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高威力ヒロイン補正
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城壁が敷地を囲う城門のような立派な校門が私の目の前にありました。
学院に潜入することを皆さんに話したらアニスさんとチユさんが必要なものを揃えてくださいました。
チユさんは衣服から精神干渉に抵抗できるお守りまでくださいました。
そのあとウィズさんが学院へと送り届けてくれたというわけです。
荷物を背負った私の横にウィズさんがいます。ここオールス学院は全寮制で王都から少し離れた場所にあるそうなので非常に助かりました。
「懐かしいわーこの門。まあそれ以外の感想は出ないんだけどね。じゃ、がんばってね」
もしかしたらここがウィズさんの母校なのかもしれませんね。本人はあまり思い入れがないようですが。
「ウィズさん……ありがとうございました……っ」
私は心細さから余計なことを言いそうになるのをぐっとこらえました。
「ふふ、何かあったらすぐ呼ぶのよ?ちゃんと連絡用水晶は入れておいたから。もちろん何もなくても連絡くれていいからね」
そんな私の心境を読み取ったかのようなやさしい言葉。すこし心が弱くなっている気がしますね。引き締めていかなければいけません。
「ん、もう大丈夫そうね。それじゃ私は行くわ。頑張ってね」
ウィズさんがスキルで移動してしまいました。やっぱりちょっと寂しいです。
「紹介状、許可証、身分証のどれかを提示ください」
門を通ろうとすると門番らしき方に当然の言葉をいただきました。
「えっと、サラ・クラークがきましたと教員のティーチ・スロードさんに伝えていただけませんか?」
「少々お待ちを」
門番の方は水晶で連絡を取ってくれているようです。
「確認が取れました。すぐにティーチ先生が来られるとのことです。申し訳ありませんがしばしお待ちを」
丁寧な対応、それでいてすぐに中に通すようなガバガバ警備でもない。鈴の村の門番とは大違いですね。
「すみません、待たせてしまいましたね」
一言でこの方を表すなら眼鏡をかけた細長い感じの男性。鈴の村の青年団の皆さんが大きいので小さく見えてるだけかもしれませんが。
「いえ、わざわざ来ていただきありがとうございます」
「とりあえず中でお話をしましょうか」
「よろしくお願いします」
解除コードを使わなくてもこの方にはお話が通っているのは本当みたいですね。
ティーチさんについていくと指導室と書かれた部屋に通されました。
「ここなら大丈夫でしょう。サラさん、初めまして天界から派遣された学院担当のティーチです。これよりサラさんのサポートに当たらせていただきます」
「ご丁寧にどうも。早速ですが調査対象の現状などについて知っている情報を教えていただけませんか」
「かしこまりました。まずセリアさんについてですが、成績優秀で教師からの信頼はありとてもお優しい方ですね。まあ生徒からの評判は少し複雑ですが……特徴といえば天界の力を使用できるのが彼女の最大の強みです」
「はい?なぜですか……なぜそんな厄介なことに」
「ゲームの設定でヒロインと呼ばれるポジションに彼女はいるそうで平民の生まれながらも希少な力を使うとのことでアルリス様が与えております」
あの上司はなぜ余計な事しかしないのでしょう。
「神の裁きと祝福など我々でも使用できる者の少ない力まで取得しています。敵に回すと厄介なので気を付けてください」
[神の裁き]、空から光の柱が落ちてくる高威力な天界の力です。とにかく派手で見た目通りの威力は鈴の村くらいなら更地に変えてしまいます。
[祝福]のほうは、加護、スキル、補正を持つ者の力を一時的に一段階上昇させる力。使い方次第ではありますが強化系は何が起きるかわからないのでただただ怖いです。
「気を付けてどうにかなるレべルですかね……」
「……」
何か言ってくださいよ!サポートしてくれるっていったじゃないですか!
「つ、次はグラティアさんについてですね。彼女に関しては他の天界の者のほうが詳しいかもしれません」
話しを逸らされました。
「それはどういう」
わたしが詳しく聞こうとしたとき、この部屋にコンコンとノックをする音がします。
「お話し中、すみません。そこにティーチ先生がいらしたら少しよろしいでしょうか」
ああ、天界の力をドア越しでもすさまじく放っている存在。噂をすればなんとやらですね。
「サラさん、お気づきかと思いますがセリアさんです」
コクコクと頷きます。
「僕はここにいます。どうぞ入ってきてください。用件を聞きましょう」
「失礼いたします」
ドアが開かれると同時に私の心はそれに釘付けです。本当にきれいな子です。整った顔と透き通るような肌、瞳は宝石のような青。銀の髪が揺れるだけで美しいと思わせます。なぜでしょう、まったく声がでません。目を奪われるという言葉を私は本当の意味で知ったのかもしれません。
「ティーチ先生、他の先生からの伝言です。職員会議が始まっています。至急来てくださいと」
「……そうでした。完全に失念していました。わざわざありがとうございますセリアさん。すみませんがサラさん、一時間ほどで戻るので少々ここでお待ちいただけますか?」
「……」
セリアさん、声まできれいです。
「サラさん?」
「……」
「先生、この方は?」
「えっと明日から転入してくる生徒です。学校の説明をしているところだったんですよ」
「まぁそれは、セリア・イーベンスです。よろしくお願いしますね」
「ひゃ、ひゃい!サラ・クラークでしゅ」
「ふふ、緊張しているんですね。なれない場所ですし。ティーチ先生、よろしければ先生がいない間、私がサラさんに学院を案内してもよろしいですか」
「それは助かります。では、僕は急いで職員室に行ってきます」
私の返事も聞かずティーチさんは部屋を出ていきました。
「では、私たちも行きましょうかサラさん」
セリアさんは私の手を取って部屋を出ます。
「あぅ」
私はもうされるがままです。余裕がないです。セリアさんのこと以外なにも考えられない状態です。と、とにかくいったん距離を取らなくては。
「さてどうしましょうか」
「お、お手洗いに」
なんとか絞り出した言葉で時間稼ぎをします。私はトイレの個室に入ると大きく深呼吸。現状の整理と今取るべき行動を考えます。
「おかしいです。いくらなんでも……これじゃあもはやひとめぼれですよ」
理由もなく同性にこんなにどきどきするものですか。ありえません。ならばやはりスキルの可能性がたかいですね。だとしたら厄介です。日本の神様からもらった女神さまにも秘密の隠し玉が同性相手では効かない。さらに余裕がなかったせいで彼女のステータスを見るのを完全に忘れていました。頑張れわたし、もうチユさんからもらった精神干渉に抵抗するお守りを信じるしかないです……いざ、決戦へ!
「お待たせしてすみません」
ステータス開示!スキルは異常なし。いや異常だらけなんですが発動しているスキルがないので今は気にしません。次、加護は[神の代行]。これは天界の力を扱えるようになる加護ですね。次、補正。ん?[ヒロイン補正Ⅲ~純愛編基礎][ヒロイン補正Ⅲ~狂愛編応用]普通ヒロイン補正ⅠくらいなのにⅢです。純愛編の効果は周囲にいる自分の望んだ人物を自分と引き合わせる。狂愛編の効果は自分の周囲にいる狙った人物の好感度が何をやっても大体上がり相手のことが愛しくて切なくてたまらなくなるですか……これです。これしかないです。というかなぜ私はこの子に正面から挑んでいるのでしょう。完全に選択ミスです。
「そんなに熱心に私を見てどうしたのですか」
補正は本人に見えていないマスクデータじゃないですか。つまり無自覚で私を魅了しているのですか?厄介極まりないです。
「あら、こちらはなんですか」
私が握りしめていたチユさん印のお守りに目を付けられました。
「友人から頂いた大事なお守りです」
「珍しい形ですね。少し見せてもらってもいいかしら」
抗えない。この人のお願いを聞くことが私の中で喜びに変わっている。
「は、はい。どうぞ」
そして彼女がお守りに触れた瞬間、お守りの効力が失われたことを私の心で確認できました。
「はうあー!」
目の前にいるセリアさんに対して好意しか抱けない!
