43 / 106
4章 魔術大国に行ってみる件
ストーカーの割に真面目だな……
しおりを挟むリトは俺たちより若干年上に見えた。他に、仕草なんかに隠しようのない気品があるから、多分貴族かなんかなのだろう。目的のためなら情けない姿でも躊躇なく見せるあたりが貴族らしくはないが。気品があるといえばシータもだよなー。なんか二人には共通するものを感じる。まあ今はどうでもいいことか。
彼はゆったりとしたソファに身を沈め、俺たちにも反対のソファに座るよう勧めた。
「私たちは魔術に関する研究をしているんだが、その中でも一番力を入れているのが召喚術でね」
なんでもこの国にも異世界召喚術が残っているのだが、不完全なのだという。呼べはするが帰せない。
「……なあ、リトさんよ。それ、俺らが知ってもいい事なん?」
……なんか嫌な予感しかしないんだが。
ヤツは満面の笑みで答えた。
「――もちろん国家機密さ☆ これで君達は否応なしに私たちの仲間だ!」
「ちょっと待てぇぇ!?」
「リュージ君は元の世界に帰る方法 を探しているんだろう? なら悪い事だとは思わないがね」
――ッ!?
思いもかけないリトの言葉に刀へ手が伸びる。コイツ、今までの情けない姿は演技でこっちが本性か!
「落ち着きたまえ。こちらに害意はないよ」
「なら、何が目的だ?」
刀から手を離さず問う。名前まで知ってるとかストーカーかよ。
「純粋に研究のため……と言えれば良かったんだが、実際はもう少し複雑だね」
「簡潔に」
俺の言葉にリトはやれやれと肩をすくめた。
「アルスター王国の召喚術は、この国の物とほぼ同じ状態だと思われる」
「……そ、れは」
「呼べるが帰せない」
――あの国王、大嘘ぶっこいてやがったのか!? ……いや、リトの言葉が本当なのか確かめる術はない。逆も然りだが。
「証拠は?」
「あの国に呼ばれた勇者は皆、こちらで生涯を終えているよ。他の国に関しても同様に」
「だが、国王は確かに言ったぞ。魔王を倒せば元の世界に帰すって」
「十中八九、口から出まかせだろうね。現状、完全な形で残っている異世界召喚陣は見つかってはいないからね」
過去に、勇者を召喚されるのを恐れた魔王が壊して回ったのだという。辛うじて残っているものも、どこかしら不具合をかかえているとリトは言う。
「このままではアルスター王国に戦力が集中しすぎて、各国のパワーバランスが崩れてしまう」
「崩れたらどうなるんだ?」
俺の質問にリトは眉を下げて答えた。
「今はまだ人族と険悪な魔族がいるからいいが、そのトップである魔王が倒されれば……今度は人族同士の争いが始まってしまうだろうね」
そうなれば力を持った者たちは利用される事になる。いくら個人の力が強くても、国という巨大な存在の前では無力だ。人海戦術とかされたら、先に力尽きるのはどう考えても個人の方だもんな。
「お前が俺たちに協力するのは、勇者たちの力を国に利用させないためなのか?」
こくりとうなずくリト。
「それにね、呼んだらそのまま呼びっぱなしというのは魔術大国の者としてのプライドが許さないんだよ」
そう告げた目は今までの中で一番真剣なものだった。……国とか世界とか色々話は飛んだが、最後は結局プライドが一番なんですね、わかります。色々理屈は捏ねてたがつまりコイツ、根っからの研究バカなんだな。こういう奴あんま嫌いじゃないかもしれん。
なら、答えは決まった!
「仲間になる件、納得してやるよ」
「本当かい!? 助かったよー。結社の性質上、肉体派が少なくてねぇ……」
「……もしかして俺ら、雑用係か何かか?」
「いやいや。もちろん、勇者たちとのパイプ役という重要な役柄でもあるよ!」
なんか取って付けた感があるのは気のせいか……?
「話は終わりまして?」
シータさんや。アナタ俺たちが緊迫したやりとりしてた中、何普通にお茶飲んでくつろいでんの?
0
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~
鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。
そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。
そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。
「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」
オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く!
ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。
いざ……はじまり、はじまり……。
※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。
最強の異世界やりすぎ旅行記
萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。
そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。
「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」
バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!?
最強が無双する異世界ファンタジー開幕!
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
異世界に転生したら?(改)
まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。
そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。
物語はまさに、その時に起きる!
横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。
そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。
◇
5年前の作品の改稿板になります。
少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。
生暖かい目で見て下されば幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる