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5章 潜入!魔族の国……な件
人任せサプライズは考えもの
しおりを挟む舞台を用意してくれ、とは言った。重要な部分を他人任せにした俺にも責任はあると思う。
……けどな、このサプライズはあんまりだと思うんだ。国を挙げて応援しろと誰が頼んだよ? 個人的な協力で良かったんだって!
魔国首都の真ん中でプロポーズ大作戦とか誰得なんだよぉぉぉ!!
*
「初めてあった時に彼女から告白されはしたんだが、そういうのに慣れてない俺はとっさに断った訳だ」
「出会い頭に絶望を振りまくとは流石は邪神様」
「そこは邪神とか関係ねぇよ!?」
リア充って訳でもない奴が、いきなりシータレベルの美少女に「責任とれ」とか言われたら普通に引くだろ!? あとな、さりげなく人を何かの災厄みたいに言うのは止めろや魔王。
「――にもかかわらずシータ様はめげなかったのですね。こちらも流石としか言いようがない!」
あれっ? この展開で何故かシータの評価がうなぎのぼりなんですけど……?
「つーかあいつの場合は余計に火が付いた感じだったよ。……まあ、今はそれに助けられてる訳だが」
そこで縁が切れていたら、俺が「シータってめっちゃイイ女子じゃね? やっぱ告白すっか!」とか思う事も無かったからな。今は旅のパートナーにしろ、戦闘のパートナーにしろ、どちらも良い感じだし。
「……まあ、そんなこんなでシータに告白などしてみるのはどうかと思うんだ」
それもただ告白するのではなく、サプライズ的な印象深いやつで。彼女のハートをズッキュンとブチ抜くにはその位は必要だろう。一緒に過ごすくらいじゃいつもと変わらないし。
「ルージオ、お前にはサプライズ部分を手伝ってもらいたい。俺一人だと限界があるからな」
「畏まりました! 不肖ルージオ、粉骨砕身の覚悟で協力させていただきます!」
粉骨砕身って、いちいち重いなお前は!
*
その結果がこれである。首都の住民でぎゅうぎゅう詰めになった広場のど真ん中。特設ステージの上でシータと向かい合うハメに……。
「さーて、我らが邪神様は乙女のハートをゲットできるのかぁ!?」
わあっと盛り上がる民衆たち。
……なんか無駄に民衆を煽る司会役がオマケで付いてるんだが、こんなサービスはいらん! つーか、ほとんど答え言ってんじゃねーか! やりづらい!! ほらあ、シータもこのイベントが何なのか察して頬を染めてるじゃねーか! この状況で告白すんの、俺!?
この場にあっちの知り合いが居なくて良かった……。絶対に「羞恥プレイ乙w」とか言われるパターンだこれ。
「あー、その、だな……シータ」
「……はい、な、何でしょうかリュージ」
照れつつ髪を一房指でクルクルしてる仕草が可愛いなチクショー! ――ではなくて。
「お、行くか邪神様! 言っちゃいますか!?」
だから司会うるせぇ! そして急に静かになる民衆。……固唾をのむとはこういう状況をいうんだなー……。俺たちにめっちゃ視線が集中しているのを感じる。
おれしってる。こういうときはしょうきにもどっちゃだめって。
「実は、心に決めた人がいるってのはウソだ!」
髪をクルクルしてたシータの手が止まる。
「そう、でしたの?」
「キッカケがスキルってのが引っかかってたのもあるが……正直、俺じゃ釣り合わないと思ってた」
「そんな事は……!」
「まあ今でも釣り合ってるとは言いがたいんだが、最初に比べればマシになったと思う!」
そして心を決める。勢いにまかせて言うなら今しかない!
「だから――正式にお付き合いさせてください!」
後ろ手に隠していたバラの花束を彼女に差し出した。プレゼントの一つもないと格好がつかないからな。ルージオからは指輪を推されたんだが、いくらなんでも早すぎだし、重すぎるだろう……?
しばしの沈黙。とはいえ答えは明白だ。彼女は常々言っていたのだから。あとは俺の心一つという段階だった。
「わ、私で良ければ喜んで!」
――ほらな?
しかし、彼女の目から涙が溢れる。
「――え、ちょ、なんで泣いて」
「その、嬉しくて……」
まさか泣くほど嬉しがられるとは想定外だ! でもこれからはもっともっと一緒に冒険とかしような!
あまりの可愛さに思わず彼女を抱きしめてしまったのだが――忘れてた、ここ、民衆のど真ん中……。
「邪神様、シータ様、ご婚約おめでとうございまぁぁぁす!!」
司会のセリフに「ワァァ」と群衆が興奮の雄叫びを上げた。舞台袖ではルージオが「良かったですね」と呟きながらハンカチを涙で濡らしていた。
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