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本編
堅物真面目な恋人がお預けをくらったらどエロいことになった件
しおりを挟むどこかからチュンチュン、と鳥の鳴く声が聞こえる。朝らしい。
窓から射し込んでくる朝日が眩しくて、俺は思わず目を細めた。
緩慢に視線を動かして辺りを見回すと、広くてふかふかのベッドと、俺の家よりも高い天井。そして隣には——稀代の天才錬金術師であり、今は俺の恋人でもあるルイスの姿が。ルイスはまだ眠っているようで、俺のすぐ横で健やかな寝息を立てていた。美しい銀髪と翡翠色の瞳を生まれ持ち、目鼻立ちも恐ろしいほどに整っているルイスは、あいも変わらず寝顔までイケメンだ。くそ、何だかむかつくな。
ええと、ここは……ルイスの部屋だ。そうか、そういえば昨日はルイスの家に泊めてもらったんだったな……。
部屋の時計を見ると、時刻は朝の七時。そろそろ起きて朝食の用意をしたほうがいいことはわかっているものの、やけに身体が気怠くて、そのせいか頭がなかなか覚醒してくれない。普段だったらもう少しくらいは目覚めがいいはずなのだが、何故だろうか?
「ん……っ!?」
そう思いながら寝返りを打とうとしたら、下半身に違和感を覚えた。
まさかと思い、もぞ、と腰を動かしてみると、くちゅ♡ ぬぷ♡という音、ねっとりとした粘液のようなものが混ざり合う音がする。その生々しい感覚にだんだんと意識もはっきりとしてきて、俺はようやく今の状況を把握した。
もしかしなくても、これ……まだ挿入ってる……。
「ん、くぅ……っ♡」
腰を動かしていまだ挿入されたままのペニスを抜こうと試みるが、ルイスの性器は朝の生理現象でちゃっかり大きくなっている。そのせいでなかなか思うように抜けないどころか、僅かに動くだけでもそれは俺のいいところに当たってしまい、眠ったことで一度は冷めたはずの熱が再び蘇ってきてしまった。
昨日あれだけしたっていうのに、こいつ元気すぎるだろ……。そんなことを思いながら俺はルイスの身体を揺すった。
「ルイ……おい、ルイ! 起きろ!」
「ん……、んー……」
ルイスはまだ大分眠たいようで、俺の呼びかけに辛うじて反応は示したもののなかなか状況を理解してはくれなかった。
ルイスの目は依然閉じられたままだが、それでも声の主が俺だとわかるのか、俺の背中に腕を回して抱き枕のようにぐっと引き寄せる。身体が密着したせいで余計に挿入が深まる結果となり、俺はたまらずまた嬌声を上げてしまった。
「ひゃんッ♡ ……く、この野郎……っ!」
まだ寝惚け眼なルイスとは対照的に、俺は完全に覚醒してしまいきゅんきゅん♡と疼くアナルから快感を拾ってしまう。昨晩の行為中に装着していたはずの避妊具は、何度も射精したせいかはたまた長時間つけっぱなしにしていたせいか、俺が起きた時点で既に外れてしまっていたようだった。
少し動くたびに、ぬぷん、ぬぷん♡という卑猥な音が部屋の中に響く。一刻も早くペニスを抜かねばという思考はいつの間にかなくなっていて、気付けば俺はただただ快楽を得るためだけに下半身を動かしていた。とろりとした精液が溢れる生温かい媚肉に扱かれたからか、中に入ったままのルイスの性器がむくむくと質量を増していく。きもちいい。朝からこんなことをするなんてみっともないという思いはある。はしたないし、汚らわしい。でも、腰が止められない……。
「んっ、んっ、んっ……♡」
「随分と熱烈な目覚ましだな?」
「えっ、あッ……!?」
既に風前の灯でしかない理性と葛藤しつつも快楽を貪っていると、すぐ傍で聞き慣れた声がした。驚いてそちらを見ると、いつの間に起きたのか、ルイスが目を開けてにんまりと笑っていた。
一気に顔が熱くなる。まずい、見られてしまった。さっきまでぐっすり寝ていたはずなのに……どう誤魔化せばいいんだ。いや、これは流石に無理か……。
というか今更すぎるけど、俺もルイスも裸で寝ていて何も身に纏っていないため、布団をかぶっているとはいえ俺が何をしているかなんて一目瞭然だ。そうでなくとも、ルイスからすれば下半身の感覚で俺がペニスを咥え込んで腰を振っていることは一発でわかるだろうから、仮に服を着ていたところで何の意味もないのだが。
「違っ……お前が、入れたままで……!」
「ああ、そうだった。ネロの中があまりにも気持ちいいから、つい」
「なに馬鹿なこと……あんっ♡」
ルイスの言い分にすかさず噛みつこうとしたら、不意にとんっと奥を突かれて思わず甘ったるい声が出てしまう。
自分のものとは思えないような、高くて艶を帯びた声。恥ずかしくて慌てて両手で口を塞いだが、時既に遅しだった。至近距離にいるルイスにはその声をばっちり聞かれてしまったし、それどころか俺の中に入ったままのルイスのものが一段と大きくなった気がした。
「おい、なんで大きくして……! ていうか、朝っぱらから盛るな!」
「悪いネロ、一回だけだから」
「あっ♡ や、そこ、突くなぁ……ッ♡」
とんっ♡ とんっ♡とリズミカルにいいところを突かれて、精液でぬかるんだ中がぬちゅぬちゅと音を立てる。当然俺は抗議したが、そもそも寝ている恋人のペニスで気持ちよくなって勝手に腰を振っていたのは誰だったか、そんなことを言われてしまえば最早ぐうの音も出なかった。
いつの間にか身体はルイスに組み敷かれていて、正常位の体勢にさせられている。ルイスのすっかり完勃ちになったペニスが胎内を圧迫して、俺の前立腺を容赦なしにごりごりと責め立てた。ルイスのものはつい数時間前に出したばかりとは思えないほどに大きく、太く、そして熱くなっている。苦しいけれど、気持ちよくてたまらない。
本当に、朝から何をしているんだ。信じられない。だけどそんな思考もルイスのバキバキに硬くなったペニスで奥を突かれると、いとも簡単に霧散してしまう。喘ぎ声が抑えられない。認めたくはないけど、やっぱりナマでするの気持ちいい……。
「んっ♡ あ、アッ……あんっ♡ そこっ♡ は、あぅ……♡」
「エッロいなぁ……♡ ネロ、もう一回だけいいか?」
「ばか、やだ、いっかいだけって……あああっ♡」
ビュルルルッ、と大量に中に出されても、ルイスの性器はほとんど萎えずに硬度を保ったままだった。一回だけと言ったのに、俺が止めるのも聞かずにルイスが第二ラウンドを開始してしまう。流石にもたない。というかこんなことをしている暇があったら朝食を用意しなきゃだし、着替えもまだだし、そもそもまずシャワーを浴びないといけないのに……。
俺とルイスの朝は、往々にしてこのような不純行為から始まる。
これが嫌じゃない自分も、なんだかんだで慣れてきている自分も、どちらも自覚はしていた。
それでもやっぱり……朝からは色々きついから本当に勘弁してくれ!
✦✦✦
「研究会? ……ああ、もうそんな時期か」
秋が深まり、だんだんと肌寒くなってきた某日。
俺が事務所の郵便受けに届いていた手紙を見せるなり、ルイスは興味なさげに呟いた。
『研究会』とは。
一年に一度、国家公認錬金術師のみを招集して行われる集会の通称である。国が直々に運営する集会で、毎年時期になるとこうして国内の錬金術師すべてに招待状が送られるようだ。集会でやることは主にこの一年での自身の研究内容や成果報告だったり、錬金術師同士での情報交換だったり、あとは単純に顔合わせだったり……らしい。俺は錬金術師ではないため、当然参加したことがなく詳しくは知らない。
手紙によると参加は一応『任意』だそうだが、他でもない国からの招集である。これを無視する人間はそうそういないだろう。……と言いたいところだが、今俺の目の前にる稀代の天才錬金術師は昨年これを欠席したらしい。なんてやつだ。ルイスはそういった集まりや交流を煩わしいと感じるタイプであることは重々承知しているが、新人のくせしてなかなか度胸があると思う。いや、怖いもの知らずなだけか?
