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山の恐怖体験
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最後に委員長グループを相手取るのはチョウタ君。ベニマル君とアキト君に見送られいざ決戦の地へと赴きます。
彼が相手をする委員長グループの加護だけでも確認しましょう。
まずは委員長、加護の[指揮者]は指示を与えた者への能力上昇があります。それだけなら特に気にならないのですが上昇する値がおかしい。少しの時間とはいえここで食べられる野菜以上の能力値上昇です。たとえ子供に能力上昇を与えても素手で龍種と渡り合えるほどです。龍種は単純な身体能力だけではなく厄介な加護やスキルもあるので実際に戦ったらそううまくはいかないとはおもいますがそれでも強いです。彼は戦闘に特化した能力やスキルも持っているので総合的な強さがありますね。
次は髪で自分の顔を隠しているのが特徴の女子、副委員長さん。加護は[停止]目に映る生物ならばどれでも1分まで時間ごと止めることができるようです。
かなり太めの男子、彼の加護は[肥大化反射装甲]、魔法、魔術はその肉体が跳ね返します。物理的な攻撃も肥大化した彼の体力は魔王並にあるのでまずやられません。
ギャルという言葉は日本の漫画で覚えたのですがまさにそれです。派手目な姿で短いスカート、やたらと高い声完璧ですね。加護は[七宝]です。持ち主によってその中身が決まるらしいのですが彼女の場合チーク、アイシャドウ、マスカラ、アイブロウ、ファンデーション、アイラッシュカーラー、リップ、名前からはどんな効果を持っているのか全く見当が付きませんでした。でも、アイシャドウってなんか強そうですよね。
最後は常に笑顔の少年。加護は[反転]。彼の理解したすべてのスキル、加護、補正の効果を彼の解釈で反転させることができます。例えば、上で紹介した肥大化反射装甲の加護は魔法魔術させるという解釈や魔法、魔術は全て跳ね返せなくなり物理攻撃は跳ね返せるようになるなど自分の中で反転していると納得できれば応用のききすぎる加護となります。さすがにこれはチョウタ君と言えど厳しい戦いとなるでしょう。
「もーつかれたよー委員長、きゅーけーしようよー」
ギャルさんがその場に座り込みます。横には前髪を隠した副委員長がいますね。
「わかった。休憩しよう!その前に点呼だ!番号1」
委員長さんはギャルさんの意見を聞き入れたようです。
「2」
副委員長が小さな声で答えます。
「さーん」
ギャルの子がめんどくさそうに答えています。
「よ、4」
太めの男の子は息が苦しそうです。鼻息も荒いです。
「5。はい、全員いるね」
ニコニコとした顔で最後の男子が確認を終えます。
「さて、ここらへんで出没すると聞いたのだが、人の気配どころかさっきまで感じていた魔物の気配すらスキルに引っかからなくなった」
委員長は周りを警戒してスキルを使用していたようです。
「他のグループが暴れて倒しちゃったんじゃないの?」
ギャルの子が言った言葉はほぼ正解です。他のグループのところで暴れていましたし、しっかりと倒していましたからね。
「それならなおさら何が起きたか確認しに行った方がよくないですか」
副委員長が進言します。
「しっかり意見が言えてえらい」
横で見ていたギャルの子が副委員長さんの頭を撫でています。
「そうだな一度引き返すか。番号1!」
「2」
「さっき確認したばっかっしょ。てゆーかきゅーけい短すぎ」
「確認を怠ることは油断を生むということだしっかりとやりたまえ」
「はいはい、さーん」
ギャルの子が渋々応じました。
「ふー、ふー、よん」
「……」
どれだけ待っても返事がありません。最後の彼は立ったまま動かなくなっていました。
「お、おいどうしたんだ」
異変に委員長が近づいて触れると立てた小さな木の棒が勝手に倒れるような自然な動きでにっこりとした表情のままに男子生徒は倒れました。
倒れた男子生徒はそこで終わりません。何かが引きずっているのがわかります。ものすごい速さでそれを引きずり山奥へとと消えていきました。
「いやあああああああああああああ」
副委員長の金切り声が山に木霊します。
「みんな落ち着け、何かから攻撃を受けているのは間違いない」
恐怖心と悲鳴は人の冷静さを失わせます。
「でもなんで、私たちの気配察知や索敵スキルに引っかかんないの?」
パニック状態です。信頼していたスキルなどが全く役に立たない状況、こういう場面でこそその人間の行動が問われます。
「うっ……」
そうこうしている間にもう一人今度は太めの男の子が意識を無くしていますね。彼らは何人残れるのでしょうね……ああ、ギャルの子は意外に周りが見えていますね。太めの男子の様子がおかしいことに気づきました。
「藤川?まさかアンタも・・・・・・」
さきほどと同じように立ったまま動かず、少しするとそのまま倒れます。そして先程のように見えない何かに引きずられて山の奥へ消えていきます。それをただただ見ていることしかできない。というよりは動けないが正しいのかもしれません。視覚情報で得られない何か危険なものがある以上、下手に動くことはできないですよね。委員長さんなんて責任感の塊ですから特に加護による強化で指示を出しづらいでしょう。
「とりあえず転移で逃げよう。みんな僕に……」
逃げの一手、敵がその言葉を理解していなければ狙われなかったかもしれません。残念ながら委員長がスキルを使用することはありませんでした。彼もまた何かによってその場で気絶し動かなくなります。もちろん彼はなにかに引きづられて山の中へ。
「走るよ」
ギャルの子は状況に対して冷静だったと言えるでしょう。転移することも読まれ狙われるのならばスキル併用での逃走が一番現実的です。
「でででも、わ、わたし足が」
すくんで動かない。わかりやすい恐怖に対してのサイン。
「大丈夫、担いでいくから」
七宝のどれかの効果なのでしょうか、筋力が高いわけでもないのに軽々と副委員長を担ぎ来た道を引き返すギャルの子。
彼女一人なら逃げきれたかもしれません。担ぐという行動、その数秒のロスが命運を分けたみたいです。
「ああ、わるい。だめっぽい」
少女を担いだままギャルの子は最後の力を振り絞って副委員長をおろします。
雑なおろし方になってしまい地面に転がる副委員長。ギャル子はそのまま倒れてしまいました。ずる、ずる、見えない何かがまた犠牲者を引きずって移動されます。
「うそ、やだやだ一人にしないで!」
副委員長が必死に手を伸ばしますが叶わずそのままギャルの子は他の3人の後を追うように山の奥へと消えていきました。
「おやおや、まだ一人残っていたか」
「だ、だれ」
「そうだな……妖精王とでも名乗りたい気分だけど妖精さんは気まぐれだからね。王様になれるのはいつの日だろうね」
この場にそぐわない明るい間の抜けた言葉を発するナニカ。
一人、また一人と神隠しのように仲間が消えていき冷静さはなかったはずです。それでも彼女は目の前の存在に対して加護を発動していました。
「とまれ!」
加護で止めた対象はクラスメイトのチョウタ君でした。今回のターゲットの一人です。
「だめ、勝てる気がしない。とにかく今はこの状況から脱出し……え?」
彼の動きを止めたことで油断してしまったのでしょう。不意打ちで背後から背中に小さな針が刺さるのが確認できました。私の目から見ても浮いている針が不自然な動きで彼女に刺さっていくさまは不気味です。チクリとした痛みの後、全身がしびれていく感じでしょうか。彼女の心境を想像します。わずかに残された意識の中で体がなにかに引きづられていく恐怖。しかし表情を作ることも叶わないほどのしびれ、彼女もまた他の4人同様に自身に起きた恐怖すらも表現できず山の奥へと消えていきました。
「いやあ参ったな。加護で止められてたみたいだ。でも僕なんか止めてもしょうがないのにね。妖精さん」
不適に笑う妖精の使役者は水晶越しでもめちゃくちゃ不気味に映りました。
彼が相手をする委員長グループの加護だけでも確認しましょう。
まずは委員長、加護の[指揮者]は指示を与えた者への能力上昇があります。それだけなら特に気にならないのですが上昇する値がおかしい。少しの時間とはいえここで食べられる野菜以上の能力値上昇です。たとえ子供に能力上昇を与えても素手で龍種と渡り合えるほどです。龍種は単純な身体能力だけではなく厄介な加護やスキルもあるので実際に戦ったらそううまくはいかないとはおもいますがそれでも強いです。彼は戦闘に特化した能力やスキルも持っているので総合的な強さがありますね。
次は髪で自分の顔を隠しているのが特徴の女子、副委員長さん。加護は[停止]目に映る生物ならばどれでも1分まで時間ごと止めることができるようです。
かなり太めの男子、彼の加護は[肥大化反射装甲]、魔法、魔術はその肉体が跳ね返します。物理的な攻撃も肥大化した彼の体力は魔王並にあるのでまずやられません。
ギャルという言葉は日本の漫画で覚えたのですがまさにそれです。派手目な姿で短いスカート、やたらと高い声完璧ですね。加護は[七宝]です。持ち主によってその中身が決まるらしいのですが彼女の場合チーク、アイシャドウ、マスカラ、アイブロウ、ファンデーション、アイラッシュカーラー、リップ、名前からはどんな効果を持っているのか全く見当が付きませんでした。でも、アイシャドウってなんか強そうですよね。
最後は常に笑顔の少年。加護は[反転]。彼の理解したすべてのスキル、加護、補正の効果を彼の解釈で反転させることができます。例えば、上で紹介した肥大化反射装甲の加護は魔法魔術させるという解釈や魔法、魔術は全て跳ね返せなくなり物理攻撃は跳ね返せるようになるなど自分の中で反転していると納得できれば応用のききすぎる加護となります。さすがにこれはチョウタ君と言えど厳しい戦いとなるでしょう。
「もーつかれたよー委員長、きゅーけーしようよー」
ギャルさんがその場に座り込みます。横には前髪を隠した副委員長がいますね。
「わかった。休憩しよう!その前に点呼だ!番号1」
委員長さんはギャルさんの意見を聞き入れたようです。
「2」
副委員長が小さな声で答えます。
「さーん」
ギャルの子がめんどくさそうに答えています。
「よ、4」
太めの男の子は息が苦しそうです。鼻息も荒いです。
「5。はい、全員いるね」
ニコニコとした顔で最後の男子が確認を終えます。
「さて、ここらへんで出没すると聞いたのだが、人の気配どころかさっきまで感じていた魔物の気配すらスキルに引っかからなくなった」
委員長は周りを警戒してスキルを使用していたようです。
「他のグループが暴れて倒しちゃったんじゃないの?」
ギャルの子が言った言葉はほぼ正解です。他のグループのところで暴れていましたし、しっかりと倒していましたからね。
「それならなおさら何が起きたか確認しに行った方がよくないですか」
副委員長が進言します。
「しっかり意見が言えてえらい」
横で見ていたギャルの子が副委員長さんの頭を撫でています。
「そうだな一度引き返すか。番号1!」
「2」
「さっき確認したばっかっしょ。てゆーかきゅーけい短すぎ」
「確認を怠ることは油断を生むということだしっかりとやりたまえ」
「はいはい、さーん」
ギャルの子が渋々応じました。
「ふー、ふー、よん」
「……」
どれだけ待っても返事がありません。最後の彼は立ったまま動かなくなっていました。
「お、おいどうしたんだ」
異変に委員長が近づいて触れると立てた小さな木の棒が勝手に倒れるような自然な動きでにっこりとした表情のままに男子生徒は倒れました。
倒れた男子生徒はそこで終わりません。何かが引きずっているのがわかります。ものすごい速さでそれを引きずり山奥へとと消えていきました。
「いやあああああああああああああ」
