む。
「軽減どころか……一階から順番に何度も潜って行かなくて良いんだぜ?……思ったより全然早く最深部目指せるよ」
リズがニヤリと微笑み返す。
「それと、森の危険度が以前程度に下がっています。馬で向かっても問題無いと思いますよ」
「そいつぁ助かるね。こちとら身重の女房を家に残して探索に出るんだ。早く帰れるのは嬉しいね」
「身重の女房……?」
リズの言葉に首を傾げるミヨリ。
「あぁ、気にしないで。こっちの話だから」
俺はフォローを入れておく。
「あ、スクロールの使用には結構な魔力が必要とされますので……そうですね、レナさんかカズミさん、あるいはドロシーさん辺りにお任せすれば良いと思います」
「うん。大体使い方はミヨリの説明で分かった」
レナがスクロールと魔導石を受け取ってポーチに仕舞う。
「それでは、明日からの探索……気を付けて行ってらっしゃい」
ミヨリが頭を下げる。
「うん。ありがとね。頑張ってくるよ」
ミヨリに手を振って、俺達はギルドを出て宿へと向かった。
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