「欠席の返事を出しておいてくれ」
「行かないのか?」
「こういう時間ばかりかかって実りのない集まりは嫌いなんだ。そんなことよりも、他にやるべきことが沢山ある」
案の定、ルイスは今年も出席する気はないようだった。
そんな彼の様子を見かねて、俺はお節介だとわかった上で一応言ってみる。
「でも、去年も欠席してるんだろ? 錬金術師になってから一度も顔を見せないっていうのは、周りからの印象もよくないだろうし……一度くらいは参加してみたらどうだ?」
ルイスは間違いなく天才で、そこいらのベテラン錬金術師より余程優秀であることは俺が誰よりも知っている。しかし、それでもルイスは錬金術師の中ではまだまだ若手だ。ただでさえ変人扱いされているルイスではあるが、それに加えてあまりにも付き合いが悪すぎると、国からの評価だけでなく同じ錬金術師の先輩方からもよくは思われないだろう。周りからの評価がどうであれルイスの実力は誰もが認めざるを得ないくらいに抜きん出ているとはいえ、今後の円滑な仕事のために同業者同士のコネクションを築いておくのは決して悪くはないと思うのだが。
「それに、同じ分野の先輩方にお会いできる機会もそうそうないじゃないか。一応お前も錬金術師の中ではまだ新米の部類なんだし、勉強になることも多いかもしれないぞ」
錬金術師の資格すらない、一介の助手風情が上司に向かってこんなことを言うのは本来であれば失礼にあたるだろう。もっと身の程を弁えて発言するべきなのだとわかってはいるが、単純に「嫌いだから」という理由だけで国がお膳立てしてくれた貴重な機会を棒に振ってしまうのは勿体ない気がしたのだ。
そんな俺の言葉にルイスは怒りこそしなかったが、意味ありげにこちらをじっと見据えたのちに口を開いた。
「……ネロは俺に行ってほしいのか?」
「え」
「研究会の日程は三日間。つまり参加すれば俺は三日も事務所を空けることになる。お前はそれでもいいのか?」
「それは……」
ルイスにそう言われて、俺はすぐに自分の浅はかな考えを恥じた。
若くして稀代の天才錬金術師と名高いルイスは、当然ながら普段から多忙を極める身である。依頼はひっきりなしにやってくるし、それらをこなしながら個人的な研究もしているのだから、そんな中で研究会のために三日もスケジュールを空けるのはそれなりに痛手だろう。いや、研究会の日付は一ヶ月以上先だし、今から調整すればできなくはないのだが……。出席したとしても、ルイスがいない以上このアトリエは三日間ほぼ稼働しないことになってしまう。俺一人でも簡単な作業や来客対応なんかはできるが、そもそも自分が不在の間、助手とはいえ赤の他人である俺に大切なアトリエの管理を任せるのはルイスからしたら不安だと思う。
「……そう、だよな。お前も忙しいよな。ごめん、俺が考えなしだった」
「そうじゃないだろ!」
俺が素直に謝罪すると、しかしルイスはなぜか大きな声を出して俺の肩を掴む。突然のことだったので掴まれた肩がビクッと揺れてしまったが、そんなことはお構いなしにルイスは至極真剣な顔で言葉を続けた。
「俺と丸三日も会えないんだぞ。ネロは寂しくないのか?」
予想外の一言に思わず「は?」と声が出てしまった。
突然何を言い出すのかと思えば。そりゃあ学生時代から助手として働いている現在まで、ルイスとはほぼ毎日顔を合わせている。それに加えて恋人同士になってからは一緒にいる時間が更に長くなったと思うし、こいつが隣にいない時は少し物足りないと感じることもあるけど……。まあ、それでも俺だって一応大人だ。仕事に私情は持ち込まない、くらいの分別はできる。
それに、たかだか三日程度で今更なんだ。今までだって三日、いやそれ以上の期間ルイスと会わないことはあった。ルイスとの予定がない休日や連休とか、学校の長期休暇とか、あとルイスが研究で詰まっている時は同じ職場にいたってほとんど顔を見ないし会話だってない。だから仕事で三日事務所を空けるくらい、それほど大騒ぎするようなことではないだろう。そりゃあ寂しいのかって言われたら、ちょっとだけ寂しいかもしれないけど……。
「それは……まあ、少しは……」
「おっと?」
「で、でも! それとこれとは話が別だろ。お前の錬金術師としてのキャリアにも影響するかもしれないし……」
少しは寂しい、と言いかけたらルイスが調子に乗りそうだったので、俺は慌てて言い直した。
ほら、ルイスがニヤニヤとした顔でこちらを見ている。ここで素直に「寂しい」なんて言ってみろ、しばらく揶揄われるのは目に見えているだろう。
俺は気を取り直すように咳払いをひとつしてから、ルイスに言う。
「とにかく……お前がそこまで嫌なら俺はもうとやかく言わないけど、ちゃんと後先考えて行動しろよな」
俺はそれだけ伝えると、また仕事をするべく自分のデスクへ戻ろうとした。
しかしその前に、ルイスの発した一言で足を止めることとなる。
「……そうだな。今年は出席しよう」
「えっ」
「お前の言い分にも一理あるからな。一度くらいは顔を出してもいいだろう」
俺は自分の耳を疑った。
ルイスが……ルイスが俺の意見を聞き入れた、だと……!?
容姿端麗、頭脳明晰、そして天才。天が二物どころか六物くらいは与えたかのようなルイスは、それゆえに自信家でもあった。そんな唯我独尊と言わんばかりのルイスは、今まで他人から何を言われようとも自分の研究や好奇心を追求し、時として俺もその被害を被ってきたというのに。もっともルイスはすこぶる頭が良いから、その自信にも知識と経験に基づいた根拠がちゃんとあるのだろうし、俺もそれを信用した上で彼に従っているわけだが……。
俺と交際を始めてからというもの、ルイスは何か変わった気がする。
以前よりも俺の話を聞いてくれるようになった。身体のこととか、お金のこととか、生活のことをたびたび心配してくれるようになった。というか全体的に俺に対して優しくなった気がするし、気遣いや配慮というものを言動の端々に感じるようになったとも思う。つまり、容姿もスペックも完璧だが性格には多少難がある……と言わしめていたルイスが、今や誰の目から見ても完全無欠の魅力的な恋人になってしまったのだ。俺は俺でそんなルイスも、いやどんなルイスであろうともすっかりズブズブに惚れ込んでしまっている状態で、もうどうすればいいやら、だった。
「……ネロ。ネロ、聞いてるか?」
「あ、……わ、悪い。何の話だったっけ……」
そんなことに思考を巡らせているうちに俺は上の空になっていたらしい。ルイスに何度か名前を呼ばれてはっと現実へと引き戻された。
「俺が研究会に出席する三日間、このアトリエはお前に任せることになるが、引き受けてくれるか?」
「ああ、もちろん。俺でいいなら全然……」
そんな簡単に俺に頼んでいいのかとは思うけれど、このアトリエの従業員は俺しかいないので俺以外にそうそう適任がいないのも事実だ。俺はルイスからの申し出を快く了承した。
先ほどルイスも述べた通り、所長であるルイスが不在である以上、いくら俺がいようとも実質三日間このアトリエは開店休業状態になる。当然俺にできる限りのことはしていきたいとは思うが、俺は錬金術師の資格を持っていないので、ルイスの代わりに薬を調合することができないのだ。俺がそのことを伝えると、ルイスは問題ないと言わんばかりに即答する。
「大丈夫だ。今受けてる依頼はあらかた片付けてから行くつもりだし、ネロはいつも通り日常業務をしていてくれればいい。もし不在の間に俺宛の要件が届いた場合は後で伝えてくれ」
確かに、それなら俺一人でもなんとかなりそうだけど……。
幸か不幸か、ルイスがいなかろうとやることは山積みだ。研究資料の作成と整理、クライアントとの諸連絡、経理業務、在庫管理。それと発注していた材料が届き次第受け取りと中身の確認をして、決まった場所に保管しなければならない。そんなことをしていれば三日などあっという間に過ぎるような気もしていた。
俺は諸々をメモに取り、ルイスが不在の間どう事務所を回していくか段取りを決めていく。調薬の他にもルイスにしか出来ない案件が来た場合はどうするかなどの指示をもらい、打ち合わせが一通り終わった頃にはルイスの留守を預かることにそれほど不安も感じなくなっていた。
そんな俺に、ルイスは「それともう一つ頼みがある」と言って再び口を開いた。
「いくら事務所のセキュリティが万全とはいえ、夜間が無人になるのは少々心配だ。もしよければ、俺がいない間、ネロが俺の家に寝泊まりしてくれないか?」
夜に明かりをつけてくれるだけでいい。家の中のものは自由に使って構わないし、家事や掃除に関しては気を遣わなくていいから。ルイスはそんなことを言いつつ俺に留守番を頼み込んでくる。
ああ、これは多分ルイスなりの優しさだ。俺が狭くて空調のないボロアパートに住んでいることをルイスはよく思っていないから。それは俺を心配してのことで、あんな家に住んでいてはいつか身体を壊すぞ、とよく俺に小言を言ってくるし、俺が寒い部屋でひもじい思いをするくらいならとこれまでに何度も同居を持ちかけてくれている。だが俺がそれを断り続けているため、ならばと彼は常日頃から広い上に空調完備である自分の家に何かと理由をつけて俺を泊めようとするのだ。今回もきっと同じような心積もりなのだろう。
