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第一章・始まりは…
01・クラッシャー令嬢 報いを受ける
しおりを挟む「トレアンヌ様が計画的にオルトリッチ伯爵ヨハンザ様を騙したのよ!妊娠が確定するまで黙っていたんですもの!!
どうにもならなくなってからヨハンザ様へ妊娠したことをお話してしまったから…ヨハンザ様は仕方なくトレアンヌ・コンテーノ子爵令嬢と結婚したのよ!!
ヨハンザ様はあたしとお付き合いしていたのに…」
また同じことを何回もクドクドと語っていらっしゃるのね…もう何年も経つというのに。
内心の呆れを隠すように目の前で泣き喚く行き遅れの男爵令嬢から視線をはずし、思わず冷めた表情になってしまうのを気取られないよう扇で遮る。
と同時に、ざまぁ!という気持ちも腹の底からふつふつと湧き上がってくる。
目の前で恨み言を気持ちに任せて喋り続ける男爵令嬢に対しては同情も、ましてや共感などカケラも持つことはない。
むしろ、一方的に責められているコンテーノ子爵元令嬢である現オルトリッチ伯爵夫人トレアンヌ様へ味方したい気持ちでいっぱいだ。
同時進行で二人の御令嬢と付き合っていた下衆男ヨハンザ・オルトリッチ伯爵なぞに対して、いまだに未練タラタラな思いを隠しもしない哀れで馬鹿な女。
それが目の前に座す、ミナール・コームプシェ男爵令嬢なのだ。
お笑い草なのだが、このミナール男爵令嬢はそんな下衆男ヨハンザ・オルトリッチ伯爵の囁く甘言(キモ!!)に縋り付き、いまだに薄汚い関係さえ断ち切ろうとしていない。
ふふ…惨めという言葉より他はございませんわね。
オルトリッチ伯爵夫人トレアンヌ様には既に子供が5人もおられるという。その話だけ耳にしても、男であるオルトリッチ伯爵の方が確信犯であることは確実だ、と普通の人間ならば分かるだろう。
その証拠に、オルトリッチ伯爵夫人トレアンヌ様のお腹は休まることなく孕まされていらっしゃると聞き及ぶ。
妊娠した妻と致せない時にだけオルトリッチ伯爵が都合よく扱える令嬢がミナール男爵令嬢なだけ。
そんな簡単なことからさえ目を背け、いまだに過去のオルトリッチ伯爵との関係を引き摺り縋るミナール・コームプシェ男爵令嬢。
いつかオルトリッチ伯爵がオルトリッチ伯爵夫人トレアンヌ様と別れ、ミナール男爵令嬢と改めて結婚、つまり再婚するとでも思い込んでおられるらしい。
うっとりとした顔でヨハンザ・オルトリッチ伯爵が囁いた甘い戯言を語るミナール・コームプシェ男爵令嬢には反吐が出そうだ。
「ヨハンザ様は無理矢理好きでもないオルトリッチ伯爵夫人トレアンヌ様との婚姻を続けざるを得ないの…だから互いに好きあっている あたしとは結婚できないのよ」
さもオルトリッチ伯爵が話した言葉であるかのようにミナール男爵令嬢が周囲へと伝えている。
しかし、よくよくミナール男爵令嬢の話を聞いてみれば、オルトリッチ伯爵はオルトリッチ伯爵夫人トレアンヌ様と別れるつもりなどなく、ミナール男爵令嬢とは子供さえ儲けるつもりもないが体の関係だけは続けたい、などとほざいていらっしゃるらしい。
恥の上塗りとしか思われない話を滔々と、まるで悲劇のヒロインよろしく自分に酔い痴れながら語るミナール男爵令嬢を見遣る。
他の友人の御令嬢や御夫人方はこぞって「そのように不実な男など、お止めなさいませ!」と真摯に忠告していらっしゃるのに、ミナール・コームプシェ男爵令嬢はオルトリッチ伯爵夫人トレアンヌ様への逆恨みとも言える罵りの言葉を繰り返すばかり。
聞く耳さえ持たない者の垂れ流す、傍迷惑な繰り言だ。
なんと…お馬鹿さんなのでしょう!
滑稽なほどに自己陶酔しながら喋り続けるミナール男爵令嬢を眺めつつ、私は内心笑い転げそうになっていた。
『二人の御令嬢と同時並行でお付き合いしていましたが、結婚したのは妊娠した御令嬢とです!』
事実がそれだけのことだと思っていらっしゃるのならば、随分とまあ…お幸せなことね?
ミナール男爵令嬢との関係は遊びでしたからオルトリッチ伯爵も簡単に別れることができた、だけでしたのよ。
そして都合の良い盲目的な馬鹿な女だからこそ、オルトリッチ伯爵はオルトリッチ伯爵夫人トレアンヌ様とご結婚後も、ミナール男爵令嬢と薄汚い関係をいまだ続けておられるということでしょう?
こんなことは周知の事実ですのに。
まともにご自分のことを客観視さえもできない、行き遅れた男爵令嬢なんて…!
そんなミナール・コームプシェ男爵令嬢に潤沢な資産運用を誇るオルトリッチ伯爵夫人など務まる訳がないことはヨハンザ・オルトリッチ伯爵ご自身が一番よくお分かりになっておられるはず。
にも関わらず、狡猾に立ち回るオルトリッチ伯爵の戯言に目を眩ませ盲目的に従っているなど…
ああ、ミナール男爵令嬢の愚かさにはお腹の皮が捩れてしまいそうなほど!可笑しくってお腹が痛くなってしまったら、どういたしましょう…ふふふ
こんな酷いことばかり私が考えていることをお知りになられた貴方は、私を非道と思われるでしょうね?
けれども、あなたも事実をお知りになられれば、それも致し方ないとお考えを改められますわ…
このミナール・コームプシェ男爵令嬢は他人の恋路を邪魔するしか脳がない、傍迷惑なクラッシャー令嬢として名を馳せる自惚れ勘違い令嬢ですの。
ミナール男爵令嬢から被害を受けた被害者貴族が集えば、たちまち被害者の会ができてしまうほど、なのでしてよ?
だからこそ、ミナール男爵令嬢の不幸を本気で心配する者は皆無なの。皆様、話を聞くふりをして陰で嘲笑っていらっしゃるわ。
今回の集まりの場でも皆様眉を顰めつつ、陰ではミナール男爵令嬢の愚かさを嘲笑っておりましたもの。
親しい友人同士の集まりというのに場を弁えないミナール男爵令嬢ご本人の口から、周り回って日頃の報いを受けている話を聞くなんて呆れてしまいますわよね。
半ば強制的に話を聞かさせる度に、オルトリッチ伯爵がミナール男爵令嬢をいいように扱う言動が度を超えて酷くなっていく。
にも関わらず、ミナール男爵令嬢が嬉々としたご様子でいることは、もはやお約束のようになってしまっている。
それでも私はミナール男爵令嬢を哀れむよりも、因果応報とはこのこと、と思ってしまいますの。
王立学院初等部の頃より互いに想い合っていた幼馴染との仲を引き裂いたのは、当時、親しくしていたはずのミナール・コームプシェ男爵令嬢 張本人でしたもの…
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