英雄を作るための英雄譚

かる

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第6話 新聞部とメディア

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「あぁ……申し訳ないな……ここまでの話は全部知っていたのか……。」

大輝が再確認するように女子生徒に質問をすると女子生徒は気持ちを切り替え感謝を述べた。

「いえ!申し訳ないだなんてそんな!確かに特徴等は知りたかったですけどこの情報が確固たるものとなるだけでも大きな収穫でした!ありがとうございます!」

いや、何かがおかしい……。
先ほどから謎の違和感がある。
俺が気づいてないだけだ……もし俺が新聞部だったらなんて返すのが自然だ?







私が体験した話!?
この女子生徒確かにそういったよな?
つまりあの体育館にいたということか……。
かなりまずいぞ……変に情報なんて与えるべきではなかった……たとえそれが彼女が目で見たものであったとしてもそれを確定させてしまえばこのことは新聞に間違いなく載るであろう。
もし俺がこの場で彼女と違うことを言えば彼女はまずどちらの情報が間違っているため新聞を書くことを保留にしておいたでろう。
しかしそこで俺が戦闘の内容を語ってしまったがゆえにこのことは全校、下手をすれば都内出版社等にまで流れてしまうだろう。

「あー、俺のほうから少しいいか?君、体育館のどこにいたの?」

「いきなりどうしたんだ?」

「少し気になることがあったなぁって。」

「なんですか!?なんでもいいから情報提供お願いします!」

彼女を目を輝かせながら俺のほうへと顔を近づけた。
しかし、距離に近づくと顔を真っ赤にし、顔を勢いよく離した。
そして一度咳ばらいをしてから答えた。

「え、えーっとですね……実は私、体育館の真ん中で転んでしまってですね……ドラゴンに食べられそうになっていたんですよ……その所を『最後のジェマ』様に助けてもらって……。」

確かに、一人の女子生徒が真ん中で派手にしりもちをついたのを覚えている。
たぶん彼女のことであろう。
特定の誰かを助けたという記憶はないが自然と自分が俺に守られてると思ってしまったらしい。
このまま訂正するのもかわいそうなので話を聞き進めた。

「その時彼の顔を見たりはしなかったのか?」

「見てたら記事に書いてますよ!ですけど身長はかなり高かったですね。180はあるんではないでしょうか?って立場逆になってるじゃないですか!これ以上は教えることはできません!」

彼女はこれ以上は教えるつもりはないらしく、そっぽを向いてしまった。
俺たちもそろそろ帰宅の時間が迫ってきているので彼女に一度会釈をしたのち部室から去っていった。
しかし彼女の様子を見るに何かまだ重要なことを隠しているようにも見えた。
なんだ?俺は何もしていないはずだが……個人情報に匹敵する重要な証拠……。
考えても思いつかなかったため今日は諦めて大輝と自宅へと帰った。

「戦闘ってマジで疲れるんだなぁ……。」

久しぶりの能力開放。
おとといの疲労感はまだ抜けず自分の体内で残っていた。

「今の時刻は……午後の6時を過ぎたあたりか……。」

外はだんだんと暗くなってきて夜のとばりが下りようとしていた。
カーテンを閉め、ニュースでも見ようかとテレビをつけた時だった。

「かなりまずいな……。」

テレビには衝撃の文字が並んでいた。

『最後のジェマは存在していた!?』

『本日は序列第5位である西条 あやめさんに来てもらっています!』

『いやー、西城さんは【ランク:ジェマ】でありながら、その可愛らしさと共に多方面でも活躍されるタレントでもあります。どうぞ本日はよろしくお願いいたします。』

『よろしくお願いいたします!』

『早速なのですが、【最後のジェマ】は存在するのでしょうか?』

『はい、一昨日の学校襲撃事件においてドラゴンを退《しりぞ》けたのが【最後のジェマ】です。私もちょうどその時学校にいたので突然能力を見せたためかなり驚きました。』

『なるほど……ということは目撃者がほかにも学校にも見た方がいらっしゃるということですかね?』

『はい、生徒たちの多くは逃げ出しましたが、逃げ遅れてしまったためその時ちょうど【最後のジェマ】を見たという生徒もいます。』

『教師の方々はいかがしたのでしょうか?』

『本校舎にいたためほとんどの教師は間に合いませんでした。しかし元々いた教師たちは生徒を逃がすため自ら身代わりとなってしまいました……。』

悲しげに答える西条先輩であった。
しかしそれは全くと言っていいほど心がこもっていないようだ。
自分で召喚したドラゴンに周りの教師を食わせる。そしてそれは英雄呼ばわりか。
随分と都合がいいな。

『では今度、シャロンドにて情報提供等を呼び掛けてみますか?』

『でしたら、私重要参考人を知っているので、今度その方から情報を教えてもらいましょう!』

西条先輩はそのニュースキャスターに対して有無を言わせず答えた。
重要参考人……そんな俺のことに詳しい人間があの学校にいるのだろうか?
そして彼女はキャスターにばれないよう、少しニヤけるのであった。
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