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第三章
戒心散花 7
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「よおアイリスちゃん、昨日はお疲れ様。
大丈夫だったかい?」
次の日の昼過ぎに、報酬を持った情報屋がアイリスの元に訪れていた。
「あ、情報屋さん。
大丈夫。殺してないよ」
普通は手を出されなかったかと言う意味で大丈夫かと訊くんだろうけど、アイリスに関しては相手を殺してないかとの確認の意味合いの方が強かった。
そしてそれをアイリス自身も理解しているのだから、側から見れば異常な会話が成立している。
「そかそか、それは良かった」
「つっても、半殺しにしてたけどな」
俺が横からそう口を挟むと、情報屋はあ、やっぱり? とへらへら笑っていた。
「まあアイリスちゃんに頼むおじさん方は大体痛めつけても問題ない奴ばっかだから大丈夫だ。
ところで、今度はお二人さんに仕事を依頼しにきたんだが」
「んだよ。また花関連か?」
俺の問いに情報屋はニヤリと頷く。
「その通りだ。
被害者は、昨日アイリスちゃんが相手してくれたローガンの浮気相手だよ」
「浮気相手?」
「ああ、あのおっさん、だいぶ派手に遊び回ってる事で有名だったからな。
ま、それに釘を刺す為にアイリスちゃんに昨日仕事を振ったんだけど……しかし、ちょっと厄介な事になったんだ」
「厄介?」
「そう。昨日の一晩、アイリスちゃんがローガンの相手をしてもらっている間に浮気相手の三人の女性が殺されたんだ。
因みに、現場付近に花は落ちてなかった」
「は? じゃあ今回は花のバケモノじゃねーんじゃねーの?」
これまで二件の花の事件を任されたが、最初の事件には犠牲者が出る度に花が落ちていたし、この前の事件も最初の一件だけは花が落ちていた。
花が出てこないなら、今回は普通の殺人事件なのでは?
俺の怪訝な顔に、情報屋はまあまあ、と話を続ける。
「今回の三人の被害者はまるで爆破された様に死体がバラバラだったらしい。
しかし、三件とも家の室内で起こった事件なのに、家の中の物は何も焼けた跡がないんだと。
まるで、その被害者の女性の体内だけが爆破したかの様だった、てさ。
それと、普通の爆薬なら本来はニトログリセリンなりナトリウムなり原料が特定できる筈なのに、それらの怪しい物質が一つも出てこないんだと。
だが、何故か恐らく爆発とは関係のないグラヤノトキシンという毒が検出されたんだ。
この毒は基本ツツジ科の植物に含まれている奴なんだと。
それと三人の死亡推定時刻は約一時間刻みで、やり方もほぼ同じ事から同一犯の仕業と警察は睨んでいるらしいが、俺からしてみれば十中八九花の怪異の仕業だと睨んでいる」
「ふーん、花の毒、ねぇ」
俺は情報屋から手渡された新聞を眺めながらそう呟いた。
「被害者女性は三人ともお互い面識はなし。
ただ、新聞には載っていないが三人ともローガンの浮気相手である事は裏が取れている為、そこら辺の怨恨だと睨んでいる。
普通に考えて一番怪しいのはローガンの奥さんだな」
「まあ、そりゃあそうだよな」
今朝アイリスとローガンのやり取りを隣の部屋で聞いていただけだったが、アイリスにまで手を出そうとしていたじいさんだ。ワンナイトラブも併せりゃ相当数浮気しているのだろう。
そんな男の嫁なら、怒るのも無理はない。
寧ろ、奥さんがいた事にも驚きだが。
「恐らくローガンと奥さんのところにももう警察が行ってるだろうが、しかし本当に花の怪奇現象のせいなら警察も証拠が掴めないだろ。
という訳で、後は頼んだぜ」
「はぁ、まあ今回は大分犯人も特定出来てるんならいいけどよ。
ただ、花の核には銃弾が効かねえ。
何で俺まで毎度こいつと組まされんだよ?」
「そりゃあ、まあ、お互いがお互いの見張りも兼ねて?」
「ふざけんなよ。別に俺が居なくてもいいだろ?」
そう、戦闘はほぼアイリスのみで十分な筈なんだ。
なのに何故俺までいつも駆り出されるのか。
「まあそう言わずに頼むよ。
一応報酬は二人分だしてんだからさ」
「……別に金がそこまで欲しい訳じゃねーけどよ」
「それじゃあ、今回の仕事の報酬は情報の方がいいか?