「……わかった。お前がそれでいいなら、そうする」
「ああ、是非そうしてくれ」
俺がそう返すと、ルイスは満足気な表情で頷いた。
——ルイスの気持ちは、嬉しい。同居しようと言ってくれるのだって、本当は嬉しいのだから。
でも、一緒に住むことはできない。これ以上ルイスの世話になっては間違いなくばちが当たるし、金銭的にも生活的にも彼の負担になってしまう。それに今の俺は勉強中の身だ。ルイスの傍にいてはどうしても気が緩んでしまうだろうし、甘えてしまうから。だからせめて来年の国家錬金術師の筆記試験が終わるまでは、今の環境を変えるつもりはなかった。
今回の留守番だって、本当は遠慮したいくらいだ。ただルイスが俺の意見を聞き入れてくれるようになったのと同じように、俺もルイスの気遣いや厚意は出来るだけ素直に受け取りたい、と思うようになっていた。家主のいない家で好き放題するのはやはり気が引けるが、今回は事情が事情だし、ルイスの気持ちは嬉しいから……甘えることにする。
✦✦✦
そして、それから約一ヶ月後。
今日から三日間、ルイスは研究会に出席するため不在となる。
かくして俺の留守番生活が始まった。
ルイスは早朝に出発していった。といってもあいつは寝起きが悪いから、俺が叩き起こしたんだけど。なんなら宿泊のための荷造りをしたのも俺だし、一番上等なよそ行きの外套をクリーニングしてブラシをかけたのだって俺だ。いや、別にルイスからやれと言われたわけではないが……国から直々に招かれるのに、何か失礼があったらいけないだろう。身だしなみだって大事だしな。
出発前もルイスは俺のことをいたく心配していて、やれ戸締まりは忘れるなだの、やれドアを開ける前に必ず相手を確認しろだの、他にもあれやこれやと色々言ってきた。仕事中は普段からそうするように心がけているし、ルイスもそれは知っているはずなのに、自分が傍にいないというだけでこうも変わるものだろうか。もっとも、アトリエに保管してある薬剤や機密書類は万が一にでも持ち出されてはいけないものだし、その管理を三日間俺一人に任せるとなるとこれだけ心配になる気持ちも理解できるけれども……。
子供じゃあるまいし、と内心でぼやきながらも、俺はルイスのいない事務所でひとまず普段通りに仕事を開始した。
事務作業しかできないと言えども、それでもやるべきことは多くある。それらに手を付けているうちに、一人きりの職場でつつがなく時間は過ぎていった。
ふと気が付けば時刻は正午を回っている。そろそろ実験室にいるルイスに声をかけに行って、昼食を用意して——いや待て、ルイスは今いないんだった。彼は出払っていてアトリエのどこにもいないのだから、実験室に呼びにいく必要も、ルイスの食事を用意する必要もない。すぐにそのことに思い当たったものの、そうすることがとっくに習慣となっていたせいでつい普段通りに動こうとしてしまった。
その後も、コーヒーをつい二人分淹れてしまっていたり、誰も食べない軽食を作ろうとしていたり……。ルイスがいないことに慣れておらず、やたらとしなくていいことを無意識にしてしまっていた気がする。誰も見ていないが、恥ずかしい。
そんなことがありながらも時間は過ぎていき、無事に今日の仕事を終えた俺は、事務所の施錠確認をしてから二階の住居部分へと移動した。ルイスは職場であるアトリエの二階に住んでいるため、通勤が楽でいいよなと常々思う。そして俺はルイスの言いつけ通り、今日から三日間ここで生活することになっている。
同居こそしていないが、ルイスの家には幾度となく泊まらせてもらっているので大体の勝手はわかっていた。それこそルイスと交際するようになってからもう何十回とお邪魔しているので特に不自由もない。何故それほどまでの頻度で上がり込んでいるのかって……俺の家は壁が薄いんだ。あとは察してほしい。
ルイスの家のキッチンを借りて、夕食の準備を始める。俺の家の狭く簡易的なものとは違い、ルイスの家はキッチンに至るまで充分な広さがあり、調理がしやすかった。俺は特段料理が好きだとか得意というわけではないのだが、この機能的かつ快適なキッチンを使わせてもらうのに生半可な腕では勿体無いだろう……というわけで実は陰でこそこそと図書館に通いレシピの研究に精を出したりしていて、今ではそれなりにレパートリーも増えたと思う。
……本音を言うとそれだけではなく、ルイスに少しでもまともなものを食べてほしいから、ルイスが美味しいと言って喜んでくれるのが嬉しいから、という理由があるのだが。これはあまりにも恥ずかしくてルイスに言えたものではないので、キッチンがどうのというのはあくまで建前として。いや広いキッチンは純粋に使いやすいし羨ましいのでこれも本音ではあるが。
とはいえ、今日はルイスがいない。日頃からルイスのために飯を作っているようなものだったので、今日の夕食は普段と比べると簡単なものになった。まあどうせ俺しか食べないんだし、こんなものでいいよな……と、一人だとどうしてもそういった思考になってしまう。
食事を終えたら片付けをして、余った料理は冷蔵庫に保存する。ルイスの家は冷蔵庫も大きくて、一人暮らしなのにこれほど大容量の冷蔵庫は果たして本当に必要なのだろうかと疑問に思うこともあるが、結果として俺は助かっている。大量に作り置きしようとも、鍋ごと入れようとも、ほとんど中のスペースを圧迫しないのだ。
そして入浴に関しても俺はシャワーで済ませるつもりだったのだが、それを読まれたのかルイスから「ちゃんと湯に浸かるように」と言付けられてしまった。その方が疲れが取れるからと。ルイスの家のものを勝手に使うのはいまだに気後れしてしまうのだが、ルイス本人からそう言われてしまっては従うほかないだろう。というか多分、何も言わなければ俺が遠慮すると思ってわざわざ指示をしてくれているんだろうな……と思う。ルイスの気遣いは純粋に嬉しいが、なんだかくすぐったくも感じる。
バスタブに湯を張っている間、ふと部屋の隅を見ると僅かに埃が溜まっていて、俺は思わず眉を顰めた。広い家だから掃除が行き届かないのは仕方のないことだが、だったら家政婦を雇うなり何なりすればいいのに。とはいえルイスは自分のテリトリーに他者が踏み込むのを極度に嫌う人間であることを俺は知っているので、いつもは見かねたタイミングで俺が掃除しているのだが。
決めた。明日はこの住居部分も含めて、アトリエを隅から隅まで掃除しよう。
掃除は得意なほうだ。ルイスは掃除はしなくていいと言っていたが、散らかっている部屋を見ているとこちらが落ち着かない。普段生活する場所もそうだし、特にアトリエでは劇薬なども取り扱っていて、埃をそのままにしておくと何かの拍子に引火する危険性だってある。衛生的にも安全的にも、やはりこまめに掃除をすべきだろう。もちろん日頃から施設内は清潔に保つよう心がけているが、万が一見落としがあってはいけないし。うん、たまにはいいだろう。
そんなことを考えながら入浴を済ませ、それから軽く家事と勉強をしているといい頃合いの時間になったので俺はベッドに入った。
ルイスは一人暮らしなので、当然寝室もベッドもこの家には一つだけしかない。だがそのベッドはどうしてかクイーンサイズで、男二人で寝ても充分な広さがあるため、日頃泊まらせてもらう際も特に困ったことはなかった。
ルイスから「寝室のベッドを使っていい」と言われていたので俺は素直にそれに従い、一人には少々広すぎるベッドに横になる。普段はルイスも同じベッドで共に眠るのだが、今日は俺一人。なんだか落ち着かない。
思えば、ルイスとは学生時代からずっと一緒に生活してきた。
学生の頃は寮が同室だったし、学校を卒業してからすぐにルイスの助手になったため職場も同じ。その上今は頻繁に彼の家に泊まらせてもらっている間柄だ。なんだかんだでもう数年くらいは一緒にいるんだな、と思うと感慨深いものがある。
ルイスは昔から天才で、周囲から一目置かれる存在だった。
学生時代は授業にもろくに出ず寮の部屋で研究ばかりしていて、それでもテストは毎回ほぼ満点な上にその研究での成果物はどれも表彰ものというのがまたタチが悪く、教師陣も彼に授業に出ろとは強く言えないようだった。
一方俺はというと、努力はしていたものの勉強ではルイスに敵うはずもなく、容姿は地味で平凡。運動音痴で、人付き合いが何よりも苦手。美しい容姿と優秀な頭脳を持ちつつもやはり変人と名高かったルイスほどではないが、俺も俺で周りにはあまり馴染めていなかったと自負している。そんな俺がルイスと寮で同室になったのは、はたして偶然か必然か。
「………」
ぼんやりとそんなことを考えていたら、瞼が重くなってきた。
もう夜が更ける時間だ。ルイスも今頃は滞在先のホテルのベッドで寝息を立てているだろう。明日も仕事だし、俺も早いところ寝なければならない。ルイスがいない間、この事務所は俺が守らなければいけないのだから。
ルイスの部屋のベッドは、俺の家にある中古のシングルベッドとは比較にならないくらい寝心地がいい。マットレスはふかふかだし、シーツも肌触りがよくて、ルイスの家に泊まった日は普段よりもよく眠れている気がする。
ルイスがいつも寝ているベッド……。
……そう考えると、今更ながらに心臓がドキドキしてきて。
俺は変な方向に向きかけた思考をかき消すかのように「明日も早いから」と自分に言い聞かせて、そのまま眠ることにした。
明日も頑張ろう。俺に大事なアトリエを預けてくれたルイスの信頼を裏切ることがないように。
そう思いながら俺は目を閉じた。
——ことが起こったのは、三日目の夜だった。
✦✦✦
- side ルイス -
ネロの助言で研究会に出席したはいいものの、二日目にして俺の頭の中は『退屈』の二文字で埋め尽くされていた。
国家公認錬金術師はそれほど数が多くない。そもそも魔力を持って生まれる人間自体が稀有であるし、魔力があるとしても当然職業の選択権はある。わざわざ最難関と名高い試験を受けてまで錬金術師になろうという物好きは俺が思うよりずっと少ないのだろう。事実、現在我が国では現役の錬金術師は三十人程度しかいないらしく、その数の少なさも難関職というイメージに拍車をかけていた。
だからこそだが、国が直々に招集して行われるイベントであっても、その顔ぶれは毎年ほとんど変わらないようだ。その上で俺のように資格を持っていても欠席する者がいるため、実際に集まっているのは二十人いるかいないかといった具合だった。
人数が少なければ、メインである「研究成果の共有」とやらにもそれほど時間を要さない。正直言って他の錬金術師の研究成果などにあまり関心のない俺は、この二日間ですっかり飽きてしまっていた。
ひとつだけ特筆すべき点があったとするならば、近頃他国から流れてきていると噂の違法薬の解析進捗くらいだろうか。
おそらく錬金術の心得がある者が安楽死用の薬に改造を施して作られたと思われるその毒薬は、飲めばひとたび生きる気力も体力も失って、何も感じないままゆるやかに死を迎えるという、一部の人間にとっては都合のいい薬である。確か以前俺のところにも対処療法用の薬の開発依頼が来て、それより死者数は少しばかり抑えられたようだが、いまだその解析には難航しているとのことだった。
というか、そもそもだが。
そんな真面目な話は全体の割合からするとごく僅かであって、このイベントはどちらかというと錬金術師同士の顔合わせや交流が主になっているらしい。俺は初めて参加したので知らなかったのだが、実際に昨日も今日も、空き時間のたびにやたらと色々な人間に話しかけられた。
確かにこの年齢で公認錬金術師、しかも製薬会社のお抱えなどではなく完全に独立して活動している……となると、俺に対して物珍しさを感じる者が多くいるのは想像に難くない。俺が錬金術師の資格を得てから今回が初参加だったことも要因のひとつだろう。出席者のほとんど全員に声をかけられたような気さえする。俺はたとえ同業者であろうと基本他人には興味がないので、普段のように適当にあしらってもよかったのだが、ネロの助言を思い出して今回は角が立たない程度に挨拶を交わすことにした。
ネロは常に俺のことを考えて行動してくれる。
研究のため実験室に詰めている時はいつの間にか食事を用意してくれているし、その食事も俺が身体を壊さないようにとひとつひとつ栄養を考えて作ってくれているのを知っている。普段の仕事ぶりも充分すぎるくらいで、俺がネロ以外の従業員を雇う気がないせいもあり、彼は助手としての仕事以上のことを日々こなしてくれていると思う。今回の研究会に出席することを勧めてきたのだって、俺の今後の仕事がスムーズに進むように、同業者とのコミュニティもある程度築いておいたほうがいいのではないか……とのことだった。
こうして俺を想って色々と苦言を呈するネロは本当に可愛い。
本人は表に出していないつもりかもしれないが、その言動や表情の変化から、彼が俺に少なからず好意を抱いてくれていることは明らかなのだ。欲を言うならば、俺にしか見せない姿をもっと見せてほしい。普段から無口で無愛想なネロだが、心の底からの笑顔をまた俺に向けてほしい。だからこそ俺はネロのために出来うる限りのことはしてやりたいと思っているし、ネロの「錬金術師になりたい」という夢も、必ず叶えてやりたいと思っている。
ああ、ネロに会いたいな。今頃彼は何をしているのだろうか。
結局のところ、研究会に出席しても俺はネロのことしか考えていなかった。
俺はネロが好きだ。それはもうぞっこんと言っていいほど惚れ込んでいる、という自覚がある。
堅物で融通の効かないところがあるが、真面目で努力家で、人知れず誰よりも頑張っているネロ。言葉こそ素直ではないが、いつも俺のことを第一に考えてくれていて、普段の素っ気ない態度の中にも隠しきれない優しさが滲んでいる。そんな一途で健気な面もいじらしい。
あと、何より可愛い。エロい。ネロは俺とセックスする時だけは、その美しい黒髪を振り乱して、菫色の瞳を潤ませ、白い肌を上気させる。これがもう俺の理性に対して破壊力抜群で、いつもの潔癖な性格とのギャップがまた堪らないのだ。本当に、何度抱いても足りない、その姿だけで無限にイける。
あー、ネロに会いたい。ネロに触りたい……。今この場にいない彼のことを想うだけで俺はつい悶々とした気持ちになってしまい、ミーティングが終わり各自解散となっても会議室の椅子から動きもせずしばらくその場に留まっていた。
「ルイス君、今いいかい?」
ネロを思い出して思考に耽っていたら、不意にかけられた声により俺は現実に戻された。いかんな、集中力が落ちてくるとネロのことしか頭になくなってしまう。
「あ……ええ、どうぞ」
俺がそう返事をすると、その人物は「では失礼」と言って俺の隣の空いていた椅子に腰掛けた。
俺に声をかけてきたその人は、四十代から五十代くらいの年齢と思われる、煉瓦色の赤毛が印象的な男性だ。まだ今回の研究会では挨拶を交わしていなかったが——俺は、彼を知っていた。
「大変ご無沙汰しております、ハロルド卿」
「いや、覚えていてくれて嬉しいよ。君にはうちのネロが世話になっているからね」
俺の言葉に、彼は柔和な笑みを浮かべてそう返してくる。
彼——ハロルド氏は、俺と同じ国家錬金術師であり、ネロの養父だ。
養父、ということなので、ネロとは血が繋がっていないのだろう。そもそも外見も性格も彼とネロとではまったく似通ったところがない。ネロは黒髪に菫色の瞳という、このあたりでは珍しい容姿をしている。しかし彼はそうではなく、髪や目の色もそうだが顔立ちがそもそも違うという印象だ。学生時代に一度だけ会ったことがある養母のほうも、ネロとはまったく似ていなかった。ネロと養父母の間にどういう事情があるのかは知らないが、言葉通りに受け取るならば、遠い親戚か里親なのだと思われる。
「とんでもない。世話になってるのはこちらの方ですよ」
「ああ早速だが、君が今年開発した自白薬が大変興味深くてね。あれについて少々聞きたいことがあるんだが」
彼は俺が作った薬に大層興味があるらしい。俺がネロについての話題を続けようとしたのをスルーし、立て続けに言葉を続けた。ネロの話はいいのか、お前の養子だぞ、と俺は思ってしまったが、おそらくあまり時間がないのだろう。なんなら最初に声をかけられた時からさっさと本題に入りたそうにしていた。彼が興味があるのは俺じゃなくて俺が作った薬なのだと、この態度だけでもはっきりとわかる。錬金術師は変わり者が多いから彼もその例には漏れないのかもしれないが、まるでネロを話のダシにされたようで少し不快に感じたのが本音だった。しかしそれは表に出さずに、俺は彼からの質問に淡々と、答えられる範囲で答える。
ハロルド氏は、国家公認錬金術師。それも俺と同じ薬学専門だ。
ネロが養父母の元に来た時には既に公認錬金術師として活動していたそうなので、俺にとっては一応先輩に当たる人物だ。当然、去年資格を得たばかりの俺よりも錬金術師としてのキャリアは圧倒的に長く、彼本人も公認錬金術師であることを誇りに思っているようだ。もっとも、ここ十年ほどは彼が新薬を開発したなどの大きなニュースは耳にしていなかったし、今回の研究会での彼の報告も軽い挨拶と近況報告といった他愛ないものだったので、現在彼が具体的にどんなことに携わっているのか俺はよく知らないのだが。これについては、ネロなら或いは知っているかもしれない。
錬金術師の中でも特に需要が高い薬学という分野で長年活躍する養父を小さい頃から尊敬し、ずっと憧れてきたのだと、養子であるネロは過去にそう語っていた。あれはいつだったか……学生時代だっただろうか。俺がなぜ錬金術師になりたいのかとネロに問いかけたとき。
『錬金術師になって、少しでもハロルドさんの役に立ちたいから』
そんなことを言っていた気がする。
まったく殊勝なことだ。錬金術師は国内でも指折りの難関職であり、資格を得るには生まれ持った才能と豊富な知識が必要になる。それを家のために、家族のために、己を引き取って育ててくれた養父母の役に立ちたいからと、それだけの理由であれほどまでに努力できる人間はそうそういない。これだけでも、ネロがいかに養父母のことを慕っているのかがわかる。
「——なるほど、非常に興味深い。君はまだ若手だが、女王陛下からも一目置かれる理由がよくわかるよ」
