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商店街の出会い。
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放課後。ひとり帰り支度をしていると、関さんが「また明日ね!」と手を振った。
別に何か悪いことをされたわけじゃないし。無視するのも良くないと思ったわたしは小さく一礼する。
関さんは演劇部に向かうのだろう。部活仲間と一緒に教室を後にした。
ふう、とため息をついて、帰宅部のわたしは通学用の黒いリュックを背負った。
「地味子」
とか
「幽霊」
と言われるたびに、わたしは自分が目立っていないんだなと思って安心する。
誰もわたしを樫木茉莉花だと思っていない。
このまま地味に、存在感なく生きていくんだ。
帰り道、河川敷を歩いていると、集団下校の小学生とすれ違った。
なにやら流行りのアイドルの話で盛り上がっていたが、ほとんどテレビを観ないわたしは、軽快なメロディに愛とか勇気を歌う歌詞を聴いて、とんでもなくチープな愛と勇気だと思っていた。
そのまま商店街に入り、コロッケを揚げるにおいを嗅ぎながらお肉屋さんの前を通り過ぎる。
あー、買い食い禁止じゃなければなぁ。おなかすいてきた。
お肉屋さんの隣には、今にもつぶれそうな、小さい電気屋さんがある。
ショーウインドウの中にある液晶テレビに目をやれば、そこに映っていたのは牧村雫ちゃん。
彼女はわたしが芸能界を去ったあとも、映画やドラマ、CMにひっぱりだこだ。
わたしは別に雫ちゃんを恨んではいない。だって雫ちゃんがわたしに悪口を言ってきたわけじゃないから。
むしろすごく頑張ってるんだなと思ていた。彼女にもアンチはいる。
けれど彼女は今も逃げ出さず、表舞台に立ち続けているのだから。
「わたしとは、違う」
液晶画面を見つめながら、ぼんやりそんなことを思っていた時だった。
商店街の入り口から、何やら女の子たちの黄色い声が響いた。
商店街で買い物をしていた人たちが、一斉に声のした方を見る。
わたしもなんとなくつられてそちらを見た。すると黒いパーカーのフードをかぶった男の子? が走ってくるのが見えた。
なにあれ? 女の子たちに追いかけられてるの? なんで?
キャーキャーと高校生ぐらいの女の子たち数人に追いかけられてるその子が、わたしとすれ違う時、勢いよくぶつかった。
わたしはその場に大きくしりもちをついた。
「あっ……と、ごめん!」
ぶつかった子が振り返り、慌ててわたしの手を取る。そしてわたしを立ち上がらせると、その手を握ったまま路地へ隠れた。
えっ? なぜわたしもいっしょに隠れるの?
「チヒロくん⁉ どこいっちゃったの⁉」
「やだ、せっかく本物に会えたのにー!!」
「まだ近くにいるって! 探して写真撮ってもらおう!」
高校生の女の子たちが、お肉屋さんと電気屋さんの間に隠れているわたしたちの横を走り抜けていく。
「よし、いなくなった。走ったら汗かいたー」
フードを外しながら、その男の子……いや、女の子? いや声が男の子っぽい? はわたしを見る。
わたしは思わず「おお……」と声を漏らした。身長は160cmのわたしと同じくらいで、まっすぐ肩で切りそろえられた金髪に、ばっちりまつげのグリーンの瞳。カラコンだろうか? まるでお人形のような、とんでもない美少年がそこにいた。
美少年、でいいんだよね? と、内心ちょっと心配になる。クラスメイトの関さんとはまた別の中性的な子だった。
別に何か悪いことをされたわけじゃないし。無視するのも良くないと思ったわたしは小さく一礼する。
関さんは演劇部に向かうのだろう。部活仲間と一緒に教室を後にした。
ふう、とため息をついて、帰宅部のわたしは通学用の黒いリュックを背負った。
「地味子」
とか
「幽霊」
と言われるたびに、わたしは自分が目立っていないんだなと思って安心する。
誰もわたしを樫木茉莉花だと思っていない。
このまま地味に、存在感なく生きていくんだ。
帰り道、河川敷を歩いていると、集団下校の小学生とすれ違った。
なにやら流行りのアイドルの話で盛り上がっていたが、ほとんどテレビを観ないわたしは、軽快なメロディに愛とか勇気を歌う歌詞を聴いて、とんでもなくチープな愛と勇気だと思っていた。
そのまま商店街に入り、コロッケを揚げるにおいを嗅ぎながらお肉屋さんの前を通り過ぎる。
あー、買い食い禁止じゃなければなぁ。おなかすいてきた。
お肉屋さんの隣には、今にもつぶれそうな、小さい電気屋さんがある。
ショーウインドウの中にある液晶テレビに目をやれば、そこに映っていたのは牧村雫ちゃん。
彼女はわたしが芸能界を去ったあとも、映画やドラマ、CMにひっぱりだこだ。
わたしは別に雫ちゃんを恨んではいない。だって雫ちゃんがわたしに悪口を言ってきたわけじゃないから。
むしろすごく頑張ってるんだなと思ていた。彼女にもアンチはいる。
けれど彼女は今も逃げ出さず、表舞台に立ち続けているのだから。
「わたしとは、違う」
液晶画面を見つめながら、ぼんやりそんなことを思っていた時だった。
商店街の入り口から、何やら女の子たちの黄色い声が響いた。
商店街で買い物をしていた人たちが、一斉に声のした方を見る。
わたしもなんとなくつられてそちらを見た。すると黒いパーカーのフードをかぶった男の子? が走ってくるのが見えた。
なにあれ? 女の子たちに追いかけられてるの? なんで?
キャーキャーと高校生ぐらいの女の子たち数人に追いかけられてるその子が、わたしとすれ違う時、勢いよくぶつかった。
わたしはその場に大きくしりもちをついた。
「あっ……と、ごめん!」
ぶつかった子が振り返り、慌ててわたしの手を取る。そしてわたしを立ち上がらせると、その手を握ったまま路地へ隠れた。
えっ? なぜわたしもいっしょに隠れるの?
「チヒロくん⁉ どこいっちゃったの⁉」
「やだ、せっかく本物に会えたのにー!!」
「まだ近くにいるって! 探して写真撮ってもらおう!」
高校生の女の子たちが、お肉屋さんと電気屋さんの間に隠れているわたしたちの横を走り抜けていく。
「よし、いなくなった。走ったら汗かいたー」
フードを外しながら、その男の子……いや、女の子? いや声が男の子っぽい? はわたしを見る。
わたしは思わず「おお……」と声を漏らした。身長は160cmのわたしと同じくらいで、まっすぐ肩で切りそろえられた金髪に、ばっちりまつげのグリーンの瞳。カラコンだろうか? まるでお人形のような、とんでもない美少年がそこにいた。
美少年、でいいんだよね? と、内心ちょっと心配になる。クラスメイトの関さんとはまた別の中性的な子だった。
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