なんなんですかこの感情。好きです好きです大好きです。お話ししたい。触れたい。あなたのすべてを知りたい。そんな暴走寸前の私に救いの声が聞こえました。
「あら、セリアさん。見慣れない方といらっしゃるのね」
学院に潜入することを皆さんに話したらアニスさんとチユさんが必要なものを揃えてくださいました。
チユさんは衣服から精神干渉に抵抗できるお守りまでくださいました。
そのあとウィズさんが学院へと送り届けてくれたというわけです。
荷物を背負った私の横にウィズさんがいます。ここオールス学院は全寮制で王都から少し離れた場所にあるそうなので非常に助かりました。
「懐かしいわーこの門。まあそれ以外の感想は出ないんだけどね。じゃ、がんばってね」
もしかしたらここがウィズさんの母校なのかもしれませんね。本人はあまり思い入れがないようですが。
「ウィズさん……ありがとうございました……っ」
私は心細さから余計なことを言いそうになるのをぐっとこらえました。
「ふふ、何かあったらすぐ呼ぶのよ?ちゃんと連絡用水晶は入れておいたから。もちろん何もなくても連絡くれていいからね」
そんな私の心境を読み取ったかのようなやさしい言葉。すこし心が弱くなっている気がしますね。引き締めていかなければいけません。
「ん、もう大丈夫そうね。それじゃ私は行くわ。頑張ってね」
ウィズさんがスキルで移動してしまいました。やっぱりちょっと寂しいです。
「紹介状、許可証、身分証のどれかを提示ください」
門を通ろうとすると門番らしき方に当然の言葉をいただきました。
「えっと、サラ・クラークがきましたと教員のティーチ・スロードさんに伝えていただけませんか?」
「少々お待ちを」
門番の方は水晶で連絡を取ってくれているようです。
「確認が取れました。すぐにティーチ先生が来られるとのことです。申し訳ありませんがしばしお待ちを」
丁寧な対応、それでいてすぐに中に通すようなガバガバ警備でもない。鈴の村の門番とは大違いですね。
「すみません、待たせてしまいましたね」
一言でこの方を表すなら眼鏡をかけた細長い感じの男性。鈴の村の青年団の皆さんが大きいので小さく見えてるだけかもしれませんが。
「いえ、わざわざ来ていただきありがとうございます」
「とりあえず中でお話をしましょうか」
「よろしくお願いします」
解除コードを使わなくてもこの方にはお話が通っているのは本当みたいですね。
ティーチさんについていくと指導室と書かれた部屋に通されました。
「ここなら大丈夫でしょう。サラさん、初めまして天界から派遣された学院担当のティーチです。これよりサラさんのサポートに当たらせていただきます」
「ご丁寧にどうも。早速ですが調査対象の現状などについて知っている情報を教えていただけませんか」
「かしこまりました。まずセリアさんについてですが、成績優秀で教師からの信頼はありとてもお優しい方ですね。まあ生徒からの評判は少し複雑ですが……特徴といえば天界の力を使用できるのが彼女の最大の強みです」
「はい?なぜですか……なぜそんな厄介なことに」
「ゲームの設定でヒロインと呼ばれるポジションに彼女はいるそうで平民の生まれながらも希少な力を使うとのことでアルリス様が与えております」
あの上司はなぜ余計な事しかしないのでしょう。
「神の裁きと祝福など我々でも使用できる者の少ない力まで取得しています。敵に回すと厄介なので気を付けてください」
[神の裁き]、空から光の柱が落ちてくる高威力な天界の力です。とにかく派手で見た目通りの威力は鈴の村くらいなら更地に変えてしまいます。
[祝福]のほうは、加護、スキル、補正を持つ者の力を一時的に一段階上昇させる力。使い方次第ではありますが強化系は何が起きるかわからないのでただただ怖いです。
「気を付けてどうにかなるレべルですかね……」
「……」
何か言ってくださいよ!サポートしてくれるっていったじゃないですか!