「恐れ入ります」
一通り質問を終えると、ハロルド氏は感心したようにそう言って俺を称賛した。ベテランの大先輩とも呼べるような相手にこれほどの言葉を貰うのはおそらく光栄なことなのだろうが、生憎俺は人付き合いを好まないたちなので、このときは「早く終わらないか」とだけ考えていた。ネロに知られたら無礼だと怒られるだろうが。
「公の場では詳しく言えなかったんだが、私が今関わっているプロジェクトにもぜひ力添えしてほしいな。君さえ良ければだが」
「嬉しいお言葉ですが、研究や依頼で手一杯でして」
「そうか、それは残念だ。だが君はまだ若いからな、自身の研究に没頭するのも決して悪いことではないだろう。もっとも、従業員を増やすなりもっと優秀な助手を雇うなりするのも一つの手だとは思うが……」
ハロルド氏のその言葉を無視できず、目元をピクリと反応させてしまう。俺が険しい顔をしたことに気付いたのだろう、彼はやや気まずげに口を閉じると、今度はあからさまに明朗な笑顔を見せてから俺の方をぽんと叩いた。
「まあ、もし気が変わったらいつでも連絡をくれ。君なら大歓迎だよ」
またいずれ会おう。
そう言い残すと、彼は足早にその場を去っていった。
「……はぁ」
いつの間にか俺一人しかいなくなった会議室の中で大きく息を吐く。彼とは何年かぶりに顔を合わせたが……やはり苦手だ。正直、気に入らない。
彼はどうやら大勢の人間に慕われているようだし、同業者としてもっと親交を深めるべきなのだとは思うが、俺は初めて会った時から彼が苦手だった。理由はただひとつ、彼は養子であるネロのことをあまり大事にしていない気がするからだ。
彼はネロのことをほとんど話題に出さない。もしかしたら興味がないのかもしれない。今日はこの場にネロがいなかったからまだ比較的穏便に感じたが、学生時代に一度だけネロの実家に行った時はこれが顕著だった。
俺が見た限りでは、ネロはあの家の子息として扱われていなかった。それはネロが血の繋がりがない養子であるからなのか、魔力を持たない故に錬金術師になることが事実上不可能だからなのか。どちらにせよハロルド氏の跡を継ぐことができないと判断されているのか、そもそも期待されていないのか、信じられないことにあの家の中ではネロは使用人とほぼ同等の扱いだったのである。
それを目の当たりにした時は、それはもう衝撃だった。家自体はそこらの貴族と変わらないほどの規模と生活水準であるというのに、ネロは料理も洗濯も自分でしているばかりか、養父母と同じ席で食事をすることすら許されていない。しかし教育にはことさら厳しく、家庭教師の一人もつけないくせして学校では良い成績を取ることを強要されていたようだった。ネロがあれほどまでに真面目で、こと勉強に関しては一点の妥協も許さないのは、あの養父母が要因なのではないかと俺は睨んでいる。
それでもネロはそんな養父母に多大なる恩義を感じているようで、家の名に恥じぬよう日々勉学に励み、錬金術師になって養父の役に立つという目標をずっと持ち続けている。そんなネロの夢を、俺が叶えてやりたい。ネロのことが好きだから、どんな形であっても彼には笑っていてほしかった。
だが同時に、相手が養父母であってもそれがネロの障害になりうるのであれば、対策を講じなければならないだろう。願わくばネロにとっても良い形で。
そんなことを考えながら、俺は自分以外誰もいない会議室で長いこと物思いに耽っていた。本当は俺だってこんな余計なことは考えずに、研究とネロのことだけ考えていたいのだが。
ああ、ネロに会いたい……。
✦✦✦
留守番三日目。
一人で事務所を回すのにもなんとなく慣れてきて、仕事も概ね滞りなく進んでいた。相変わらずルイスがいないことには少し物足りなさを感じるが、それも今日で終わりだ。特に大きなトラブルもなく平和に三日が過ぎ去ってくれそうなことに俺は心底安堵していた。
明日にはルイスが帰ってくる。長いようで短い三日間だったなと感慨深く思いながら、俺はいつも通り施錠確認をして今日の仕事を終えると、アトリエ二階の住居部分へと移動した。
自分の夕食は簡単に済ませて、明日帰ってくるルイスのために食事の仕込みをしておく。本当は気乗りしないくせに俺が言うならばと痩せ我慢で研究会に出席したルイスをねぎらうために、明日は普段より豪華な献立にしてやるつもりだ。
それから入浴も済ませて、着替えをしてから寝室へ入る。俺は寝室のデスクの上に参考書とノートを並べると、日課である勉強を始めた。
国家公認錬金術師になるための筆記試験。一日、また一日と迫っているそれに向けて、相も変わらず俺は勉強を続けていた。数ある国家試験の中でも最難関と名高いそれは、生半可な知識ではパスすることなどできない。俺のような出来損ないであるならば尚更、毎日机に向かう程度の努力ではまったく足りないのだ。もっともっと勉強しなければ。俺には覚えるべきことも、新しく学ぶべきこともまだ沢山ある。甘えている暇などありはしない。
——それなのに。
今日はどうしてか集中できない。
なんだか普段よりも頭がぼんやりしているし、身体も熱っぽい気がする。だけど体調が悪いわけではなくて、なんというか……端的に言えば、たぶん、ルイスとセックスがしたい。
そういえば、ルイスと交際するようになってから早いもので半年ほどが経ったが、最近は特に性行為の回数が増えていた。初めの頃は月に数回だったり、週に一度だったり、そのくらいの頻度だったのが、ここ二ヶ月ほどは三日と空いていなかった気がする。なんなら休日なんかは一日に何度もすることだってあった。しかしながら直近では研究会の準備などでお互いバタバタしていたので、もう五日か、六日……おそらくそれくらいの間、ルイスと熱を交わしていないことになる。
普段ほとんど自慰をしなくても問題がないくらい性欲が薄い俺が、まさか一週間と経たぬうちにこんな状態になるだなんて。絶対にあいつのせいだ。ルイスが、俺の身体をこんな風に変えてしまったんだ。……もっとも、そんなことは俺自身とっくに知っていたことなのだけれど。
「……」
集中しろ、と自分に言い聞かせるも、悲しいことに参考書の内容がまったく頭に入ってこない。ペンを持つ手もたびたび止まってしまっている。そして——座っているだけなのに、どうしてか身体の中心がむずむずして、下半身が無意識にもぞもぞと動いてしまう。
そんな状態でも一時間ほどは粘っていたが、ついに俺はペンを置いた。
ダメだ、今日は無理だ。これ以上続けていても無意味に睡眠時間を削るだけだし、諦めてさっさと寝よう。
潔くそう決めると、俺は参考書を片付けて部屋の明かりを消した。ぼふんと倒れるようにベッドにダイブして、大きな溜め息を吐く。こんなに勉強に身が入らないのは久しぶりだった。
布団を被ってすぐに目を瞑る。三日間一人で事務所を守らねばと気を張っていたせいもあって、心身共にそれなりに疲労していた。
この調子ならすぐに寝られそうだ。
✦✦✦
——眠れない。
ベッドに入ってから体感で一時間ほど。俺は目を瞑ったまま、しつこく熱を訴える身体を鎮めようと毛布にくるまりながらじっと固まっていた。
疲れているのに、早く寝たいのに、それができない。股間がずくずくと疼いている。触れずともわかるほど既に性の兆しを見せているそれはどれだけ時間が経とうとも一向におさまる気配がなく、むしろそこにじわじわと血液が集まってきて明確に俺の睡眠を妨げていた。
「……ん」
寝返りを打ち両脚をきゅっと閉じて毛布を挟み込むようにすると、本能的に腰が揺れてしまう。ほんの僅かに動いただけでも充血した性器と布が擦れる感覚は気持ちがよくて、思わず声が出てしまった。
「ぁ、んぅ……♡」
触りたい。
一週間近く放置されたペニスはほんの少しの刺激にも反応してしまい、もはや半勃ちですらなかった。今すぐにここに手を添えて、思いきり扱きたい。そんな思いが脳内をぐるぐると駆け巡る。だが俺の中の理性がそれをギリギリのところで阻んでいた。
駄目だ。自宅ならまだしも、ここはルイスの家だ。しかもここは寝室で、俺がいるのはルイスのベッドの上。そんな場所を俺の自己満足の行為で汚すだなんて絶対にしてはならないことだ。自分にそう言い聞かせながら、ともすれば下に伸びてしまいそうな手を抑えるべく、俺は指に力を込めてシーツをぎゅっと握りしめた。
しかし、全身に力を入れて身を固くしても、既に発情状態のそこは恨めしいほどに言うことをきいてくれない。
今までこんな風になったことなどなかった。
ぐっと押し付けるようにして、シーツに顔を埋める。俺の家のものとは違う、広くて寝心地の良いベッド。そう、いつもルイスが寝ているベッドだ。それに俺は、ここで幾度となく彼と身体を重ねてきている。そう思うと、ゾクゾクと何かがこみ上げてきてしまって……。
「く、……」
思わず、また腰が動いてしまう。
これだけ耐えているのに全然おさまらない。頬に当たっているシーツからほんのりとルイスの匂いがする気がして、それがまた堪らなく俺の情欲を揺さぶった。
それに触発されて、ここにはいないルイスのことを考えてしまう。ルイスも、いつもこんな風になっているんだろうか……?
