息子が異世界から帰ってこないのでちょっと連れ戻しに行ってきます〜母・美智子の大冒険〜

本田ゆき

文字の大きさ
3 / 8

第3話

しおりを挟む
 それからアウルは道中のモンスターとやらを倒しつつ、私をマフィーまで連れて行ってくれた。

「本当にありがとうございました。
一人ではきっとここまで来れなかったわ」
「お役に立てて何よりです」

 こうして私は村へと入ったのだが、とあるお店のショーウィンドウを見て私は愕然とする。

「え、ええ!?」

 私は思わずショーウィンドウにバンと手をつけてまじまじと見やる。

「こ、これって……」

 ショーウィンドウに映っていた私の姿は、私が知っている姿では無かったのだ。

 見た目は恐らく10代後半くらいだろうか?
 髪や目の色は明るい茶色、というかオレンジに近い。
 髪の長さはセミロングぐらいで、ハーフサイドポニーになっている。
 そして今まで特に気にしていなかったが、格好も黒いワイシャツの様な服に赤いミニスカート、しかも、マントも羽織っている。
 腰に斜めがけのベルトをしており、黒のニーハイソックスに茶色のブーツという、中々現実世界ではした事のないファッションをしている。

 これが、私?
 いや、最早別人過ぎて言葉が出ない。
 私が若かった時にも似ていないし……

「どうされました?
あ、この服可愛いですね、それに魔力もあがるそうですよ」

 私はふとショーウィンドウの中にある服を見やる。
 確かに可愛らしいワンピースや装飾品が並んでいる。

 ……ん?魔力?

「あ、もしかしてタナカミチコさんは魔法使いの方ですか?」
「え、違います、しがない一般人です……」

 一体何を言っているのだろう?
 私には何が何だか訳が分からなかった。

(早く貴志を連れて現実に戻ろう……)

「えっと、それじゃあ私は人を探して来ますので、これで」
「そうですか、また何かありましたら声かけて下さいね」

 こうして私はアウルと別れ、貴志を探す事にした。

「……うーん、てっきりすぐに見つかると思っていたのだけれど」

 やはりここは海外の世界なのか、みんな色とりどりの髪や目の色をしており、黒髪黒目は逆に目立つと思ったのだが。

「もしかして、貴志も私の様に見た目が違う……?」

 そうかもしれない。だとしたら見ただけでは貴志がどれなのか見当がつかない。
 仕方なく私は道ゆく人に話しかけて見る事にした。

 先ずは話しかけやすそうな女性に声をかける。

「あ、すみません」
「旅の方ですね、是非こちらを持っていって下さい」

 私はそう急に何かの葉っぱを貰った。

「え?これは?」
「薬草です。体力が減った時に使って下さいね」

「え?あの……」

 そう言ってお姉さんは去っていった。

「薬草……?
ヨモギとか大麦若葉かしら?」

 私は訳が分からず取り敢えず背負っていたバッグにしまう。

「このバッグ、小柄に見えて中は大分広いのね」

 そう私はバッグの収納性に驚く。
 しかも、何やら硬貨の様な物まで出てきた。

「この国の通貨かしら?
こんなのまできちんとあるのね」

 知れば知るほど、ここが一体何なのかが分からなくなってくる。

「と、とにかくもっと情報を集めなきゃ!」

 そして私は村の子供に話をかけた。

「坊や、ちょっと聞きたい事があるの」
「何?魔王はね、この街からずーっと遠いところにいるんだよ!」
「ま、魔王?」
「この街にはまだ魔王が来てないけど、モンスターが現れるから街から出るなって言われてるんだー
お姉ちゃん、魔王を倒してきてよ!」
「え?倒す?」

 すると、目の前にピコンと何やら掲示板みたいな物が現れた。

 そこには、『はい』『いいえ』と書いてある。

「え?どういうこと?」

 そう私が子供に声をかけても、返事をしてくれない。さっきまであんなに喋っていたのに。
 しかし、これ何かで見た事ある様な……?

 はっと、美智子は思い出した。
 息子が家でやっていたゲームも、確かこんな感じだった。
 これは、つまり選択肢というやつなのだろうか?

 私は取り敢えず『いいえ』を指で押した。

「えー、お姉ちゃんのケチ!」

 突然そう子供に言われる。
 ケチと言われても、いきなり魔王?なんて倒せる訳が無い。

(そもそも魔王って何?昔嫌われていた職場の上司が魔王って裏で呼ばれてたけど、そんな感じの性格悪い人を倒しに行けってこと?)

 だとしたら、それは関わりたく無い。

「あの、私貴志っていう人を探してるんだけどね」

 私はそう子供に問いかける。

「タカシ?知らなーい」

 そうあっさりと否定された。

 仕方ない、他の人にも聞いていこう。

 私は続いてお店に入る。
 すると、そこの店主らしき男性に話しかけられた。

「やあお客さん、この村では初心者向けの武器を置いてるぜ」
「武、武器!?」

 私は驚いた。しかし、並んでいるものは剣や斧や弓など、普通の主婦では到底目にする事の無い物がズラリと並んでいた。

「あ、いいえ、ごめんなさい。
買い物にきた訳じゃ無いの。
貴志って言う人こちらに来なかったかしら?」

「タカシ?うーん、うちは別にお客さんの名前なんていちいち聞かないからね」

 言われてみれば確かにそうだ。

「あ、でも小一時間前くらいに少年が武器を買って隣町に行くって言っていたなあ」

「隣町へ……?」

 そういえば、さっきの子供も魔王は遠くにいると言っていたけれど、ここの世界は一体どれくらい大きいのだろうか?

「すみません、この国の地図ってないのかしら」

「いやーうちは武器屋なんで、地図は持ってないなあ」

 まあ、それもそうか。

「分かりました、ありがとうございます……
えーと、折角だから、この一番安い杖を買ってきます」

 本当はそのまま行こうとしたが、どうにも話を聞いただけで買い物せずには悪い気がした。
 かと言って、物騒な物は持ちたくないし、一番持ってても邪魔にならなさそうな杖を買う事にした。

「はい、150Gゴールドだ。
毎度あり!」

 私は鞄からお金を差し出して杖を手に取る。

「はあ、要らないものを買ってしまったわね」

 それから美智子はまた村を探索し始めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

妻を蔑ろにしていた結果。

下菊みこと
恋愛
愚かな夫が自業自得で後悔するだけ。妻は結果に満足しています。 主人公は愛人を囲っていた。愛人曰く妻は彼女に嫌がらせをしているらしい。そんな性悪な妻が、屋敷の最上階から身投げしようとしていると報告されて急いで妻のもとへ行く。 小説家になろう様でも投稿しています。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

そんなに義妹が大事なら、番は解消してあげます。さようなら。

雪葉
恋愛
貧しい子爵家の娘であるセルマは、ある日突然王国の使者から「あなたは我が国の竜人の番だ」と宣言され、竜人族の住まう国、ズーグへと連れて行かれることになる。しかし、連れて行かれた先でのセルマの扱いは散々なものだった。番であるはずのウィルフレッドには既に好きな相手がおり、終始冷たい態度を取られるのだ。セルマはそれでも頑張って彼と仲良くなろうとしたが、何もかもを否定されて終わってしまった。 その内、セルマはウィルフレッドとの番解消を考えるようになる。しかし、「竜人族からしか番関係は解消できない」と言われ、また絶望の中に叩き落とされそうになったその時──、セルマの前に、一人の手が差し伸べられるのであった。 *相手を大事にしなければ、そりゃあ見捨てられてもしょうがないよね。っていう当然の話。

処理中です...