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英雄たる所以
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その日の教室はかなりあわただしかった。
一部の人間は恐怖をしたり、嬉しそうにしている輩もいた。
そして何より、恐怖していたのは教師たちであろう。
「なぁ大輝、本当に今日来るのか?もう放課後になっちまったぜ?」
「本人が昨日のニュースで言ってただろう?まぁ、来るのを拒むこともできないしな。」
確かに貴重かつ最高な研究素材であるジェマをこの国立シャロンド学院が『ジェマの要望である自身の登校を拒否する』なんてことになったら研究の拒否をされかねない。
ゆえに教師たちはただ従うしかないのである。
「これで2回目だな……。最後のジェマの証拠目当てか?」
「だろうな。とは言っても何一つとして残してないしな。『この学校にいる』ということだけしかわからない。」
だからこそ俺は有利な状況にある。
この場でもし西条先輩が攻めてきても今度はトイレとかで能力を使用してから目の前に現れればいいのである。
この学校やそこら一帯を更地にできるということなら話は別だが。
しかし大輝は納得がいかないかのような顔で俺のほうを向きながら聞いてきた。
「でもあの人が自分からここへ来ると思うか?最後のジェマに一度敗北を喫しているというのに。」
「絶対に来る。これは断言できる。」
一度俺に負けた。あれを負けたと取るかはまた話が別だが、西条先輩本人でなければこれを達成することは難しい。グレッツォやレプリカが勝てないことなど明白である。
故に彼女は絶対に自分で証拠を奪いに来るであろう。
しかし、その重要参考人とやらがいまいちピンとこない……。
俺の能力を知る人物……いやそんな人は一人としていない。
ならばあの時にいた人物か……。教師……いや違う、もしあの場で俺のことを少しでも情報を知っていたら自分の保身のために情報提供をしていただろう。
ならば……俺も知らない俺の漏れてる情報……
「新聞部!」
叫びながら椅子から立ち上がった俺に周りに視線が集まる。
そして目の前にいた大輝は唖然とした顔をしながら俺の顔を席に座った状態で見上げた。
俺は顔を赤らめながら大輝に向かって耳打ちをする。
「新聞部って今日は何をやっているとかってわかるか?」
「新聞部っていつも単独行動をする人が多いからいまいち動向はつかめないな。でも、昨日の彼女ならさっき体育館に向かうところに出会ったぞ。」
「わかった。」
勢いよく飛び出し体育館に一直線に向かった。
今この場で能力を使ってもいいが体育館にいなかった場合、違う場所に行くのに他人に見られたりするリスクが大きくなる。ならば体育館の舞台袖とかで能力を使うべきであろう。
「ついた……!」
猛ダッシュしたおかげもあってどうにかたどり着けたが周りは閑散としていた。
西条先輩はどこにもいなかった。
しかし、新聞部の女子生徒もそこにはいなかった。
「まずい……連れ去られた後だったか……?」
すると、後ろのほうから物音が聞こえた。
するとそこには手足や口が動かず、ただ眼だけが動かすことのできる女子生徒がそこにいた。
彼女の眼には涙がたまっていて今すぐにでも零れ落ちそうだった。
「なぁんだ。あの時の質問した子かぁ。君、何しにここに来たの?」
「それはこっちのセリフだ、西条あやめ、どうしてあなたのすぐそばにいる女子生徒は今にも泣きそうな顔をしているんだ?」
「教える必要性がないからね。いや、教えたところで君にはもう関係のない話なんじゃないかな?まぁ、いいや。情報を聞き出したうえで人質として『最後のジェマ』正体を暴くために使わせてもらう。」
「それじゃあ人質の縛っておくには随分と優しいんじゃないか?」
「は?」
一瞬、彼女が瞬きをした。
俺はその瞬間を逃さなかった。
その間に能力を発動、間合いを一瞬で縮めながら新聞部の女子生徒を彼女の腕からはがし、抱きかかえそのまま西条先輩から距離を置く。
一連の動作をおよそ1秒にも満たない間でこなす。
「遅くなって悪かった、インタビューは後で受けてやるから。」
「も、も、も……もしかして……」
一人の女子生徒は希望、そして憧れを持った、眺望のまなざしを一人の男に向けた。
「嘘……よね……?君何者なの……。」