ルイスは少なくとも俺よりは性欲が強いらしい。毎日のように自慰をしていると以前に言っていたし、前日の夜に何度俺の中に出したとしても、翌日の朝には懲りずに勃起していることが常だった。その無駄に大きいソレで寝起きの身体を何度責め立てられたことか。思い出すだけで顔に熱が集まる。……やばい、想像してしまった。ルイスがここにいたら、いつものように抱いてくれていたのかもしれない、と。
早く寝たいのに、そんな思考とは裏腹にだんだんと興奮が高まってしまっている。
きゅん、とルイスに日々責められ続けたナカが疼く。ふつふつと煮えたぎるような欲望が外からも中からも俺をいたぶり続けて、ついにはペニスからじわりと先走りが溢れた。それが下着を濡らし始めたのを感じた俺は、慌てて着ていた寝間着の下部分に手をやる。
生地が柔らかい緩めのスウェットなので、今の完勃ちと言っていいほど勃起してしまった状態でも特に痛みは感じないが、このままだと服やベッドも無事では済まない。ルイスからの借り物であるそれらを汚してはいけないと、俺は起き上がって寝間着の下を脱ぎ捨てた。
外気に晒された脚が途端に涼しくなる。しかし問題の局部のほうは今にも暴発しかねないほど熱を溜め込んでおり、長時間焦らされ続けた性器はピクンと頭をもたげながら下着を押し上げていた。そして案の定、先端部分が僅かに生地を濡らし始めていたので、急いで下着も脱ぐ。
完全に露出されたペニスは、目を背けたくなるくらいみっともない有様になっていた。押さえになっていた下着がなくなったことによりそれは腹につきそうなほど勃ち上がり、トクトクとカウパー腺液を分泌させながら今か今かと刺激を待ち望んでいる。
……ここまで耐えても鎮まらないのであれば、もう諦めるしかない。一回出せば落ち着くだろうし、すぐに眠れるだろうと、俺はゆっくりと利き手を動かし限界を訴え続けている自身にそっと添えた。
「あっ……♡」
ようやく得ることのできた、直接的な刺激。我慢していた時間が長かったせいか、ただ緩く握り込んだだけなのに驚くほどの快感が背筋を伝って全身を駆け巡った。
気持ちいい。気持ちいい。
一度触れてしまえばもうそれしか頭になくなって、俺は震える手で性器を扱く。ルイスの家で、ルイスがいない部屋で、勝手にこんなことをしてしまっている罪悪感。しかし絶頂が近付くほどにそんな思考も徐々に薄れてきて……いや、むしろ興奮を煽るスパイスにすらなっている気がする。認めたくはなかったけれど。
「は、ぁ、んぅ……ッ♡」
自分でするのは久しぶりすぎてかなり拙い手淫ではあったものの、何度か竿を擦っただけであっさりと射精に至ることができた。びゅく、と先端から精液が溢れる寸前、何のために服を脱いだのかを思い出して俺はベッドサイドに置いてあったティッシュボックスから咄嗟に何枚か抜き取る。間に合った。
「はぁっ……」
射精が終わり、一気に力が抜けて息が上がる。なんだかとても疲れた。
それでもやはり部屋を汚すことだけは絶対にしたくなくて、俺は気怠い身体を叱咤する。なんとか手を動かしてどろりとした白濁をティッシュに纏わせると、そのままゴミ箱に捨てた。
そうして後始末を終えて下半身を見ると、一度射精したお陰でそこは既に萎えていたのでひとまず安心する。そのまましばらくはベッドの上で呆けていたが、絶頂後の余韻が抜けて呼吸が整ってくると、俺はようやく息を大きく吐いた。
やっと終わった。
……はず、なのに。
「……っ」
どうしてか今度は酷く後ろが物足りない。
先程までとは比べものにならないほどの、強い性的欲求。一度射精したことでスイッチが入ってしまったのだろうか、本格的にそこにペニスが欲しくて仕方がなくなってしまった。
それもそのはず。ルイスに幾度となく抱かれた身体は、もうすっかり“イク”といえばこちらの方なのだ。メスイキだとか何だとかルイスは言っているが、実際どういった身体現象なのかは正直俺はいまだによくわかっていない。とはいえ「普通の感覚とは違う」くらいの認識はしていて、ルイスに好き放題開発された身体はとっくの昔にそれが癖になってしまっていた。
ルイスはわかっているのか知らないが、あれは物凄く強烈な、それでいて長く余韻を引くような快感だった。それを殆ど日も空けず、一晩に何度も何度も経験していたら……身体がおかしくなってしまうのも仕方ないと思いたい。断じて俺は悪くない。これはルイスのせいだ。
そう自分に言い聞かせながら、するりとそこへ指を這わせる。自分で触るのは慣れていないので、上手くできるかわからないけど……。
俺は指を一本、ゆっくりとそこへ突き立てた。
つぷ、と指先がそこへ飲み込まれる。普段ルイスの巨根を咥え込んでいるだけあって、俺の人差し指一本程度であれば難なく迎え入れてしまった。
痛みもない。俺は一度指を引き抜くと、今度は人差し指と中指の二本を同時に挿し込む。
「ッ、う……」
今度はさすがに少し痛かった。
それもそうだ、今は日頃の行為だと必ず使っているはずのローションもなければ、避妊具もない。正確に言えば寝室のどこかを探せばそれらはあるのだろうが、そもそもルイスの家のものを勝手に使うという考え自体が俺にはなかった。
仕方がないので、俺は水差しの水で一旦手を清めてから、先程の二本の指を口元に持っていった。そのまま己の唾液で指を濡らしていく。じっくりと時間をかけて唾液を絡ませていくと、その指はぬるりとした粘液を纏いはじめ、間接照明の明かりを受けてテラテラと光りだした。ローションほどの滑りはないだろうが、これでも何もしないよりは幾分かましだろう。
そして充分に濡れたと思われる頃合いで、俺は再びその指を後ろへと宛てがった。
ちゅぷ……♡
唾液が潤滑油代わりとなって、二度目はすんなりと入ってくれた。二本の指を一気に挿入したが痛みは殆どない。少し圧迫感はあるものの、この程度であれば動かしても大丈夫そうだ。
俺はごくりと唾を呑んでから、更に奥へと指を進めた。
「……ひぁうっ♡」
少しずつ中へと入っていく指がとある一点を掠めた時、勝手に腰が跳ねて喉からは普段よりも1オクターブくらい高い声が漏れ出た。……ここだ。ルイスがいつも『前立腺』だと言ってしつこく擦ってくる場所。指を根元まで入れて内側へ少し曲げるようにすると、僅かにそこに当たるようだ。
ぐ、と指の腹でそこを押してみる。
「ふ、ぁ、あ……んん♡」
既にルイスの手によって開発され尽くしている、俺のいいところ。そこへ触れるたびにぞくぞくっ♡と何かが腰にきて、追い討ちをかけるかのごとく思考までもを痺れさせた。
「あ、あ、はぁっ……ふ……ああッ♡」
もう勝手に声が出る。一番感じる場所をピンポイントで押し込むと、下腹部の奥の方がずくずくして、同時にきゅうっと中が強く締まるのを感じた。
きもちいい。でもまだ足りない。俺は三本目の指を挿入すると、めちゃくちゃな手付きでそこを擦り続けた。
いつもは自分では触らないので、どうするのが正解かわからない。だけどただ押したり擦ったりするだけでも半端じゃないくらいに気持ちよくて、気付けば俺は自制を失って目の前の快楽を享受していた。一度射精して萎えたはずの性器もいつの間にかまた熱を持ち起き上がっているが、もはや前を触る余裕などなかった。
「ゔ、アッ……く、ぅんッ♡」
どうしてだろう。いつもより物足りなく感じてしまう。頭がどうにかなりそうなくらい気持ちがいいのに、これじゃまだ全然足りない。
もっと奥を、もっと太くて大きいモノで、何度も何度も突いてほしい……。
つい、そう思ってしまう。
「ん、……はぁっ」
手を動かすのに疲れてきて、俺は後孔から指を引き抜いた。
駄目だ、イけない。後ろでイキたいのに、ルイスとする時のように記憶が飛ぶくらいの快感が欲しいのに、俺の技術ではそれをすることはできないようだった。もし触るのがルイスだったら、どこを触られたってイけそうなくらい気持ちがいいのに……何故だろう。
ルイスが、欲しい。
我慢ができない。明日になればルイスは帰ってくるのにも関わらず、「今すぐに彼が欲しい」と身体が、脳が、そう訴えていた。
いまだ熱を篭らせたままの身体をなんとか叱咤し、服を着る。まったくおさまらない肉欲は自分でもコントロールが効かないが、それでも俺は中でイクのを諦めた。こうなってはもうルイスがいないとどうにもならないことは、これまでの経験で既に知っていたからだ。
俺は一人で何をしているんだと自己嫌悪で泣きたくなりながらも、再びベッドに横になり眠ろうと試みる。思わぬ形でお預けを喰らった身体は相変わらず熱いけれど、一度出しはしたから先程よりは寝付きが良くなっているかもしれない。
「ルイ………」
ここにはいない恋人の名前を口に出すと、なんだか無性に彼に抱きしめてほしくなって、俺は自慰行為のせいで乱れてしまったシーツに頬を擦り付けた。
もう三日会っていない。三日も、ルイスに触れてもらっていない。以前までは平気だったはずなのに、いつの間にかルイスがそばにいるのが当たり前になっていて、俺はルイスがいないと心も身体も飢えてしまうようになっていた。
たった三日離れただけでこんなになるだなんて、なんだか悔しい。だが、ルイスは俺がいなくても何の問題もなく生活していけるのに俺だけが彼に依存している、というのは事実だった。
あいつは知識も技術も優秀で、こと錬金術に関することであればいくらだって努力ができる。そして、誰しもが口を揃えて言うほどの天才だ。本当は俺なんかがいなくたってやっていける。現に今この瞬間も、ルイスは何の問題もなく一人でしっかりと自分の仕事をこなしているのだから……。
居た堪れなくなってぎゅっと両目を瞑る。
はぁ、と吐き出した息はまだ熱かったけれど、もうこのまま無理矢理にでも寝てしまいたかった。
——その時、階下の事務所から僅かに物音が聞こえた。
✦✦✦
強盗か?
