何れ人か神の花〜今日も殺し損ねた少女と一つ屋根の下で暮らしています〜

本田ゆき

文字の大きさ
40 / 82
第三章

戒心散花 7

しおりを挟む
「よおアイリスちゃん、昨日はお疲れ様。
大丈夫だったかい?」

 次の日の昼過ぎに、報酬を持った情報屋がアイリスの元に訪れていた。

「あ、情報屋さん。
大丈夫。殺してないよ」

 普通は手を出されなかったかと言う意味で大丈夫かと訊くんだろうけど、アイリスに関しては相手を殺してないかとの確認の意味合いの方が強かった。

 そしてそれをアイリス自身も理解しているのだから、側から見れば異常な会話が成立している。

「そかそか、それは良かった」
「つっても、半殺しにしてたけどな」

 俺が横からそう口を挟むと、情報屋はあ、やっぱり? とへらへら笑っていた。

「まあアイリスちゃんに頼むおじさん方は大体痛めつけても問題ない奴ばっかだから大丈夫だ。
ところで、今度はお二人さんに仕事を依頼しにきたんだが」
「んだよ。また花関連か?」

 俺の問いに情報屋はニヤリと頷く。

「その通りだ。
被害者は、昨日アイリスちゃんが相手してくれたローガンの浮気相手だよ」

「浮気相手?」
「ああ、あのおっさん、だいぶ派手に遊び回ってる事で有名だったからな。
ま、それに釘を刺す為にアイリスちゃんに昨日仕事を振ったんだけど……しかし、ちょっと厄介な事になったんだ」
「厄介?」

「そう。昨日の一晩、アイリスちゃんがローガンの相手をしてもらっている間に浮気相手の三人の女性が殺されたんだ。
因みに、現場付近に花は落ちてなかった」

「は? じゃあ今回は花のバケモノじゃねーんじゃねーの?」

 これまで二件の花の事件を任されたが、最初の事件には犠牲者が出る度に花が落ちていたし、この前の事件も最初の一件だけは花が落ちていた。

 花が出てこないなら、今回は普通の殺人事件なのでは?

 俺の怪訝な顔に、情報屋はまあまあ、と話を続ける。

「今回の三人の被害者はまるで爆破された様に死体がバラバラだったらしい。

しかし、三件とも家の室内で起こった事件なのに、家の中の物は何も焼けた跡がないんだと。

まるで、その被害者の女性の体内だけが爆破したかの様だった、てさ。

それと、普通の爆薬なら本来はニトログリセリンなりナトリウムなり原料が特定できる筈なのに、それらの怪しい物質が一つも出てこないんだと。
だが、何故か恐らくグラヤノトキシンという毒が検出されたんだ。
この毒は基本ツツジ科の植物に含まれている奴なんだと。

それと三人の死亡推定時刻は約一時間刻みで、やり方もほぼ同じ事から同一犯の仕業と警察は睨んでいるらしいが、俺からしてみれば十中八九花の怪異の仕業だと睨んでいる」

「ふーん、花の毒、ねぇ」

 俺は情報屋から手渡された新聞を眺めながらそう呟いた。

「被害者女性は三人ともお互い面識はなし。
ただ、新聞には載っていないが三人ともローガンの浮気相手である事は裏が取れている為、そこら辺の怨恨だと睨んでいる。
普通に考えて一番怪しいのはローガンの奥さんだな」

「まあ、そりゃあそうだよな」

 今朝アイリスとローガンのやり取りを隣の部屋で聞いていただけだったが、アイリスにまで手を出そうとしていたじいさんだ。ワンナイトラブも併せりゃ相当数浮気しているのだろう。

 そんな男の嫁なら、怒るのも無理はない。

 寧ろ、奥さんがいた事にも驚きだが。

「恐らくローガンと奥さんのところにももう警察が行ってるだろうが、しかし本当に花の怪奇現象のせいなら警察も証拠が掴めないだろ。
という訳で、後は頼んだぜ」

「はぁ、まあ今回は大分犯人も特定出来てるんならいいけどよ。
ただ、花の核には銃弾が効かねえ。
何で俺まで毎度こいつと組まされんだよ?」
「そりゃあ、まあ、お互いがお互いの見張りも兼ねて?」

「ふざけんなよ。別に俺が居なくてもいいだろ?」

 そう、戦闘はほぼアイリスのみで十分な筈なんだ。

 なのに何故俺までいつも駆り出されるのか。

「まあそう言わずに頼むよ。
一応報酬は二人分だしてんだからさ」
「……別に金がそこまで欲しい訳じゃねーけどよ」
「それじゃあ、今回の仕事の報酬は情報の方がいいか?
知りたいんだろ? じーさんの事」
「!!」

 ボソリと俺にだけ聴こえる様に俺の耳元でそう呟いた後情報屋はニヤリと胡散臭く笑いをしたので俺は思わず殴りたくなったが、しかし情報が欲しくない訳ではなかった。

「何か教えてくれるっていうのかよ?」
「それはお前の頑張り次第だな。
ま、アイリスちゃんに人を殺させなければ教えてやるよ」

「……チッ。
分かったよ」

 仕方なく舌打ち混じりに俺は返事をする。

 まあ、じーさんの情報を知りたいのは確かなので、仕方なく言う事を聞く事にした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。 カレンと晴人はその後、どうなる?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?

水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。 日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。 そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。 一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。 ◇小説家になろう、ベリーズカフェにも掲載中です! ◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています

悪役令嬢として断罪された聖女様は復讐する

青の雀
恋愛
公爵令嬢のマリアベルーナは、厳しい母の躾により、完ぺきな淑女として生まれ育つ。 両親は政略結婚で、父は母以外の女性を囲っていた。 母の死後1年も経たないうちに、その愛人を公爵家に入れ、同い年のリリアーヌが異母妹となった。 リリアーヌは、自分こそが公爵家の一人娘だと言わんばかりにわが物顔で振る舞いマリアベルーナに迷惑をかける。 マリアベルーナには、5歳の頃より婚約者がいて、第1王子のレオンハルト殿下も、次第にリリアーヌに魅了されてしまい、ついには婚約破棄されてしまう。 すべてを失ったマリアベルーナは悲しみのあまり、修道院へ自ら行く。 修道院で聖女様に覚醒して…… 大慌てになるレオンハルトと公爵家の人々は、なんとかマリアベルーナに戻ってきてもらおうとあの手この手を画策するが マリアベルーナを巡って、各国で戦争が起こるかもしれない 完ぺきな淑女の上に、完ぺきなボディライン、完ぺきなお妃教育を持った聖女様は、自由に羽ばたいていく 今回も短編です 誰と結ばれるかは、ご想像にお任せします♡

春に狂(くる)う

転生新語
恋愛
 先輩と後輩、というだけの関係。後輩の少女の体を、私はホテルで時間を掛けて味わう。  小説家になろう、カクヨムに投稿しています。  小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5251id/  カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330654752443761

処理中です...