「つ、次はグラティアさんについてですね。彼女に関しては他の天界の者のほうが詳しいかもしれません」
話しを逸らされました。
「それはどういう」
わたしが詳しく聞こうとしたとき、この部屋にコンコンとノックをする音がします。
「お話し中、すみません。そこにティーチ先生がいらしたら少しよろしいでしょうか」
ああ、天界の力をドア越しでもすさまじく放っている存在。噂をすればなんとやらですね。
「サラさん、お気づきかと思いますがセリアさんです」
コクコクと頷きます。
「僕はここにいます。どうぞ入ってきてください。用件を聞きましょう」
「失礼いたします」
ドアが開かれると同時に私の心はそれに釘付けです。本当にきれいな子です。整った顔と透き通るような肌、瞳は宝石のような青。銀の髪が揺れるだけで美しいと思わせます。なぜでしょう、まったく声がでません。目を奪われるという言葉を私は本当の意味で知ったのかもしれません。
「ティーチ先生、他の先生からの伝言です。職員会議が始まっています。至急来てくださいと」
「……そうでした。完全に失念していました。わざわざありがとうございますセリアさん。すみませんがサラさん、一時間ほどで戻るので少々ここでお待ちいただけますか?」
「……」
セリアさん、声まできれいです。
「サラさん?」
「……」
「先生、この方は?」
「えっと明日から転入してくる生徒です。学校の説明をしているところだったんですよ」
「まぁそれは、セリア・イーベンスです。よろしくお願いしますね」
「ひゃ、ひゃい!サラ・クラークでしゅ」
「ふふ、緊張しているんですね。なれない場所ですし。ティーチ先生、よろしければ先生がいない間、私がサラさんに学院を案内してもよろしいですか」
「それは助かります。では、僕は急いで職員室に行ってきます」
私の返事も聞かずティーチさんは部屋を出ていきました。
「では、私たちも行きましょうかサラさん」
セリアさんは私の手を取って部屋を出ます。
「あぅ」
私はもうされるがままです。余裕がないです。セリアさんのこと以外なにも考えられない状態です。と、とにかくいったん距離を取らなくては。
「さてどうしましょうか」
「お、お手洗いに」
なんとか絞り出した言葉で時間稼ぎをします。私はトイレの個室に入ると大きく深呼吸。現状の整理と今取るべき行動を考えます。
「おかしいです。いくらなんでも……これじゃあもはやひとめぼれですよ」
理由もなく同性にこんなにどきどきするものですか。ありえません。ならばやはりスキルの可能性がたかいですね。だとしたら厄介です。日本の神様からもらった女神さまにも秘密の隠し玉が同性相手では効かない。さらに余裕がなかったせいで彼女のステータスを見るのを完全に忘れていました。頑張れわたし、もうチユさんからもらった精神干渉に抵抗するお守りを信じるしかないです……いざ、決戦へ!
「お待たせしてすみません」
ステータス開示!スキルは異常なし。いや異常だらけなんですが発動しているスキルがないので今は気にしません。次、加護は[神の代行]。これは天界の力を扱えるようになる加護ですね。次、補正。ん?[ヒロイン補正Ⅲ~純愛編基礎][ヒロイン補正Ⅲ~狂愛編応用]普通ヒロイン補正ⅠくらいなのにⅢです。純愛編の効果は周囲にいる自分の望んだ人物を自分と引き合わせる。狂愛編の効果は自分の周囲にいる狙った人物の好感度が何をやっても大体上がり相手のことが愛しくて切なくてたまらなくなるですか……これです。これしかないです。というかなぜ私はこの子に正面から挑んでいるのでしょう。完全に選択ミスです。
「そんなに熱心に私を見てどうしたのですか」
補正は本人に見えていないマスクデータじゃないですか。つまり無自覚で私を魅了しているのですか?厄介極まりないです。
「あら、こちらはなんですか」
私が握りしめていたチユさん印のお守りに目を付けられました。
「友人から頂いた大事なお守りです」
「珍しい形ですね。少し見せてもらってもいいかしら」
抗えない。この人のお願いを聞くことが私の中で喜びに変わっている。
「は、はい。どうぞ」
そして彼女がお守りに触れた瞬間、お守りの効力が失われたことを私の心で確認できました。
「はうあー!」
目の前にいるセリアさんに対して好意しか抱けない!
なんなんですかこの感情。好きです好きです大好きです。お話ししたい。触れたい。あなたのすべてを知りたい。そんな暴走寸前の私に救いの声が聞こえました。
「あら、セリアさん。見慣れない方といらっしゃるのね」
応援ありがとうございます!
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