何れ人か神の花〜今日も殺し損ねた少女と一つ屋根の下で暮らしています〜

本田ゆき

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第三章

戒心散花 16

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 ◇




「昨日はねー、仕事がお休みだからって、お母さん、朝からウキウキしててねー、楽しそうだったの。
ずっと一緒に遊びに付き合ってくれてねー。
だけど、夕飯作るって言って、キッチンに行ったんだけど、そしたらね、バーンって大きな音がなって、私、お母さんが料理に失敗したんだと思って、キッチンに行ったらね、そこら中、真っ赤で……怖くて、電話で、きゅーきゅーしゃ呼んだの。
お母さんが、料理失敗して、死んじゃったって」

 女の子は話してる途中にその光景を思い出したのか、声も震えており、手足もカタカタと震えだしていた。

「そっか……辛かったね、辛い事を思い出させてごめんね」

 警察官は申し訳なさそうな顔で謝っていた。

「全く、可哀想な話だな」

 ローガンがそう口を開くと、女の子はローガンを見てあ、と思い出した様に話し出した。

「お母さんのおしごとの人……」

「あ? 俺はお母さんの友達で、仕事は関係ないぞ?」

「でもお母さん、二つ仕事してたよ。
いつもはお昼に近くのデパートで働いてるんだけどね。
たまに夜に仕事だからって出掛けてた。
一度こっそり起きて見てたら、お母さん、おじさんと一緒に出掛けてたから、おじさんがお仕事の人なんでしょ?」

「は? あ、いや、まあ……」

 言い淀んでいるローガンを無視して、私は納得した様に呟いた。

「なるほどね、まあ確かにシングルマザーのお母さんならお金がいるだろうし、ちょうど金持ちの遊び人引っ掛ければ、楽にお金が稼げるし、本当、良い仕事だよね」

「俺はそんな風に見られてたって事か!?」

「じゃあ貴方はジェシカさんの事本気だったの?」

「いや、それは……」

「ならお互い様じゃない?」

「……」

 一度怒りかけたローガンは、私の問いに返せず最終的には黙ってしまった。

「それとね、お姉ちゃんにだけこっそり教えてあげる」

 そう言って、女の子は私を手招きした。

「何の話をしてるんだい?」
「おじさん達には内緒ー!」
「お、おじ……」

 警察官の男性はまだ若そうだが、そう言われてしょぼんと落ち込む。

 そんな事は露知らず、女の子は私に一枚の絵を見せてきた。

 その絵には丸いピンクで、花の様なものが描かれている。

「あのねー、昨日大きな音がする前にね、窓からきれいなお花が入ってきたの!」
「お花?」
「うん! こんな感じのー!
でもね、ふわふわ浮いてお母さんと一緒にキッチンのドアの方に行っちゃってね。
本当はもっと間近で見たかったんだけど、お姉ちゃん、探せる?」

「……そうだね、お姉ちゃんもその花に興味があるから、探してみようかな」

 私は女の子の絵を見ながら話を聞いた後、すぐ様キッチンへとやって来た。

 キッチンは少し爆発で卵が割れてたり粉物が舞っていたりと荒れていたが、やはり建物事態への被害はそこまで大きくなさそうだった。

「つまり、ピンポイントに人だけ狙ってる、と。
それに、被害は最小限……」

 つまり、他の人は巻き込まない様にしている。

 さっきの女の子の話からすると、恐らく昨日ジェシカは一日中家に居たのだろう。

 それなら、花をいつでも家に送って爆破出来ただろうに。

 しかし、爆発は娘と離れてキッチンに行った時に起こった……。

 それは偶然か、もしくは娘には被害が及ばない様にしたのか。

「あくまで殺したいのはジェシカさんだけだった、と」
「ちょ、君! 困るよ勝手に現場に入っちゃ!」

 私がキッチンで色々と物色していると、先程の警察官が慌てた様子でやって来た。

「全く、本来部外者の君は家にも入っちゃ駄目なんだけど……。
まあ私が子供相手がちょっと苦手でお願いした手前、悪くは言いませんが、うろつくのだけはやめて下さいね」
「あ、ごめんなさい。
道に迷ってしまったみたいで」
「こんな家の中で迷うなんておかしいでしょ?
もうすぐ親戚の方が来るそうなので、今日はもうお引き取り下さい」

 そうお礼を言われて私とローガンはナターシャの家を後にした。

「あ、後、女の子の世話ありがとうございました。
私一人では難しかったので、そこは助かりました」

「いえ、私も特に何もしてませんけど」
「ばいばーい、お姉ちゃん!」

 警察官の後ろから大きく手を振る女の子に、私も手を少し振り返して後ろに向き直った。

「お前、子供から好かれんのか?」
「どうだろう? 気にした事ないけど……でも、子供なら男の人よりは女の人の方に懐きやすいんじゃない?」
「まあ、それもそうか」

 それから私とローガンはそのまま三件目へと向かったのだった。

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