息子が異世界から帰ってこないのでちょっと連れ戻しに行ってきます〜母・美智子の大冒険〜

本田ゆき

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第4話

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 私は取り敢えず村の色々な人に尋ね歩く事にした。

「タカシ?聞いたことないな」
「誰だいそれは?」
「すみません、分かりませんわ」

 しかし、誰に尋ねても貴志を知っている人はいない。

 ふとそこで美智子は気づいた。

(そもそも通りすがりの人にわざわざ名前なんて教えないわよね……)

 はあ、と落胆する。
 見た目を伝えた所で、今の貴志が私の知っている見た目の貴志とは限らないし、これでは八方塞がりである。

 すると、突然世界が音を立てて崩れ出した。

「え?えっ!?
何!?」

 私は訳が分からずギュッと目を瞑る。

「……かさん、た……さん」

 何だろう、声が聞こえる。

「……ん」

「田中さん、目が覚めましたか?」

 私は目をぱちりと開けると、ベッドから起き上がった。
 
「ご気分は大丈夫ですか?」

 そう隣にいる看護師に声をかけられる。

「えっと……あ、戻ってきたんですね、私」

 自分の手を見ると、やはり歳相応に皺がある。
 そしていつの間にか頭に被っていた機械は取られていた。
 看護師さんが丁寧にリストバンドも外してくれる。

「お疲れ様です。大丈夫でしたか?」

 そう医師に尋ねられた。

「あ、はい。何だか息子が前にやっていたゲームの様な世界で、ただ、息子をまだ見つけられて居なくて」

 私ははぁ、と溜め息をつく。

「いえ、あちらの世界に行けるだけ優秀です。
ところで、お身体にお変わりはないですか?」

「はい、今のところ何ともないです」
「それは良かった。
ただ、息子さんを探すのに、やっぱり一時間では足りなかった様ですね」

 私はこくんと頷いた。

「すみません、すぐに見つかると思っていました」
「いえ、他の実験でも、中々見つからない事の方が多いのです。
こちらとしては、田中さんにまた後日に引き続きお願いしたいのですが」

 私は少し考える。

「この方法が一番手っ取り早いんですよね?」
「そうですね、若しくは自然と目を覚ますのを待つしかないといった状態です。
それが明日になるか何年後になるかは分かりませんが」

 私はグッと手を握った。

「少しでも可能性があるなら、続けます」
「ありがとうございます。
では、またお待ちしています」

 私はそう言ってその部屋を後にした。
 帰る前に息子の病室に行く。
 そこには、ただ眠っているだけの様な、今にも目を覚ましそうな息子の姿があった。

 私は息子の手を取る。

「貴志、あんたの事、きっと探し出すからね」

 私はそうして家へと帰った。


 それから、旦那が帰ってきてからすぐに私は今日の事を全て話した。

「にわかに信じがたい事だらけなんだが、まず、貴志は本当に車に轢かれたんだな?」

「ええ、今も入院しているわ」
「それで、命に別状はないけど、その貴志の意識とやらが、変な世界へと行ってしまった……
そんな漫画みたいな話あるのか?」
「私も信じられないけど、でも、私が見た世界もそもそも信じられないのだけれど」

「うーん、頭に機械を被せてゲームの様な世界ってまるでVRみたいだな」
「VR?」

 私は聞き慣れない単語に首を傾げる。

「まあ、ゲームとか仮想世界へ行く為のものだよ、お前はそういうのには昔から疎かったしな」

 そう旦那は教えてくれた。

「しかし、何というか、現実味にかけるな。明日は会社も休みだし、貴志の様子も見たいし、病院へ一緒に行くか」

「そうね、貴方も話を聞いてくれたら助かるわ」

 こうして、夫婦揃って病院へと行く事になった。

「貴志……本当にただ眠っている様だ」

 寝ている息子を旦那はじっと見つめた。

 それから、昨日私が受けた説明を、再度旦那も交えて説明される。

「うーん、やっぱり医者に聞いても信じられない」
「そのお気持ちは十分に分かります。
しかし、こらはVRの様なゲームではありません、まごう事なき貴志君の意識の世界なのです」

「そうですか、分かりました。
それなら、俺もその世界とやらに入ります」

「ありがとうございます。
こちらも、人が多い方が助かりますので」

 こうして旦那も同意書にサインをして、リストバンドを巻かれて頭に機械を被る。

 すると、色々なメーターが動き出した。
 昨日は受ける側だったが、側から見るとこんな感じなのかと感心する。

「……んっ?ぐっ!」
「あなた?」

 まだ5分も経たないうちに旦那は目を見開いた。

「はぁはぁ、あれ?ここは現実だよな?」

 旦那はそう私を見て言った。

「ええ、まだ全然時間も経っていないわ」

 すると、医師が残念そうに声をかける。

「駄目でしたか……
先程も説明した様に、誰でも意識に入れる訳ではありません」
「つまり、俺にはその才能が無いという事か」
「言い方は悪いですけれど、そうですね、親族の方は比較的行きやすいけれど、かと言って一定数は行けない方もいます」

「……そうか、ちょっと行ってみたかったんだけどな」
「あなた、遊びじゃないんですよ!」

 旦那はそう残念そうに言ったので、私が注意する。

「いや、勿論貴志の為だよ、そうだとも」

 そう旦那は付け足したが、何とも怪しい。
 私と違って旦那はゲームが好きだからな。
 そのせいで貴志もゲームをやる様になったし、貴志の意識の世界もゲームっぽいのはその影響かもしれない。

「では、やはり私しか行けないんですね?」
「そうなりますね」

「分かりました。なら私がまた再度行ってきます」

 私はそう医師に伝えた。
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