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空間魔力支配
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「サラ?どういうことですの」
ティアにはどうやら今の言葉だけでは伝わっていないようです。
「推測なんですけど、ティーチ先生とオーマさんの約束は、分身ではなくティーチ先生本体との約束だったのだと思います。これは自分が結論から出した理由付けなので確証はないですが本体のティーチ先生は約束を違えることはしないつもりだったのではないしょうか」
私が思いつく限りけっこうえぐいのはこういう展開というのを語ってみます。正直この内容が現実だったらあの方との付き合い方は考えたいですね。
「約束通りオーマさんとティーチ先生のどちらも魔王にならなかったとします。これをよく思わない方がいますよね。魔王の誕生しない世界はバランスがーとか言ってなにかしらしたのではないでしょうか……例えばたまたまでていたティーチ先生の分身に力を与えるだとか」
「力を与える……アルリスか」
オーマさんが溜息を吐くように女神様の名前を言います。すぐそこに思い当たるのは何かあったのでしょうね。
「はははははは、そうですよ。その通り。その発想ができる時点で優秀ですよあなた」
先生の評価が上がりました。本来の意味では喜ぶべきことなのですがあの先生の評価が上がってもうれしくありません。
「僕の本体は自分の分身によって無様に消されたのです。アルリス様に与えられた力、そして使命、僕は本物であり続けるためにここまで頑張ってきたのです。そして怪しい動きをしていたやつらもここにきて排除できそうです。僕がこの件を天界に報告し適切な対応を取ればまた出世ですよ。今ならサラさん、あなたにもそのチャンスをあげられます。さあ、僕に協力してくださいよ」
私に向けられる協力要請はティアのスキルがなければ抗うことすらできなかったでしょう。そう考えていたら自然にティアの方に視線が移動しました。
「サラ……」
ティアが目でなんらかの合図を出しています。あれは三重詠唱のときに決めていたやつです。たしか少し遅めにでしたか。
「ティーチ先生、私があなたの側に付くメリットあまりよくわからないのですが?あとですね、いまそちらについても全然有利そうに見えません」
頭に浮かんだ疑問で時間稼ぎをします。彼女の意図にあっているかは確信できませんが。
「メリットは先ほど言ったでしょう?天界での出世ですよ。それとアルリス様より頂いた天界の力があるので僕が負けることはありませんよ」
自信満々なようなのでステータス確認。いくつかのスキルの最後に加護が一つだけありました。【空間魔力支配】、簡単に説明すれば、特定の空間の魔力の流れているものを意のままに操れる加護のようです。えげつないですね。あ、ティアからもう大丈夫といったサインが出ました。
「わかりました。では簡潔に言いますね。お断りさせていただきます」
性格的にも信頼関係的にもそっちにつく理由が薄すぎます。
「ああ、それは残念です。これはいけない。天界のおきてに逆らう罪人がまた1匹増えてしまいました。ですがこれの処理もこなせば僕は再び天界へと戻れるかもしれない。サラさん、グラティアさん、オーマ、あなた達には僕の出世のための贄となってもらいましょう」
断られても全然残念そうではないです。というより断られることを想定していたようです。言質をとったので行動に移れると言ったところでしょうか。
「僕に従え」
ティーチ先生の言葉はスキル発動の合図でした。体の中に流れる魔力がティーチ先生に反応し、上手く自分になじまなくなる感覚。体に異物が這いずり回っているような不快感、最後には脱力感を感じ動きが鈍くなっていきます。
オーマさんは先ほどと同じように特に苦しそうです。やはり魔王は魔力と強い結びつきがあるからなのでしょうか。ティアは……すごい、効いていないのでしょうか。仁王立ちでティーチ先生と対峙しています。
「嘘です。転生者には効かないとかいうことはないはずです」
明らかにティーチ先生が動揺しています。
「わたくしが魔力だけに頼った生き方をするわけがないでしょう?」
「どうせやせ我慢ですよね。そうですよね!?」
様子見に手の平に光の球を生成し投げつけるティーチ先生。それをひらりと躱して見せるティア。
「あらあら随分と臆病でいらっしゃいますのね」
