何れ人か神の花〜今日も殺し損ねた少女と一つ屋根の下で暮らしています〜

本田ゆき

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第一章

心臓怪火 16

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 ◇


「なぁ、お前は大丈夫か?」

 俺の住んでいるビルに数年ぶりに会った兄のジャクソンがやって来た。
 どうやら仕事終わりらしく、警官服のままだ。

「あ、兄さん久しぶり」

 俺はいつもと変わらずに兄に挨拶する。

「あの怪奇焼殺事件の事で本部から駆り出されたんだ。
何でも一人目はお前の職場の上司だったんだろ?
お前が無事で良かったけど、もし何かあったらすぐに俺に言えよ?」

 兄は本気で俺の事を心配していたらしく、わざわざ俺の住んでる家に来たらしい。

「俺は大丈夫だよ」

 何せ、俺が犯人なんだから。

 俺はそう思いながら笑って兄に話す。

「確かに今の所大丈夫かもしれないけど、夜遅くの外出は控えろよ?」

「大丈夫だって、兄さんは心配性だな」

「……ん?」

 すると、兄は俺の部屋のゴミ箱を凝視した。

「兄さん、どうかした?」

 俺は不思議に思い兄に問い掛ける。

「……花」
「はな?」

「紫の……シャクヤク」

 兄はゴミ箱に手を突っ込んで花を取り出した。

「お前、これ何処で手に入れた?」

 兄に問われて俺はしまったなと考える。

「えーと、酔った勢いで道端で拾った」
「この花は、この国では咲かない。
そんな花が、道端に落ちてる訳ないだろ!?
これは、きっとこの事件の手掛かりになる!
なあ、ダニエル、この花は何処で手に入れたんだ?
頼む! 教えてくれ!」

 兄に懇願され、俺はうざったく感じた。

 そもそも、この兄貴さえ居なければ、俺はこんな事になっていなかったのに。

 こいつが居たから、俺はずっと劣等感に苛まれていたんだ。

 こいつさえ、居なければーー。

「……こんな事なら、きちんと処分しておけば良かったなぁ」

「え?」

 ダニエルの瞳が赤く光る。

 俺は気付くとそんな事を呟いて、兄に詰め寄っていた。

「う、嘘だろ……ダニー」

 そう泣きそうなくらい悲しそうな顔をしているジャクソンに、俺のシャクヤクになった左腕が伸びる。

「なっ!」

 しかし、これまでの被害者と違って現役警察官であるジャクソンの運動神経は良く、シャクヤクを逃れて玄関を飛び出した。

 まずい。
 これを見られた状態で逃げられたら、今までの俺の犯行がバレてしまう。

 俺は茎を伸ばして下に降りようとする兄の行く手を防いだ。

「くそっ!」

 それから兄は上の屋上目掛けて階段を登っていく。

 俺もそれをゆっくりと追った。
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