俺がどうしてこんなにも彼女に愛されているのかわからない

冬雪樹

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彼女に重く愛される訳

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 皆もそうであるように、俺もずっと疑問に思っていることがある――そう、どうして俺はこんなにも彼女……愛音に愛されているのか。

 今までの話を聞いてもらえれば分かるかも知れないが、人を監禁――養うとなれば、そこそこお金が必要になる。
 つまりだ――愛音は可愛くて、家事が出来て、めちゃくちゃ尽くしてくれるちょっとしたお金持ちなんだ。あと、エッチ。

 少し愛が重めのところを除けば、誰もが彼女にしたくなる女の子だ。
 そんな子が、どうして俺みたいな男と付き合い、ここまで愛しているのか。まずは、俺と愛音が付き合った時の話をしよう。


 まず俺と愛音が出会ったのは今から二年前だ。
 当事二十三歳だった俺は、四年制の大学を卒業し、ろくに就職もせずに、フリーターとしてだらだらと過ごしていた。

 親の仕送りやバイト代で、何とか生活をしていたが、家賃や水道光熱費などを払ったりしていると、少ない貯金がさらに少なくなってしまい、ご飯もあまり食べれないでいた(なら、就活しろよというコメントは受け付けない)。

 そこで俺は、出会い系を使い、誰か俺にご飯を食べさせてくれる人がいないかと探した。
 当然、そんな人はおらず、俺は『ご飯を食べさせてください』とだけ残して、出会い系を閉じた。

 それから、出会い系を開くことはなく、だらだらと過ごしていると、スマホに通知がきた。見ると、出会い系からだった。
 すぐに開くと、『よかったら私と一緒にご飯を食べませんか』のお誘いだった。俺はすぐに返事をし、待ち合わせの時間と場所を決めた。

 それから、数時間後に待ち合わせ場所に行くと、聞いていた服装の女の子がいた。

「こんばんわ。もしかして、『アイ』さんですか?」
「あ、はい。そうです。『アキ』さんですか?」

 そうこの『アイ』さんこそが、当事二十三歳の後に彼女となる愛音だ。

 それから、俺はアイさんについていき、少し高そうな店に入った。このときから、愛音はもう金を持っていた。

「こういうお店に来たことがないから、なんか緊張する」
「そうなんだ。だったら、私がおすすめを食べさせてあげるね」
「その方が助かるよ」

 そして、アイさんのおすすめという見るからに高級料理という感じものを食べ、店を出た。
 俺は、ご飯さえ食べさせてもらったら帰るつもりだったが、アイさんの方から少し飲みましょうと誘われ、なんと会って数時間で家に招待された。

「カンパーイ!」
「乾杯!」

 コンビニで買ったおつまみを食べながら酒が進むアイさん。
 俺は、流石にここで間違いを犯したらヤバイと思い、セーブさせながら飲んでいた。

 俺と違ってどんどんカンを開けていき、できあがっていくアイさん。
 アイさんは酔ったせいで無防備になっていき、俺はドキドキとさせられていた。

「あれぇ? あきしゃん、じぇんじぇん飲んでないじゃーん。ほら~、もっと飲みなよ~。あはは」
「飲んでますよ」
「ほんと~?」
「本当です」

 酔って絡んでくるアイさん。もしこれが、俺じゃなくて、別の男なら、今すぐにでも襲われてもおかしくないぞ! と思う。

 次第にスキンシップが多くなってき、抱きついてきたり、俺の膝を枕に寝転んだりとしてきた。

「はぁ~楽し」
「楽しいならよかったですよ」
「あはは。ねえねえ」
「なんです?」
「エッチしよっか」

 飲んでいた酒を吹き出しそうになった。
 え? なに? エッチ? 酔いすぎだろ。

「酔いすぎですよ」
「うー、酔ってなんてないよ」
「酔ってもない人が、突然、今日会ったりばかりの男とエッチしようなんて言いませんよ」
「別に、会ったのはこれが初めてじゃないし。それに、私はアキくんとシたいから言ってるんだよ」
「いろいろどういうことですか。会ったのは初めてでしょう?」
「もう、意気地無し!」
「意気地無しって……んっ!」

