何れ人か神の花〜今日も殺し損ねた少女と一つ屋根の下で暮らしています〜

本田ゆき

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第三章

戒心散花 9

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 ◇



「さて、それじゃあまず被害者のお家に行ってみようかな」

 私は情報屋さんのメモを見ながら一人で街をウロウロと歩いていた。

 隣町ではあるのだが初めて来た場所なので、住所をスマホの地図アプリで検索しながら歩いていたのだ。

 改めて、スマホって凄い画期的なんだなと思う。

「えーと、ここを右に……」

「ランホアちゃんって言うんだ?
可愛いね」
「えへへぇ。ありがとうございマス♡
ねえオニイサン、ランホア、甘いものが食べたいデス!」

 すると、昨日私が相手していたローガンが、今度は私より更に小柄な女の子と並んで歩いていた。

 女の子は他所の国から来たばかりなのかカタコトな英語で喋っており、黒い髪を頭の上で二つのお団子にしていた。

 丈の短いピンクのチャイナ服を着てる事から、まあ恐らく中国人なのだろう。

 しかし、私はそんな女の子よりもローガンの方が気になった。

「昨日結構痛めつけたつもりだったけど、傷が完治してる……」

 確かにローガンの顔面を何発か殴ったはずなのに、青あざ一つ出来ていないなんて……?

 私が不思議そうにローガンを眺めていると、ローガンの方が私に気付いて一瞬で顔が強張った。

「……あっ!
えと、ランホアちゃん、それなら少し離れた所のカフェに行こうか。
スイーツが美味しいって有名なんだ」

「え! 本当デスか!?
行きたいデス♡」

 私と目が合ったローガンは私の顔を見るなりすぐに目を逸らしたかと思うと、隣の女の子にそう話しながらそそくさと退散しようとしていた。

 そんな様子を見た私はすかさず走って先回りしてローガン達の前に出る。

「こんにちはおじさん」
「ひっ!? な、なんでここに!?」
「? オニイサン、このひと誰デスか?」

 怯えるおじさんに構わず私は話を続けた。

「昨日あれだけ怪我を負わせたのに、大分傷の治りが早いんだね?
それに、浮気相手が一夜に三人も亡くなったのに、まだ女遊び出来るんだ?」

 それを聞いたローガンは顔を青ざめさせる。

「な、何で昨日の被害者が三人とも俺の浮気相手だって知ってるんだ!?
ま、まさか、君が殺したのか!?」
「昨日の夜ずっと一緒にいたのに、それは普通に考えて無理じゃない?
情報なら警察から教えて貰ったよ」
「け、警察? なら、お前は警察関連の人なのか!?」
「いや、私は警察なんかじゃないよ。
だからおじさんを逮捕する気もないけど。
おじさんは犯人に心当たりがないの?」
「し、知らない! 確かに警察も朝来たが、俺は彼女達が何で死んだかは何も知らないんだ!」
「えーと、何の話デス?」

 私とローガンの話に中国人っぽい女の子は首を傾げて問い掛けてきた。

「ん? この人が浮気した女の人達が昨日の夜に三人死んだんだよ」
「へ? 浮気? 死んだ?
それっテ……?」
「いやいや! 俺は関係ないから!
たまたま偶然だから!」

 困惑する中国人の女の子を安心させる為にローガンは笑いながらそう話す。

 しかし、女の子は既に引き攣った様な表情で何歩か後ずさっていた。

「アイリスちゃん! 根も葉もない事を言うのはやめてくれ!」
「根も葉もないとはまだ限らないよ。
それを聞きにきたんだし」
「そんな……うっ!」
 
 それから私はローガンの顔を思いっきり殴った。

「い、いきなり何するんだっ!?」
「いや、傷がすぐ治るのか確認したくて」
「だからっていきなり殴る事ないだろっ!?」

 私に殴られた左の頬を左手で抑えながらローガンは何やら叫んでいたが、私はそれを気にせずローガンの右手をグッと掴んでマジマジと眺めた。

「昨日ナイフで切りつけた傷もなくなってる。
何か凄い薬でも使ったの?」
「し、知らねぇよ! 確かに薬は塗って包帯も巻いたが、朝起きたら傷が治ってたんだ!!」
「朝起きたら……ふーん」

 寝てる間に傷が回復した、という事か……。
 しかし、普通の人間にしては回復が早すぎる。

 これも花の事件に関係あるのだろうか……?

「って、あれ? ランホアちゃんは?」
「うん? 今さっき気配を消して何処かに行ったよ」

 キョロキョロと先程の女の子を探しているローガンに私は普通に答えた。

「なっ!? 何で止めてくれなかったんだ!」
「だっておじさんに用があったから。
という訳で聞き込みに付き合ってね」
「そんな勝手に!?」

 狼狽えるローガンに私は質問する。

「被害者達の死が自分とは無関係といえ、真実は知りたくないの?」
「そ、それは……確かに気になるが……」
「なら着いてきて。
被害者の家に行くから」
「わ、分かったよ……」

 こうして、ローガンは渋々私に着いてきた。

 これで被害者宅をGoo○leマップで検索せずともスムーズに行く事が出来るなと私はそう思ったのだった。
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