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根菜類VS少年ABC
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さすがにクラスメイト全員の詳細な情報はもっていないようで少年たちに聞けたのは大雑把な特徴くらいです。しかも興味のない人間に対してはほとんど情報がないと言ってもいいものまであります。
しかしここで一つだけ知りたかたことが聞けました。それは召喚された後すぐの状況です。なんでも彼らは王城にある儀式の間と呼ばれる場所にクラスメイト全員が召喚されたとのことです。そこで受けた説明が魔王を倒せば自動的に元の世界へ帰れるというもの。彼らはその話を信じ王城を拠点として経験を積みに冒険をしているようです。
加護についてはここに来た時にすでに付与されていたと言います。ステータスの確認などはリンプス王子が行っていたそうです。彼の行動にはかなり疑問が残ります。
「聞くこと聞きましたしあなたたちの処分を決めます」
「は、はい」
さすがに命の危機を感じてか少年たちは緊張していますね。
「更生しましょう。その腐った性根を叩きなおします」
「……は?」
少年Aが間の抜けた声を出します。後ろにいるアリューさんもセリアさんも先輩も言葉には出しませんがこいつ何考えてんだくらいに思っているところでしょう。
「いいですか、あなたたちの行動は目に余るものでした。しかし、なぜそのような行動に出たのかと言えば純粋に強さを求めた結果ですよね。その向上心はとても大切なものだと思うのですよ。あなた達だって弱いままじゃいやでしょ?」
「まあ・・・そりゃあ」
「ですよね!ならば私達で鍛えてあげましょう。未来ある若者がこのまま腐ってしまうのを私としては見過ごせません」
発した言葉にも力が入ります。このまま押せ押せでいきます。
「ありがとうございます?」
少年Aは咄嗟にお礼が言えるという点から見ても根はいい子なのかもしれません。
「御礼なんていりませんよ。その代わり、無理という言葉の使用を禁止しましょう。それは弱者の言葉です」
「おいまて、なんかブラック企業みたいなこと言い始めたぞ」
少年Aことアキト君が危機を察知したような発言をします。さすが流されるだけの人生が嫌で少しだけ道を踏み外した人間です。
「やべえよ、あいつ目が本気だよ」
あいつって言いましたね。まだ私とあなたの関係性が分かっていないようです。少年Bことベニマル君には特別なメニューを考えましょう。
「どうせ俺たちには選択権はないんだ。考えるのやめようぜへへへへへ」
少年Cことチョウタ君、思考の放棄は敗北につながります。その辺も修正……じゃなかった更生しなくては。
「チョウタのやつ、完全に諦めてやがる」
「アキト、これべーって、ぜってーべーってまじべーよ」
少年B、ベニマル君の口癖のベーとはやべえの略らしいです。
「ベニ、おめえこそ語彙力が高飛びしてんぞ」
私はこの三人が今回の女神になるための試験に必要であると信じています。ほんと必要になってくれないと困ります。
「サラ。鍛えるとは具体的にどのようにするの?」
「一応、私がいま頭の中で考えたやつ言いますね。朝は畑仕事をしてもらいます。もちろん朝食は死ぬほど野菜を胃に詰め込みます。昼は子供たちの相手をしてもらいましょうか。彼らと遊べば自ずと経験を積めますし、成長が見込めれば婦人会や青年団の方たちにも協力してもらいましょう。もちろんお昼ご飯に死ぬほど野菜を胃に詰め込みますよ。夜ですが体が疲れ切っていると思うので戦闘における知識などをセリアさんや先輩に教えてもらう時間を設けましょう。もちろん夕食は死ぬほど野菜を胃に詰め込みます」
「ちょ、ちょっとまて、なんだそのなんだ?詰め込みすぎだろ主に胃に」
アキト君、野菜は力です。食えば食うほどこの村ではベジタボオできます。
「だめだ。部活の合宿なんておままごとに感じる。これはべーよ」