「これだから異世界人は嫌なのです。非常識でもって全ての計算を狂わせる。ですが、大丈夫。これならあなたは避けることができない。いやあ情報って言うのは本当に重要ですね」
先ほどとはまた形の違う光の槍を生成します。そして目が合いました。三度目に見たその歪んだ笑顔は今までの中で一番いい表情をしていました。光の槍が一直線に私の方へと迫ってきます。もちろん逃げようともがきますが、魔王化の影響か私の体は思うように動いてくれませんでした。一瞬、迫る光に対して影ができました。そのあとに私に降りかかるの赤。状況を理解するのにそこまでの時間はいりません。ティアが私を庇って光の槍に体を貫かれていました。
「ティア!」
私の中でまた、堕ちていく感覚が……
「ほーら、さっそくかっこいいところを見せられましたわ。惚れ直したでしょう?」
心配させまいと余裕の表情を浮かべる彼女ですが無理です。
「冗談を言っている場合ですか!」
ステータス画面からも簡単に彼女が危ない状態なのはわかりました。さらに空間魔力支配も相当効いていることが分かってしまいました。ティアは気力だけで立っていたのです。
「ひどい顔ですわ。ああもう、わたくしの状態を見ましたのね。でもあなたのそれが使えるということは少し希望が持てますわね」
希望、ステータス開示で?いえ、そんなことよりティアが、私の大事な人が死んでしまう。感情と同調するように私の中の天界の力が切り替わっていきます。
「はははははははは、グラティアやはりやせ我慢じゃないか!それとサラ、君からいい魔力を感じます。僕だって本当は捕縛して穏便に済ませるつもりだったのですよ。しかし、よくよく考えてみれば天界の目的としては魔王の誕生が一番望まれる。そしてそれには大事なものを失わせるのが一番。なんと単純、しかも勝手に状況が僕に送させたのですから、これはまさに天が僕にそれを望んだのですよ」
ドク、ドク、ドク私の体がうるさいです。目の前にアレと同じくらいうるさいです。簡単なんです受け入れてしまえば、あれを簡単に排除でき―――
「お待たせ!友達の部屋に遊びに行くの初めてだからちょっとお洋服選びで時間かかっちゃったごめんね!」
その人は明るく無邪気な声でこの部屋とやってきました。私はこの人にも助けられてばかりだと思います。
ティアにはどうやら今の言葉だけでは伝わっていないようです。
「推測なんですけど、ティーチ先生とオーマさんの約束は、分身ではなくティーチ先生本体との約束だったのだと思います。これは自分が結論から出した理由付けなので確証はないですが本体のティーチ先生は約束を違えることはしないつもりだったのではないしょうか」
私が思いつく限りけっこうえぐいのはこういう展開というのを語ってみます。正直この内容が現実だったらあの方との付き合い方は考えたいですね。
「約束通りオーマさんとティーチ先生のどちらも魔王にならなかったとします。これをよく思わない方がいますよね。魔王の誕生しない世界はバランスがーとか言ってなにかしらしたのではないでしょうか……例えばたまたまでていたティーチ先生の分身に力を与えるだとか」
「力を与える……アルリスか」
オーマさんが溜息を吐くように女神様の名前を言います。すぐそこに思い当たるのは何かあったのでしょうね。
「はははははは、そうですよ。その通り。その発想ができる時点で優秀ですよあなた」
先生の評価が上がりました。本来の意味では喜ぶべきことなのですがあの先生の評価が上がってもうれしくありません。
「僕の本体は自分の分身によって無様に消されたのです。アルリス様に与えられた力、そして使命、僕は本物であり続けるためにここまで頑張ってきたのです。そして怪しい動きをしていたやつらもここにきて排除できそうです。僕がこの件を天界に報告し適切な対応を取ればまた出世ですよ。今ならサラさん、あなたにもそのチャンスをあげられます。さあ、僕に協力してくださいよ」
私に向けられる協力要請はティアのスキルがなければ抗うことすらできなかったでしょう。そう考えていたら自然にティアの方に視線が移動しました。
「サラ……」
ティアが目でなんらかの合図を出しています。あれは三重詠唱のときに決めていたやつです。たしか少し遅めにでしたか。
「ティーチ先生、私があなたの側に付くメリットあまりよくわからないのですが?あとですね、いまそちらについても全然有利そうに見えません」