そしてもう一人は現実を受け止めきれない驚愕、そしてこの状況における恐怖。
「お前のお目当ての存在だ。」
一部の人間は恐怖をしたり、嬉しそうにしている輩もいた。
そして何より、恐怖していたのは教師たちであろう。
「なぁ大輝、本当に今日来るのか?もう放課後になっちまったぜ?」
「本人が昨日のニュースで言ってただろう?まぁ、来るのを拒むこともできないしな。」
確かに貴重かつ最高な研究素材であるジェマをこの国立シャロンド学院が『ジェマの要望である自身の登校を拒否する』なんてことになったら研究の拒否をされかねない。
ゆえに教師たちはただ従うしかないのである。
「これで2回目だな……。最後のジェマの証拠目当てか?」
「だろうな。とは言っても何一つとして残してないしな。『この学校にいる』ということだけしかわからない。」
だからこそ俺は有利な状況にある。
この場でもし西条先輩が攻めてきても今度はトイレとかで能力を使用してから目の前に現れればいいのである。
この学校やそこら一帯を更地にできるということなら話は別だが。
しかし大輝は納得がいかないかのような顔で俺のほうを向きながら聞いてきた。
「でもあの人が自分からここへ来ると思うか?最後のジェマに一度敗北を喫しているというのに。」
「絶対に来る。これは断言できる。」
一度俺に負けた。あれを負けたと取るかはまた話が別だが、西条先輩本人でなければこれを達成することは難しい。グレッツォやレプリカが勝てないことなど明白である。
故に彼女は絶対に自分で証拠を奪いに来るであろう。
しかし、その重要参考人とやらがいまいちピンとこない……。
俺の能力を知る人物……いやそんな人は一人としていない。
ならばあの時にいた人物か……。教師……いや違う、もしあの場で俺のことを少しでも情報を知っていたら自分の保身のために情報提供をしていただろう。
ならば……俺も知らない俺の漏れてる情報……
「新聞部!」
叫びながら椅子から立ち上がった俺に周りに視線が集まる。
そして目の前にいた大輝は唖然とした顔をしながら俺の顔を席に座った状態で見上げた。
俺は顔を赤らめながら大輝に向かって耳打ちをする。
「新聞部って今日は何をやっているとかってわかるか?」
「新聞部っていつも単独行動をする人が多いからいまいち動向はつかめないな。でも、昨日の彼女ならさっき体育館に向かうところに出会ったぞ。」
「わかった。」
勢いよく飛び出し体育館に一直線に向かった。
今この場で能力を使ってもいいが体育館にいなかった場合、違う場所に行くのに他人に見られたりするリスクが大きくなる。ならば体育館の舞台袖とかで能力を使うべきであろう。
「ついた……!」
猛ダッシュしたおかげもあってどうにかたどり着けたが周りは閑散としていた。
西条先輩はどこにもいなかった。
しかし、新聞部の女子生徒もそこにはいなかった。
「まずい……連れ去られた後だったか……?」
すると、後ろのほうから物音が聞こえた。
するとそこには手足や口が動かず、ただ眼だけが動かすことのできる女子生徒がそこにいた。
彼女の眼には涙がたまっていて今すぐにでも零れ落ちそうだった。
「なぁんだ。あの時の質問した子かぁ。君、何しにここに来たの?」
「それはこっちのセリフだ、西条あやめ、どうしてあなたのすぐそばにいる女子生徒は今にも泣きそうな顔をしているんだ?」
「教える必要性がないからね。いや、教えたところで君にはもう関係のない話なんじゃないかな?まぁ、いいや。情報を聞き出したうえで人質として『最後のジェマ』正体を暴くために使わせてもらう。」
「それじゃあ人質の縛っておくには随分と優しいんじゃないか?」
「は?」
一瞬、彼女が瞬きをした。
俺はその瞬間を逃さなかった。
その間に能力を発動、間合いを一瞬で縮めながら新聞部の女子生徒を彼女の腕からはがし、抱きかかえそのまま西条先輩から距離を置く。
一連の動作をおよそ1秒にも満たない間でこなす。
「遅くなって悪かった、インタビューは後で受けてやるから。」
「も、も、も……もしかして……」
一人の女子生徒は希望、そして憧れを持った、眺望のまなざしを一人の男に向けた。
「嘘……よね……?君何者なの……。」
そしてもう一人は現実を受け止めきれない驚愕、そしてこの状況における恐怖。
「お前のお目当ての存在だ。」
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