何れ人か神の花〜今日も殺し損ねた少女と一つ屋根の下で暮らしています〜

本田ゆき

文字の大きさ
50 / 82
第三章

戒心散花 17

しおりを挟む

 ◇


 三軒目のお宅に着く頃にはもう夕暮れ時で、私は内心今日の夕飯はどうしようかと考えつつ一軒家の家のインターホンを押した。

 するとその家から若い男性が一人出てきた。

「すみません、ちょっとサリーさんの事について聞きたいんですが」

 私がそう尋ねると、男はやつれた顔に光のない瞳で私達を見ていた。

「ああ、妻について、ですか?
君らは警察か何かでしょうか?」

「いえ、警察ではないですけど、一応犯人を探してる感じです」
「そうですか……質問には答えてもいいですけど、正直私も殆ど何も分からないのですが……。
それでも良ければ」

 男は力無くそう答えた。

「分かりました。それじゃあ早速……そのサリーさんって、どんな最期だったか見てましたか?」
「え?」
「お、お前! またストレートに訊きやがって!」

 ローガンはまたも慌てながらはあ、と盛大に溜め息を吐く。

「すいません、こいつが人の気も知らずに」

「いえ、大丈夫です。
それより、人の気も知らないのは貴方の方では?」

 男はニコリと優しそうな笑みを浮かべながら、しかし声色は冷たくそう言い放った。

「……え?」

 その様子に、ローガンは口を開けて間抜けな面で固まる。

「貴方、サリーの浮気相手ですよね?」

「な、何を急に言ってるんですか~。
そ、そんな訳……」

 それから誤解だと言い逃れようとしたローガンに、男は至極冷静に話出した。

「先月、たまたま仕事が早く終わって家に帰ったら、貴方と妻がソファで抱き合ってる姿が見えましてね。
あれから、妻と貴方を訴える準備は整えていたんですよ」

「な、何!?」
「てっきり今日は亡くなったサリーの事を弔いに来たのかとも思いましたが、どうやらそうでもないようですしね。
しかし、妻には困ったものです。折角心置きなく訴えておさらばしようとしたのに、まさかこんな形で逃げられるだなんて……」

 そう話す男の瞳には少し涙が溜まっていた。

「サリーさんの事、そんなに好きだったんですか?」

 私が尋ねると男はやや困った様に笑みを浮かべながら答えた。

「……いや、きっと、ただ悔しかっただけだよ。
それで、話を戻すとして、妻の亡くなった時の話なら、部屋の中で話そうか」

 男はそう言うと私とローガンを家へと招き入れた。

「妻が亡くなった時は、部屋に妻が一人で居た時だったよ。
急にボンッて大きな爆発音がしてね。
てっきり何か燃えたのかと思って駆けつけたら……そこには、妻と思わしき人がバラバラになっていた」

 そう話す男は最後の方でその光景を思い出したのか、青ざめた顔をしている。

「……。

それからすぐに警察や救急車を呼んだよ。
その後は警察に連れて行かれてすぐに事情聴取された。
それと、浮気の証拠を集めるために部屋に隠しカメラを仕掛けてて、それは無事だったから、そこに一部始終が写っているよ。
警察も見て参るほどショッキングな映像が平気なら見るかい?」

「はい。お願いします」

 男の質問に私がそう即答すると、男はまるで目を点にして驚かせた後再度尋ねてきた。

「お嬢さん、本気で言ってるのかい?
いや、まあ見せるのはいいんだが」
「はい。大丈夫です」

 すると、今度は私の隣からローガンが正気を疑うかの如く質問してくる。

「おい、人が爆発するシーンなんて、そんなスプラッタ映像見るのかよ?」
「嫌ならおじさんは見ないでいいよ。
私一人だけで見るから」
「……是非そうしてくれ」

 こうして、私は一人で映像を確認する事になった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。 カレンと晴人はその後、どうなる?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?

水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。 日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。 そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。 一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。 ◇小説家になろう、ベリーズカフェにも掲載中です! ◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています

悪役令嬢として断罪された聖女様は復讐する

青の雀
恋愛
公爵令嬢のマリアベルーナは、厳しい母の躾により、完ぺきな淑女として生まれ育つ。 両親は政略結婚で、父は母以外の女性を囲っていた。 母の死後1年も経たないうちに、その愛人を公爵家に入れ、同い年のリリアーヌが異母妹となった。 リリアーヌは、自分こそが公爵家の一人娘だと言わんばかりにわが物顔で振る舞いマリアベルーナに迷惑をかける。 マリアベルーナには、5歳の頃より婚約者がいて、第1王子のレオンハルト殿下も、次第にリリアーヌに魅了されてしまい、ついには婚約破棄されてしまう。 すべてを失ったマリアベルーナは悲しみのあまり、修道院へ自ら行く。 修道院で聖女様に覚醒して…… 大慌てになるレオンハルトと公爵家の人々は、なんとかマリアベルーナに戻ってきてもらおうとあの手この手を画策するが マリアベルーナを巡って、各国で戦争が起こるかもしれない 完ぺきな淑女の上に、完ぺきなボディライン、完ぺきなお妃教育を持った聖女様は、自由に羽ばたいていく 今回も短編です 誰と結ばれるかは、ご想像にお任せします♡

春に狂(くる)う

転生新語
恋愛
 先輩と後輩、というだけの関係。後輩の少女の体を、私はホテルで時間を掛けて味わう。  小説家になろう、カクヨムに投稿しています。  小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5251id/  カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330654752443761

処理中です...