ひやりと背筋が凍ったが、すぐに気を引き締める。ルイスがいない以上、今この事務所を守れるのは俺だけだからだ。
施錠はちゃんとしたはず。確認だってした。それにこの住居部分も含めて建物のセキュリティは厳重で、合鍵がなければたとえ魔術を用いたとしても開けることはできないはずだ。
だが、何事にもイレギュラーは存在する。だからまだ油断してはいけない。
俺は寝間着にガウンを羽織ると、足音を殺しつつ一階への階段をそうっと下り始めた。
明かりを点けていないので足元がよく見えない。階段を踏み外さないよう注意しながら一階まで下りると、俺は事務所に続く廊下の角を曲がった。
「うわっ!」
直後、誰かとぶつかった。
やっぱり誰か人がいる!とわかった瞬間は心底恐怖を感じた。しかし、顔を上げてぶつかった人物の姿を確認すると、意外にもそれはよく見知った顔であった。
「ルイ!?」
「ああ、俺だ。悪い……起こしたか?」
目の前にいたのは紛れもない、この家の主であるルイスだった。ルイスが自宅の鍵を持っているのは至極当然のこと。不法侵入者の類ではなかったことに俺はひとまず安心し、緊張が解けた。
三日ぶりに見るルイスは、最後に見た時と何一つ変わらない、いつものルイスだった。……いや、少し疲れているような。そもそもルイスが帰宅するのは明日の朝の予定だったはずで、それをどうしてこんな夜中に突然帰ってきたのか。もし研究会が終わった後すぐに荷物をまとめて無理矢理帰ってきたとするならば、それは疲れるに決まっているだろう。仕事のスケジュールはそれほど詰まっていなかったと思うが、何か急な用事でも思い出したのだろうか。
「いや、ちょうど今から寝ようとしてたとこで……。ていうか、帰りは明日じゃなかったのか?」
「そうだったんだが、少しでも早くネロに会いたくて」
早く帰ってきた理由を聞くと、ルイスはあっさりとそう答えた。
俺に会いたかった、という言葉を聞いて胸がとくんと高鳴る。本当にそれだけの理由で、こんなに急いで帰ってくるだなんて……。普段なら馬鹿なのかと罵ってしまうのだが、なにせつい先刻に俺も同じように会いたいと思っていたのだ。素直に、嬉しいと思ってしまった。
「ネロ……会いたかった」
まだ帰宅したばかりで上着すら脱いでいないルイスだったが、彼はそれを気にする様子もなくそのまま俺の身体を抱きしめた。
ぎゅっと強く引き寄せられると、ほのかに香水の匂いがする。ルイスが普段から愛用している、どこのブランドのものかはわからないが俺にもすっかり馴染みのある、好きな匂いだ。
先程まで外にいたせいか、ルイスの身体は少し冷えてしまっていた。だがこうして密着すると、お互いの体温が混ざり合うような、会えない間に空いた心の隙間が満たされていくような、そんな心地のよい感覚があった。
ルイス。ルイス、会いたかった。俺もお前と同じ気持ちだ。
俺は自らルイスの腕の中に収まるようにして、小さな声でぼそりと呟いた。
「………俺も」
そう口に出したら、不思議と身体がじわじわと熱を持ちはじめて。
ああ、そうか。さっき中途半端なまま終わったから……。
「ネロ」
ルイスの低くて甘い声音が耳朶を打つ。ずっと求めてやまなかった彼の声が鼓膜をダイレクトに刺激するが、今の情欲に支配された俺にとってそれは毒も同然だった。
このままではまずい、と感じた俺は、わざと声のトーンを上げて自らルイスに話しかけた。
「あ、えっと……帰ったばかりで疲れてるよな。こんな時間だけど、何か食事でも作るか? いや、それとも風呂のほうが先か……」
そう言ってさりげなく身体を離そうとしたのだが、ルイスの腕の力は決して緩むことはなかった。ルイスは俺の言葉が聞こえているのかいないのか、そのまま俺の首筋に顔を埋め、何やらすんすんと匂いを嗅いでいる。体臭が気になるのだろうか。入浴は既に済ませているとはいえ、こうも嗅がれると自分はそんなに匂うのかと不安になってくる。
しかしそんな俺の心配をよそに、俺を抱きしめたままルイスはとんでもないことを言い放った。
「エロい匂いがする。もしかして、一人でしてたのか……?」
「……ッ!?」
突然図星を突かれた俺は、それを誤魔化す間もなく思いきり赤面してしまった。
エロい匂いってなんだ。なんでわかるんだ。慌てて自分の腕に鼻を押し当てて匂いを嗅いでみるが、全然わからない。さっきしていたときに出したものはちゃんと拭き取ったし、服にもついていないはず……。
焦りすぎるあまり、否定したり取り繕ったりなどは一切できなかった。この反応ではルイスからの問いを肯定しているも同義だろう。
目に見えて動揺している俺が面白かったのか、ルイスは頬を緩ませて嬉しそうに笑った。
「本当にしてたのか?」
その言葉にますます顔が熱くなる。羞恥が強すぎて知恵熱が出そうだ。
ルイスはそんな俺の前髪を優しい手つきでかき分けると、額にちゅっとキスをした。それから、どこか熱を孕んだ翡翠色の瞳を真っ直ぐ俺に向けながら、こんなことを言う。
「ネロ、食事も入浴も後でいい。……今すぐに、ネロが欲しい」
俺が、欲しい? 今すぐ……?
それって、つまり……。
「え、……!」
ルイスの言葉の真意を正しく理解した瞬間、期待に身体が疼き、ひくんと喉が鳴った。
ドキドキ、ドキドキと心臓がひっきりなしに早鐘を打つ。欲しい。ルイスが欲しい。今すぐに。だがはやる気持ちとは裏腹に、ルイスは疲れているのに帰宅早々そんなことをさせるのは助手失格だと、まだどこかに残っている理性が欲情しきった俺の脳に訴えかけてくる。
だがルイスは俺が葛藤していることもお見通しとでも言わんばかりに、腰に回していた手を動かし、人差し指で俺の下腹部をトンッと小突く。たったそれだけで「んあっ♡」と甘ったるい声が漏れてしまい、瞬く間にどろりと思考が溶けて腰が砕けた。
そこは、俺の一番気持ちいいところだった。今までこの中を幾度となくルイスに責められ、すっかり快感を覚えた場所。今日俺が自分で触れたくても触れられなかった、雄子宮。
もう限界だった。だが、限界なのはどうやら俺だけではなかったらしい。
「あのな、寂しかったのはお前だけじゃないんだぞ」
そう言うなりルイスは俺の膝裏に腕を回しいとも軽々と抱き上げると、そのまま歩き出した。
向かう先は——寝室だ。
✦✦✦
パンッ♡ パンッ♡ パンッ♡ パンッ♡
「ア゛ッ! ん゛ッ♡ あっあっ、あんっ♡ アンッ♡ ルイ゛ッ……も、だめぇっ♡ いっいく! いくぅ゛ッ♡♡」
どちゅっ♡ どちゅっ♡ どちゅっ♡ どちゅんっ♡
「あ゛んッ♡ ま゛、ってッ……ぁ、ひ、あ゛あ゛あああんッッッ♡♡」
三日間俺が一人で寝ていた、ルイスの寝室のベッド。その広く大きいベッドは今やルイスが腰を打ち付けるたびギシギシと激しく軋んで、シーツは見る影もないほどぐしゃぐしゃに乱れていた。
いや、もっと乱れていたのは他でもない俺だった。
拙い自慰で焦らしに焦らされ、そして数日ぶりにルイスと身体を重ねた結果——俺は髪を振り乱しながらもはや悲鳴に近い声で喘ぎ、強すぎる快感についていかない身体をビクンッ♡ ビクンッ♡と痙攣させるだけになってしまっていた。気持ちいい場所を擦られるたびに中がきゅうっ♡と締まり、ルイスの凶器のようなそれを搾りとるように肉襞が絡み付いていく。
「く、締まって……っ♡」
ずん、と一際奥まで挿入されたかと思うと、ルイスが俺の中に何度目かの射精をした。避妊具なんか最初からつけていない。俺がナマでしてくれと懇願した結果だが。
ルイスも相当溜まっていたようで、濃くて粘度の高い種をどぷどぷっ♡と大量に出し続けてもなお、そのペニスはビキビキと音がしそうなほど反り返っていた。その立派なペニスが俺のいいところに丁度よくゴリゴリと当たる上に、亀頭は抽挿するたびに一番奥の結腸を余裕で貫き続けている。俺はもうほぼイキっぱなしの状態で、頭が働かず何もわからない。
ただ、ルイスに愛されていたい。もっと彼が欲しい。長く続く暴力的なまでの快楽に前後不覚になりながらも、俺の胎内はルイスのペニスにきゅうきゅうと縋り付いて、少しでも多く彼を感じようと健気に愛撫していた。
「はぁっ……ネロ、悪い。加減できない……」
もうとっくに加減できてないだろ、と言い返す余裕すらなく、俺はがくがくと震える腕を伸ばしてルイスの銀髪をぐしゃりと掴む。こうしていないと、いまだ揺さぶられ続けている身体が衝撃でどこかに行ってしまいそうな気がしたのだ。実際はルイスが俺の腰を両手でがっちりと掴んでいるため、どれだけ強く突き上げられようとも俺がベッドから落ちたりする心配はないのだが、この時の俺はそんなことを冷静に考えられるほどまともな状態であるわけもなかった。
中で絶頂を迎えて、その長く甘い快感が引かないうちにまた絶頂させられる。その繰り返しだ。
「あ、ん゛ッ♡ や、あっ、ぁっ、あっ……んう゛ぅッ♡♡」