知りたいんだろ? じーさんの事」
「!!」
ボソリと俺にだけ聴こえる様に俺の耳元でそう呟いた後情報屋はニヤリと胡散臭く笑いをしたので俺は思わず殴りたくなったが、しかし情報が欲しくない訳ではなかった。
「何か教えてくれるっていうのかよ?」
「それはお前の頑張り次第だな。
ま、アイリスちゃんに人を殺させなければ教えてやるよ」
「……チッ。
分かったよ」
仕方なく舌打ち混じりに俺は返事をする。
まあ、じーさんの情報を知りたいのは確かなので、仕方なく言う事を聞く事にした。
大丈夫だったかい?」
次の日の昼過ぎに、報酬を持った情報屋がアイリスの元に訪れていた。
「あ、情報屋さん。
大丈夫。殺してないよ」
普通は手を出されなかったかと言う意味で大丈夫かと訊くんだろうけど、アイリスに関しては相手を殺してないかとの確認の意味合いの方が強かった。
そしてそれをアイリス自身も理解しているのだから、側から見れば異常な会話が成立している。
「そかそか、それは良かった」
「つっても、半殺しにしてたけどな」
俺が横からそう口を挟むと、情報屋はあ、やっぱり? とへらへら笑っていた。
「まあアイリスちゃんに頼むおじさん方は大体痛めつけても問題ない奴ばっかだから大丈夫だ。
ところで、今度はお二人さんに仕事を依頼しにきたんだが」
「んだよ。また花関連か?」
俺の問いに情報屋はニヤリと頷く。
「その通りだ。
被害者は、昨日アイリスちゃんが相手してくれたローガンの浮気相手だよ」
「浮気相手?」
「ああ、あのおっさん、だいぶ派手に遊び回ってる事で有名だったからな。
ま、それに釘を刺す為にアイリスちゃんに昨日仕事を振ったんだけど……しかし、ちょっと厄介な事になったんだ」
「厄介?」
「そう。昨日の一晩、アイリスちゃんがローガンの相手をしてもらっている間に浮気相手の三人の女性が殺されたんだ。
因みに、現場付近に花は落ちてなかった」
「は? じゃあ今回は花のバケモノじゃねーんじゃねーの?」
これまで二件の花の事件を任されたが、最初の事件には犠牲者が出る度に花が落ちていたし、この前の事件も最初の一件だけは花が落ちていた。
花が出てこないなら、今回は普通の殺人事件なのでは?
俺の怪訝な顔に、情報屋はまあまあ、と話を続ける。
「今回の三人の被害者はまるで爆破された様に死体がバラバラだったらしい。
しかし、三件とも家の室内で起こった事件なのに、家の中の物は何も焼けた跡がないんだと。
まるで、その被害者の女性の体内だけが爆破したかの様だった、てさ。
それと、普通の爆薬なら本来はニトログリセリンなりナトリウムなり原料が特定できる筈なのに、それらの怪しい物質が一つも出てこないんだと。
だが、何故か恐らく爆発とは関係のないグラヤノトキシンという毒が検出されたんだ。
この毒は基本ツツジ科の植物に含まれている奴なんだと。
それと三人の死亡推定時刻は約一時間刻みで、やり方もほぼ同じ事から同一犯の仕業と警察は睨んでいるらしいが、俺からしてみれば十中八九花の怪異の仕業だと睨んでいる」
「ふーん、花の毒、ねぇ」
俺は情報屋から手渡された新聞を眺めながらそう呟いた。
「被害者女性は三人ともお互い面識はなし。
ただ、新聞には載っていないが三人ともローガンの浮気相手である事は裏が取れている為、そこら辺の怨恨だと睨んでいる。
普通に考えて一番怪しいのはローガンの奥さんだな」
「まあ、そりゃあそうだよな」
今朝アイリスとローガンのやり取りを隣の部屋で聞いていただけだったが、アイリスにまで手を出そうとしていたじいさんだ。ワンナイトラブも併せりゃ相当数浮気しているのだろう。
そんな男の嫁なら、怒るのも無理はない。
寧ろ、奥さんがいた事にも驚きだが。
「恐らくローガンと奥さんのところにももう警察が行ってるだろうが、しかし本当に花の怪奇現象のせいなら警察も証拠が掴めないだろ。
という訳で、後は頼んだぜ」
「はぁ、まあ今回は大分犯人も特定出来てるんならいいけどよ。
ただ、花の核には銃弾が効かねえ。
何で俺まで毎度こいつと組まされんだよ?」
「そりゃあ、まあ、お互いがお互いの見張りも兼ねて?」
「ふざけんなよ。別に俺が居なくてもいいだろ?」
そう、戦闘はほぼアイリスのみで十分な筈なんだ。
なのに何故俺までいつも駆り出されるのか。
「まあそう言わずに頼むよ。
一応報酬は二人分だしてんだからさ」
「……別に金がそこまで欲しい訳じゃねーけどよ」
「それじゃあ、今回の仕事の報酬は情報の方がいいか?
知りたいんだろ? じーさんの事」
「!!」
ボソリと俺にだけ聴こえる様に俺の耳元でそう呟いた後情報屋はニヤリと胡散臭く笑いをしたので俺は思わず殴りたくなったが、しかし情報が欲しくない訳ではなかった。
「何か教えてくれるっていうのかよ?」
「それはお前の頑張り次第だな。
ま、アイリスちゃんに人を殺させなければ教えてやるよ」
「……チッ。
分かったよ」
仕方なく舌打ち混じりに俺は返事をする。
まあ、じーさんの情報を知りたいのは確かなので、仕方なく言う事を聞く事にした。
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