頭に浮かんだ疑問で時間稼ぎをします。彼女の意図にあっているかは確信できませんが。
「メリットは先ほど言ったでしょう?天界での出世ですよ。それとアルリス様より頂いた天界の力があるので僕が負けることはありませんよ」
自信満々なようなのでステータス確認。いくつかのスキルの最後に加護が一つだけありました。【空間魔力支配】、簡単に説明すれば、特定の空間の魔力の流れているものを意のままに操れる加護のようです。えげつないですね。あ、ティアからもう大丈夫といったサインが出ました。
「わかりました。では簡潔に言いますね。お断りさせていただきます」
性格的にも信頼関係的にもそっちにつく理由が薄すぎます。
「ああ、それは残念です。これはいけない。天界のおきてに逆らう罪人がまた1匹増えてしまいました。ですがこれの処理もこなせば僕は再び天界へと戻れるかもしれない。サラさん、グラティアさん、オーマ、あなた達には僕の出世のための贄となってもらいましょう」
断られても全然残念そうではないです。というより断られることを想定していたようです。言質をとったので行動に移れると言ったところでしょうか。
「僕に従え」
ティーチ先生の言葉はスキル発動の合図でした。体の中に流れる魔力がティーチ先生に反応し、上手く自分になじまなくなる感覚。体に異物が這いずり回っているような不快感、最後には脱力感を感じ動きが鈍くなっていきます。
オーマさんは先ほどと同じように特に苦しそうです。やはり魔王は魔力と強い結びつきがあるからなのでしょうか。ティアは……すごい、効いていないのでしょうか。仁王立ちでティーチ先生と対峙しています。
「嘘です。転生者には効かないとかいうことはないはずです」
明らかにティーチ先生が動揺しています。
「わたくしが魔力だけに頼った生き方をするわけがないでしょう?」
「どうせやせ我慢ですよね。そうですよね!?」
様子見に手の平に光の球を生成し投げつけるティーチ先生。それをひらりと躱して見せるティア。
「あらあら随分と臆病でいらっしゃいますのね」
「これだから異世界人は嫌なのです。非常識でもって全ての計算を狂わせる。ですが、大丈夫。これならあなたは避けることができない。いやあ情報って言うのは本当に重要ですね」
先ほどとはまた形の違う光の槍を生成します。そして目が合いました。三度目に見たその歪んだ笑顔は今までの中で一番いい表情をしていました。光の槍が一直線に私の方へと迫ってきます。もちろん逃げようともがきますが、魔王化の影響か私の体は思うように動いてくれませんでした。一瞬、迫る光に対して影ができました。そのあとに私に降りかかるの赤。状況を理解するのにそこまでの時間はいりません。ティアが私を庇って光の槍に体を貫かれていました。
「ティア!」
私の中でまた、堕ちていく感覚が……
「ほーら、さっそくかっこいいところを見せられましたわ。惚れ直したでしょう?」
心配させまいと余裕の表情を浮かべる彼女ですが無理です。
「冗談を言っている場合ですか!」
ステータス画面からも簡単に彼女が危ない状態なのはわかりました。さらに空間魔力支配も相当効いていることが分かってしまいました。ティアは気力だけで立っていたのです。
「ひどい顔ですわ。ああもう、わたくしの状態を見ましたのね。でもあなたのそれが使えるということは少し希望が持てますわね」
希望、ステータス開示で?いえ、そんなことよりティアが、私の大事な人が死んでしまう。感情と同調するように私の中の天界の力が切り替わっていきます。
「はははははははは、グラティアやはりやせ我慢じゃないか!それとサラ、君からいい魔力を感じます。僕だって本当は捕縛して穏便に済ませるつもりだったのですよ。しかし、よくよく考えてみれば天界の目的としては魔王の誕生が一番望まれる。そしてそれには大事なものを失わせるのが一番。なんと単純、しかも勝手に状況が僕に送させたのですから、これはまさに天が僕にそれを望んだのですよ」
ドク、ドク、ドク私の体がうるさいです。目の前にアレと同じくらいうるさいです。簡単なんです受け入れてしまえば、あれを簡単に排除でき―――
「お待たせ!友達の部屋に遊びに行くの初めてだからちょっとお洋服選びで時間かかっちゃったごめんね!」
その人は明るく無邪気な声でこの部屋とやってきました。私はこの人にも助けられてばかりだと思います。
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