副委員長の金切り声が山に木霊します。
「みんな落ち着け、何かから攻撃を受けているのは間違いない」
恐怖心と悲鳴は人の冷静さを失わせます。
「でもなんで、私たちの気配察知や索敵スキルに引っかかんないの?」
パニック状態です。信頼していたスキルなどが全く役に立たない状況、こういう場面でこそその人間の行動が問われます。
「うっ……」
そうこうしている間にもう一人今度は太めの男の子が意識を無くしていますね。彼らは何人残れるのでしょうね……ああ、ギャルの子は意外に周りが見えていますね。太めの男子の様子がおかしいことに気づきました。
「藤川?まさかアンタも・・・・・・」
さきほどと同じように立ったまま動かず、少しするとそのまま倒れます。そして先程のように見えない何かに引きずられて山の奥へ消えていきます。それをただただ見ていることしかできない。というよりは動けないが正しいのかもしれません。視覚情報で得られない何か危険なものがある以上、下手に動くことはできないですよね。委員長さんなんて責任感の塊ですから特に加護による強化で指示を出しづらいでしょう。
「とりあえず転移で逃げよう。みんな僕に……」
逃げの一手、敵がその言葉を理解していなければ狙われなかったかもしれません。残念ながら委員長がスキルを使用することはありませんでした。彼もまた何かによってその場で気絶し動かなくなります。もちろん彼はなにかに引きづられて山の中へ。
「走るよ」
ギャルの子は状況に対して冷静だったと言えるでしょう。転移することも読まれ狙われるのならばスキル併用での逃走が一番現実的です。
「でででも、わ、わたし足が」
すくんで動かない。わかりやすい恐怖に対してのサイン。
「大丈夫、担いでいくから」
七宝のどれかの効果なのでしょうか、筋力が高いわけでもないのに軽々と副委員長を担ぎ来た道を引き返すギャルの子。
彼女一人なら逃げきれたかもしれません。担ぐという行動、その数秒のロスが命運を分けたみたいです。
「ああ、わるい。だめっぽい」
少女を担いだままギャルの子は最後の力を振り絞って副委員長をおろします。
雑なおろし方になってしまい地面に転がる副委員長。ギャル子はそのまま倒れてしまいました。ずる、ずる、見えない何かがまた犠牲者を引きずって移動されます。
「うそ、やだやだ一人にしないで!」
副委員長が必死に手を伸ばしますが叶わずそのままギャルの子は他の3人の後を追うように山の奥へと消えていきました。
「おやおや、まだ一人残っていたか」
「だ、だれ」
「そうだな……妖精王とでも名乗りたい気分だけど妖精さんは気まぐれだからね。王様になれるのはいつの日だろうね」
この場にそぐわない明るい間の抜けた言葉を発するナニカ。
一人、また一人と神隠しのように仲間が消えていき冷静さはなかったはずです。それでも彼女は目の前の存在に対して加護を発動していました。
「とまれ!」
加護で止めた対象はクラスメイトのチョウタ君でした。今回のターゲットの一人です。
「だめ、勝てる気がしない。とにかく今はこの状況から脱出し……え?」
彼の動きを止めたことで油断してしまったのでしょう。不意打ちで背後から背中に小さな針が刺さるのが確認できました。私の目から見ても浮いている針が不自然な動きで彼女に刺さっていくさまは不気味です。チクリとした痛みの後、全身がしびれていく感じでしょうか。彼女の心境を想像します。わずかに残された意識の中で体がなにかに引きづられていく恐怖。しかし表情を作ることも叶わないほどのしびれ、彼女もまた他の4人同様に自身に起きた恐怖すらも表現できず山の奥へと消えていきました。
「いやあ参ったな。加護で止められてたみたいだ。でも僕なんか止めてもしょうがないのにね。妖精さん」
不適に笑う妖精の使役者は水晶越しでもめちゃくちゃ不気味に映りました。
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