「ネロ……ッ!」
どくどく、どくどく。ルイスの出したものは俺の腹の中に溜まっていき、あまりの量に俺の下腹部はぽこりと精液による膨らみを見せていた。それだけではない、次から次へと出される新鮮なそれに俺はだんだんと煮えたぎるような熱を感じ始めており、もはや五感すらもおかしくなっているようだった。
「んぁ……♡ おなか、あつい……っ♡」
「気持ちいいか?」
「ん、きもちい……♡」
すっかりとろとろに蕩けてしまった情けない口調でそう言った直後、その口をルイスの唇に塞がれる。既に酸欠気味だったため呼吸がままならず最初は苦しさを感じたが、キスをしている間はルイスが腰の動きを止めてくれたので、俺は合間に少しずつ息を整えながらルイスの下唇をはむっと甘噛みした。するとルイスからの口付けが更に深いものになり、とろりと視界が歪む。俺はキスの快感にうっとりと酔いしれながら、自分の中で更に大きくなっていく彼のものを感じていた。
既に限界まで広がったと思っていた中が、ルイスの巨根によってみちみちと拡張されていく。結合部からは中に収まりきらなかった精液が溢れており、それは俺やルイスが身体を動かすたびにぐちゅ♡ ぐちゅん♡と卑猥な音を立てた。
欲しくて欲しくて堪らなかった最奥。余韻どころか常に休みなくメスイキし続けている俺のそこは、まだまだ疼きが止まらない。普段よりも一際過敏になっているそこに思いきり剛直を突き立てられると、俺の喉からは「きゃあっ♡」とまるで女の子のような声が出た。
「はぁ、ンッ♡ あ゛ぅ、ッ、ぁんっ♡ あっ、あ゛っ♡♡」
脚はもう目一杯まで開かされていて、律動のたびにルイスのペニスの根元が俺の恥骨にぴったりとくっついている。本当に全部入ってしまっているのだ。嫌でも実感させられる。ルイスのあの大きなものが俺の腹の中に収まっていることを……。
先程は指を入れるだけでも苦しさを感じていたのに、今は自分でも不思議なくらいに痛みも何もなく、ただ強い快楽だけが俺の腹を殴りつけている。無理矢理こじ開けられたはずの結腸もすっかり馴染んでいて、ちゅぷちゅぷと亀頭に熱烈なキスをしながら性器をぐっぽりと咥え込んでいた。
「るい、るい……すき」
とても自分のものとは思えないようなえげつない嬌声を上げ続けた結果、喉が痛くなってきたし呂律もうまく回らない。というか、もはや自分でも何を言っているのか正しく認識できてはいなかった。俺、変なことを口走ってはいないだろうか?
しかし俺の言葉を受けたルイスは、その端正な顔に驚くほど美しい笑みを浮かべる。ぼうっとしたままの俺がついそれに見惚れていると、彼はその顔をぐっと俺に近付けて再び唇を重ねてくれた。
✦✦✦
- side ルイス -
三日ぶりに会った愛しい恋人。
その白雪のような肌をほんのりと紅潮させ、寝間着も髪も少し乱れている。抱きしめるとその身体は普段よりも熱を持っていて、ああ一人でしていたんだなとすぐにわかった。本人は自覚していないのだろうが、あの時のネロはとんでもなく扇情的な顔をしていたのだ。それはもう、二度と一人で留守番などさせられないと思ったくらいに。
あの性欲がほぼ無いと言ってもいいくらいだったネロが。俺がいなくても三日程度どうということはないといった態度だったネロが。潔癖で堅物で、その性格ゆえに自慰行為にすらかなり消極的だったネロが、俺のことを恋しがって一人で致していたのだと。そういう身体にしたのは他でもない俺なのだが、それにしたってあまりにも健気で愛らしすぎる。当然、ネロのそんな顔を見ていいのはこの世で俺一人だけだが。何があっても他の男になど絶対に見せるものか。
「そういえば、研究会はどうだったんだ」
身体を清めてシーツを交換したあと、ベッドの上で微睡むネロを余韻に浸りながら愛でていると、唐突に彼は思い出したようにそう言った。
先程まで喘ぎまくっていたせいで、ネロの声はすっかり掠れてしまっている。喋った後でけほ、と小さく咳をしたので、俺はネロの顎をクイと持ち上げて口移しで水を飲ませてやった。普通にグラスを渡してやれば済む話だが、キスをする口実が欲しかったのであくまで俺が飲ませる形をとる。
「もう行かない」
俺がそれだけ答えると、どうやら楽しくなかったようだと察したらしいネロは「そうか」と言って苦笑した。そんな何気ない表情も可愛らしくて、俺はネロの黒くて艶のある髪を指で梳くようにして撫でる。
今年は一応顔を見せたが、次からは出席しないことを俺は既に決めていた。大して面白くもなかったし、そもそも俺は傍にネロがいてくれないと何も身に入らない。今回のことでそれがわかったから。
もしまた何かしらこういった機会があったとしても、次はネロも一緒に連れて行こうと思う。錬金術師が後進の育成と称して招集の場に助手や弟子を引き連れていくのは珍しいことではない。一人くらい許されるだろうし、それが許されない場には行く気などさらさらなかった。
「……ハロルドさんには、会った?」
しばらくは大人しく俺に撫でられていたネロが、養父の名前を出して彼に会ったかと問いかけてきた。
数日ぶりに触れたネロの身体。俺も研究会に出席している間は日課だった自慰すらしていなかったので、余裕などあるわけもなく終始暴発しっぱなしだった。確実にそのせいだと思うが、今のネロは自力で起き上がるどころか腕一本動かすことすら難しいらしく、俺にくったりと体重を預け完全にされるがままになっている。
こういう時だけ、ネロは俺に甘えてくれる。そんな彼に俺は優しい口調で答えた。
「ああ、会ったよ」
「俺のこと何か言ってたか……?」
俺がありのままを伝えると、ネロの瞳が僅かに見開かれた。何かを期待しているような、そんな目だった。
実際のところハロルド氏と会うには会っていたが、彼との会話でネロについての話題はほとんど出ていなかった。だがそれを言えばネロが悲しむかもしれない。
俺はネロに事実を話すべきかそれとも忖度すべきかを一瞬だけ悩んだものの、結局は前者を選択した。
「ネロが世話になっている、と」
俺がそう答えると、ネロはへにゃ、と柔らかい微笑みを見せた。
「ふふ、そっか……」
ああ、たったこれだけでも嬉しいのか。
ネロからこれほどまでに好かれ、そして信頼されている養父につい嫉妬してしまう。俺のほうがネロを好きなのに、俺のほうが才能も実力も金もあるのに、——俺のほうが、ネロを大切にできるのに。
学生時代から養父母のことをいたく慕っていたネロは、学校を卒業し俺の助手になってからは毎月実家に多額の仕送りをしているようだ。自分の生活を切り詰めながら仕送りを続ける相手。ネロにとってあの養父母は、そうまでして恩返しをしたい存在なのだろう。
ネロの給金は決して安くはない。一般的な額よりはだいぶ上、彼の助手としての働きに見合う金額を渡しているつもりだ。もちろん金の使い道はネロの自由だし、働く若者が実家へ仕送りをすることなどよくある話なのだが、いかんせん彼は他人のために頑張りすぎるあまり自分を疎かにするきらいがある。それに事情がどうあれ、彼はあんなボロアパートに住まざるを得ないほど生活が困窮しているのが現状だ。養父母は何も思わないのだろうか?
もし俺がネロの家族であったなら、そんな思いはさせないだろうに。
自然とそんなことを思う。無いものねだりだ。友人という立場から色々ないざこざを経て彼の恋人になれただけでも幸運だというのに、もっと近くに行きたいと思ってしまう自分がいる。名実共にネロの一番になりたいと望まずにはいられないのだ。
「……あ。そういえば、まだ言ってなかった」
そんなことを考えていると、ネロがまた何かを思い出したように口を開いた。
ああ、そういえば俺もまだ言えていないことがあったな。
この三日間、たった一人で事務所を守ってくれていたネロ。責任感が強く真面目な彼のことだから、おそらくずっと気を張っていただろう。俺なんかよりも余程疲れたはずだ。帰宅早々彼の身体を酷使した張本人がどの口でと言われるかもしれないが、しっかり労ってやらねばならない。
ネロの菫色の瞳と目が合う。ネロは俺の顔をじっと見つめると、目元をやわらげてにこりと微笑んだ。
「ルイ……おかえり」
ああ、愛しいネロ。今はその笑顔を見せてくれるだけで充分だ。
だが、俺はこれからまだまだ欲張るだろう。妥協なんか絶対にしない。いつかお前の全てを手に入れるまで。お前が心の底から笑える日が来るまで。
もう手放してやれないのだとわかっていた。ネロは他の誰にも渡さない、未来永劫ずっと俺だけのものであってほしい。いや、そうしてみせる。
「ただいま、ネロ」
俺はそう言ってネロに微笑みを返すと、そのまま愛しい恋人の身体を抱き寄せたのだった。
end.
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