「へへへ、もうどうにでもなーれ♪」
とりあえず初日くらいは付き合いますか。私は見てるだけですけどね。苦手な朝をセリアさんに起こしてもらうことでなんとかします。
「朝だぞーおきてー」
セリアの声、約束通りの朝を迎えます。
「学院時代を思いだすね」
セリアが懐かしんでいますが私からすれば昨日のことのようなんですがね。
シスター服に着替えて朝食を取ります。このシスターの服はチユさんから提供されました。
「セリア。では、例の件お願いします」
朝食を食べながら昨日の夜に打ち合わせをした内容を確認します。セリアにはとある場所への調査に行ってもらう予定です。アリューさんにはクーリングオフの件、先輩は魔王城でやれることをお願いしました。
「ん、わかったわ。夜には戻るからちゃんと起きててね」
「もちろんですよ」
何でもないようなことで幸せをかみしめている彼女の顔を見ると一年という月日が経っていたのだな実感させられます。たぶんセリアはずっと私と話すことをまっていてくれたのですよね。彼女は一年で学院を卒業したようです。あのセリアががんばって苦手な授業もこなしているところを想像するだけで目頭が熱くなります。
このあと少しの幸せをかみしめつつ二人そろって仲良く家を出ました。
その後、私はトーカさんと合流、昨日のうちに挨拶を済ませ事情を説明し付いてきてもらいました。
「皆さんおはようございます」
「おはようございますサラの姉御」
姉御呼びはアキト君なりの関係性への理解だと解釈しましょう。
「牢屋に布団引いて川の字で寝るとは思わなかったよサラの姉御。まじべーわ」
ベニマル君も姉御呼びなんですね。
「僕は妖精になってお空を自由に飛ぶんだよサラの姉御」
若干一名精神に支障をきたしています。それでも姉御呼びなんですねチョウタ君。
ま、気にせず行きましょう。
「では皆さん畑へ行きますよ!」
私はなるべく明るく牢屋のカギを開けました。するとアキト君とベニマル君が勢いよく外へと出てきます。まるでそのまま逃げだそうとしているようです。
「こんなところにいられるか!」
「俺たちは王都に帰らせてもらう!」
「トーカさんお願いします」
「はいよ」
私の一言でトーカさんが動きます。目にもとまらぬ早業で二人を転ばせるとそのまま流れるように腹に一撃、二人が床に転がりもだえ苦しんでいます。
「ぐおお……」
「マジ…べぇ」
「さあ、畑へ行きましょうね」
私の笑顔に二人は声にならない声で了承しました。
「チョウタ君、君は逃げなかったんですね」
「夢は大きければ大きいほどいいものさ」
キリッとした顔で牢屋から出てきた彼はすでに覚悟が決まっていました。なにを言っているのかはよくわかりませんが。
「ここにある野菜さ引っこ抜いてもらうでよ。よおくみどけ」
畑の野菜の収穫の手伝いをするためまずはゲンさん95歳が見本を見せてくれているところです。
「はいいい!アタァ!」
掛け声とともに野菜を引っこ抜くと土の中から人参のようなものが顔を出します。それだけ見せるとゲンさんはがんばれよーと言って仕事場に戻っていきました。もちろん少年たちには御礼を言わせます。
そして彼らの作業が始まります。
「なんだよ。簡単そうじゃねえか」
アキト君が早速挑戦してみます。
「んぎぎぎぎ…………は?なんだこれびくともしねえぞ」
他の二人も挑戦しましたがまったくぬける様子はありません。そこで暇そうにしていた老人が一人、サツキちゃんのとこのおじいちゃん、シゲさんです。せっかくなのでコーチしてもらうことにしました。
「素人はまず、親指に《肉体強化》、中指に《攻撃力強化》、人差し指に《限界突破》、薬指に《部位強化》、小指に《指切りげんまん強化》のスキルをつけるんじゃ」
「そんなスキル持ってるわけねーだろ」
「持っていないのならばどうすればいいか、簡単なことだ。身に付けろ。さあ指先にすべての力を集中させろい」