 突然アイさんがキスをしてきた。突然のことに驚き、俺は抵抗することを忘れていた。それをアイさんは『オッケー』と受け取り、唇を割って舌を入れてきた。

 実はこれが初めてのキスだった。
 俺とアイさんと舌が絡み合う。アイさんは慣れているのか、何だか気持ち良かった。

「はぁ~。私のファーストキスだよ」
「絶体嘘だ!」
「嘘じゃないよ。それより、続きしよ?」
「え?」
「え? っじゃない。ほれ!」

 その後も俺はアイさんにされるがままになり、俺のファーストキスも童貞も奪われるのだった。

 気がつくと朝になっており、良い匂いがし、体を起こした。台所を見ると、既に起きたアイさんが立っており、何かを作っていた。

「あ! おはよう。よく眠れた?」
「はい……」

 若干まだ寝ぼけたまま返事をする。布団から出ようとしたときに、自分が全裸であることに気づいた。
 そうか昨日……シたのか。アイさんと。
 俺は綺麗に畳まれた自分の服を着て、布団から出る。
 そこに、アイさんが目玉焼きが乗った皿を持ってきた。

「はい、朝ごはん」
「あ、ありがとう……ございます」
「別にタメ語でいいよ。同い年だし」
「えっ! そうなの!」
「そうだよ」

 ここでアイさんと自分が同い年であることを知った。
 アイさんが作った朝ごはんを食べ、話をする。

「それで、昨日言っていた会ったのは初めてじゃないって」
「ああ、覚えてない私のこと?」

 そう言われ、ジーッとアイさんの顔を見る。言われてみれば、なんか見たことがあるような気がするが、どうしても思い出せない。

「流石にそんなに見られると恥ずかしい」
「あっ、ごめん。でも、やっぱ、思い出せない」
「えー。中学生の頃だよ?」
「中学生って、何年前だよ」

 逆によく覚えてんなと言った。それに、アイさんは、

「そりゃ、覚えてるよ。助けてくれたし」
「助けた? 俺が?」
「うん」

 中学時代からボッチだった俺が、誰かを助けたとは思えなかった。だって、人に興味なかったし、誰とも関わりたくなかったし。

「人違いじゃ」
「それは絶体違う。だって、アキさん――ううん、明希斗くんを間違うわけがないよ!」

 本名である明希斗は、アイさんには教えていない。ということは、本当に俺とアイさんは中学生時代に会っているということだ。

「本当に覚えてない? 私のこと――愛川愛音のこと」

 愛川愛音――そういや、そんなやつがいたような気がする。なんか、よく面倒事を押し付けられたりしてたような。
 でも、俺、その子を助けたことなんて一度もないけどな。遠くから、また押し付けられる程度しか思ってなかったし。

「何となくは思い出したけど、やっぱり助けたことはないけどなー」
「ううん。助けてくれた。私が係りじゃないのに、クラスの数学ノートを職員室に持っていっているとき、足を滑らせて、ノートを落としちゃったの。そのとき、近くにいた明希斗くんが一緒に拾って職員室まで持っていってくれたの」
「あー……」
  
 そういやあったなそんなこと。
 でも、あれは――周りにちらほらと人がいて、一番近くにいたのが俺で、そのまま素通りしたら、俺が最低な奴みたいになるのが嫌で、これからも平和に過ごしたかったから仕方なく拾ってあげて、職員室まで持っていったんだよな。
 ということを、アイさん――愛音に説明した。

「それでも、拾ってくれて、一緒に職員室まで持っていってくれたのは、明希斗くんだけだったんだよ。そして、私ね、その時から明希斗くんのことが気になり始めたの」
「そうだったんだ」

 それで、たまたま出会い系で『アキ』という名前を見つけ、何となく気になって、実際に会ったみたら、本当に俺だったことに驚いて、もう流れて任せて家に誘って、今に至ることになったらしい。

 よくもまあ、アキと言う名前だけで会う気になったもんだな。俺じゃなかったら、どうしてたんだ。

「本当にビックリしちゃった」
「ほんと、運命みたいだな……なんて」
「うん。ほんと、運命みたい。それで、まだ話があるの」

 愛音に真剣な表情でそう言われ、俺も自然と真剣な表情になっていた。

「その……ね? もし……明希斗くんがよければ……わ、私と……付き合ってほしいの……付き合ってください」
「……つ、付き合って、そのどこかに行くとかじゃなくて、交際ってこと?」
「う、うん」

 なんか、いろいろ順序が反対になっている気がするが、俺は、

「俺でよければ」

 と返事をした。
 こうして、俺と愛音は付き合うことになった。

🖤 ♡ 🖤 ♡ 🖤 ♡
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