ただただ目の前の野菜を引っこ抜くことに費やした朝の時間。ですがこの朝、少年たちは野菜を収穫することができませんでした。
ちなみにトーカさんが横でためしにひっぱると一発で抜けてました。
しかしここで一つだけ知りたかたことが聞けました。それは召喚された後すぐの状況です。なんでも彼らは王城にある儀式の間と呼ばれる場所にクラスメイト全員が召喚されたとのことです。そこで受けた説明が魔王を倒せば自動的に元の世界へ帰れるというもの。彼らはその話を信じ王城を拠点として経験を積みに冒険をしているようです。
加護についてはここに来た時にすでに付与されていたと言います。ステータスの確認などはリンプス王子が行っていたそうです。彼の行動にはかなり疑問が残ります。
「聞くこと聞きましたしあなたたちの処分を決めます」
「は、はい」
さすがに命の危機を感じてか少年たちは緊張していますね。
「更生しましょう。その腐った性根を叩きなおします」
「……は?」
少年Aが間の抜けた声を出します。後ろにいるアリューさんもセリアさんも先輩も言葉には出しませんがこいつ何考えてんだくらいに思っているところでしょう。
「いいですか、あなたたちの行動は目に余るものでした。しかし、なぜそのような行動に出たのかと言えば純粋に強さを求めた結果ですよね。その向上心はとても大切なものだと思うのですよ。あなた達だって弱いままじゃいやでしょ?」
「まあ・・・そりゃあ」
「ですよね!ならば私達で鍛えてあげましょう。未来ある若者がこのまま腐ってしまうのを私としては見過ごせません」
発した言葉にも力が入ります。このまま押せ押せでいきます。
「ありがとうございます?」
少年Aは咄嗟にお礼が言えるという点から見ても根はいい子なのかもしれません。
「御礼なんていりませんよ。その代わり、無理という言葉の使用を禁止しましょう。それは弱者の言葉です」
「おいまて、なんかブラック企業みたいなこと言い始めたぞ」
少年Aことアキト君が危機を察知したような発言をします。さすが流されるだけの人生が嫌で少しだけ道を踏み外した人間です。
「やべえよ、あいつ目が本気だよ」
あいつって言いましたね。まだ私とあなたの関係性が分かっていないようです。少年Bことベニマル君には特別なメニューを考えましょう。
「どうせ俺たちには選択権はないんだ。考えるのやめようぜへへへへへ」
少年Cことチョウタ君、思考の放棄は敗北につながります。その辺も修正……じゃなかった更生しなくては。
「チョウタのやつ、完全に諦めてやがる」
「アキト、これべーって、ぜってーべーってまじべーよ」
少年B、ベニマル君の口癖のベーとはやべえの略らしいです。
「ベニ、おめえこそ語彙力が高飛びしてんぞ」
私はこの三人が今回の女神になるための試験に必要であると信じています。ほんと必要になってくれないと困ります。
「サラ。鍛えるとは具体的にどのようにするの?」
「一応、私がいま頭の中で考えたやつ言いますね。朝は畑仕事をしてもらいます。もちろん朝食は死ぬほど野菜を胃に詰め込みます。昼は子供たちの相手をしてもらいましょうか。彼らと遊べば自ずと経験を積めますし、成長が見込めれば婦人会や青年団の方たちにも協力してもらいましょう。もちろんお昼ご飯に死ぬほど野菜を胃に詰め込みますよ。夜ですが体が疲れ切っていると思うので戦闘における知識などをセリアさんや先輩に教えてもらう時間を設けましょう。もちろん夕食は死ぬほど野菜を胃に詰め込みます」
「ちょ、ちょっとまて、なんだそのなんだ?詰め込みすぎだろ主に胃に」
アキト君、野菜は力です。食えば食うほどこの村ではベジタボオできます。
「だめだ。部活の合宿なんておままごとに感じる。これはべーよ」
「へへへ、もうどうにでもなーれ♪」
とりあえず初日くらいは付き合いますか。私は見てるだけですけどね。苦手な朝をセリアさんに起こしてもらうことでなんとかします。
「朝だぞーおきてー」
セリアの声、約束通りの朝を迎えます。
「学院時代を思いだすね」
セリアが懐かしんでいますが私からすれば昨日のことのようなんですがね。
シスター服に着替えて朝食を取ります。このシスターの服はチユさんから提供されました。
「セリア。では、例の件お願いします」
朝食を食べながら昨日の夜に打ち合わせをした内容を確認します。セリアにはとある場所への調査に行ってもらう予定です。アリューさんにはクーリングオフの件、先輩は魔王城でやれることをお願いしました。
「ん、わかったわ。夜には戻るからちゃんと起きててね」
「もちろんですよ」
何でもないようなことで幸せをかみしめている彼女の顔を見ると一年という月日が経っていたのだな実感させられます。たぶんセリアはずっと私と話すことをまっていてくれたのですよね。彼女は一年で学院を卒業したようです。あのセリアががんばって苦手な授業もこなしているところを想像するだけで目頭が熱くなります。
このあと少しの幸せをかみしめつつ二人そろって仲良く家を出ました。
その後、私はトーカさんと合流、昨日のうちに挨拶を済ませ事情を説明し付いてきてもらいました。
「皆さんおはようございます」
「おはようございますサラの姉御」
姉御呼びはアキト君なりの関係性への理解だと解釈しましょう。
「牢屋に布団引いて川の字で寝るとは思わなかったよサラの姉御。まじべーわ」
ベニマル君も姉御呼びなんですね。
「僕は妖精になってお空を自由に飛ぶんだよサラの姉御」
若干一名精神に支障をきたしています。それでも姉御呼びなんですねチョウタ君。
ま、気にせず行きましょう。
「では皆さん畑へ行きますよ!」
私はなるべく明るく牢屋のカギを開けました。するとアキト君とベニマル君が勢いよく外へと出てきます。まるでそのまま逃げだそうとしているようです。
「こんなところにいられるか!」
「俺たちは王都に帰らせてもらう!」
「トーカさんお願いします」
「はいよ」
私の一言でトーカさんが動きます。目にもとまらぬ早業で二人を転ばせるとそのまま流れるように腹に一撃、二人が床に転がりもだえ苦しんでいます。
「ぐおお……」
「マジ…べぇ」
「さあ、畑へ行きましょうね」
私の笑顔に二人は声にならない声で了承しました。
「チョウタ君、君は逃げなかったんですね」
「夢は大きければ大きいほどいいものさ」
キリッとした顔で牢屋から出てきた彼はすでに覚悟が決まっていました。なにを言っているのかはよくわかりませんが。
「ここにある野菜さ引っこ抜いてもらうでよ。よおくみどけ」
畑の野菜の収穫の手伝いをするためまずはゲンさん95歳が見本を見せてくれているところです。
「はいいい!アタァ!」
掛け声とともに野菜を引っこ抜くと土の中から人参のようなものが顔を出します。それだけ見せるとゲンさんはがんばれよーと言って仕事場に戻っていきました。もちろん少年たちには御礼を言わせます。
そして彼らの作業が始まります。
「なんだよ。簡単そうじゃねえか」
アキト君が早速挑戦してみます。
「んぎぎぎぎ…………は?なんだこれびくともしねえぞ」
他の二人も挑戦しましたがまったくぬける様子はありません。そこで暇そうにしていた老人が一人、サツキちゃんのとこのおじいちゃん、シゲさんです。せっかくなのでコーチしてもらうことにしました。
「素人はまず、親指に《肉体強化》、中指に《攻撃力強化》、人差し指に《限界突破》、薬指に《部位強化》、小指に《指切りげんまん強化》のスキルをつけるんじゃ」
「そんなスキル持ってるわけねーだろ」
「持っていないのならばどうすればいいか、簡単なことだ。身に付けろ。さあ指先にすべての力を集中させろい」
ただただ目の前の野菜を引っこ抜くことに費やした朝の時間。ですがこの朝、少年たちは野菜を収穫することができませんでした。
ちなみにトーカさんが横でためしにひっぱると一発で抜けてました。
応援ありがとうございます!
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