息子が異世界から帰ってこないのでちょっと連れ戻しに行ってきます〜母・美智子の大冒険〜

本田ゆき

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第5話

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「二日連続になってしまいますが、お身体の方は大丈夫でしょうか?」
「はい、特に変わりはないし大丈夫です」

 医師に尋ねられ私はそう答える。

「分かりました。では、お気をつけて」
「じゃああなた、行ってくるわね」
「ああ、気をつけてな」

 こうして私は再び貴志の意識の世界へと足を踏み入れたのだ。




 目を開けると、前回の村の中に居た。
 一応近くのショーウィンドウのガラス越しに自分の姿を見やるも、やはり前回と同じ若い子の姿をしていた。

「やっぱり姿は変わったままなのね。
しかし、毎回同じ姿の様ね」

 さて、これからどうしようか?

 村の人にまた声をかける?
 しかし、前回で殆どの人たちに話かけているし、手掛かりらしい手掛かりはなかった。

「という事は、この村にはいない……?」

 そうなると、また別の所へ行かなければならないのか?

「でも、私一人じゃ移動するにも……ん?」

 私はそこで家の裏側にいる、何とも怪しげな女性を発見する。

 あの人にはまだ話しかけていないし、何か知っているのかも!

「あの、すみません」
「あら見つかっちゃった
私は魔導士のチャーム。あなたに魔法を授けましょう」
「え?え?」

 私は訳の分からない展開にびっくりする。

「っは!」

 そう怪しげな女性は杖を私に向けたかと思えば、私の体に何やら光った物が飛んでくる。
 びっくりして私は目を瞑ったが、特に何も起きない。

「さぁ、これで貴方はファイアの魔法を使えます。私は他の街にもいるので、是非探して見てください。
それでは」

「え?」

 そして、一瞬のうちに彼女は消えてしまった。

「え?魔法?ファイア?え?
何か変わったの?」

 私は自身をキョロキョロ見るも、特に変わった所はない。

「……まあいいか、それより貴志を探しに他の所へ行かないと」

 私は村の入り口に戻ると、そこにアウルが立っていた。

「あ、アウルさん、実はここには貴志がいないみたいで……
その、他の場所に行きたいのだけれど、どうすれば行けますか?」

 アウルに頼ってばかりで申し訳ないと思いつつも、そう尋ねる。
 他の人にも尋ねてみたのだが、みんな知らないしか言わないし……

「他の場所なら一番近いのは隣街ワラクワンタですかね?しかし地図がない事には、移動が難しいです」
「そう、ですよね」

 至極真っ当な事を言われる。
 しかし、お店を訪ねても地図は無かった。
 それにこの街のお店は武器屋と宿屋と服屋くらいしかなかったし、他の店は入れなかった。
 まるでハリボテの様だ。

「地図ってどこにあるのかしら?」
「確か、村の子供が地図を持っていると聞きましたよ」

 アウルは私にそう教えてくれた。

「そうなの?私、村の子供には聞いていなかったわ!ありがとう!」

 そして私はまた村の子供を訪ねにきた。

「ねえ、君この国の地図を持ってる?」
「持ってるけど」

 そう子供は地図を見せてきた。

「それね、実はおばちゃんそれが必要でね、その、うーんと」

 流石に子供相手にお金あげるからと言うのはどうなのだろうか?
 現実世界では怪しい事この上ない。
 かと言って、あの地図がないと進めないし……

「お姉ちゃん、魔王倒してくれるなら地図あげるよ」

「え?」

 するとまた選択肢が現れた。
 内容は前回と同じく『はい』か『いいえ』である。
 確か、前回は『いいえ』を選んでケチって言われたんだっけ?

 かと言って魔王を倒せなんて急に言われても……

「うぅ~ん」

 私は悩むも、やっぱり魔王を倒せる訳がないしと『いいえ』を押す。

「えー、お姉ちゃんのケチ!」

 やはりまたケチって言われてしまった。
 ちょっとショックである。

「あの、それ以外では何か交換とか、あ、私この杖持ってるんだけど、それと交換とか……」
「杖は別にいらないや。
お姉ちゃん、魔王を倒してくれるなら地図あげるよ」

 そしてまた『はい』『いいえ』の選択肢が現れる。

 つまり、これは『はい』を選ばないと終わらないということだろう。

 私は躊躇いながらも『はい』を選択する。

「本当!?
じゃあこれあげるね!」
 
 そう言って私は村の子供から地図を貰った。

「魔王を絶対倒してね!
約束だよ!」

「え、ええ」

 私は苦笑いで答える。
 私の目的は息子の貴志を探し出す事であり、魔王を倒しに行くわけではないのだが。

 しかし、何はともあれ無事に地図をゲットした。
 早速貰った地図を広げてみる。

「えーと、マフィーが……
あ、こんなに端っこなのね、ここって」

 そこにはまだまだ色々な村や街の名前が記されていた。
 それに、山や海、遺跡っぽい物が書かれているところもある。
 日本地図と違って、まるで本当に絵の様に描かれている為、そこがどんな所なのか絵を頼りに何となく想像する事が出来た。

「すぐ隣の街は、えーと、ワラ、クアンタ?だったかしら?」

 地名など全て英語で書かれている為、中々に読みづらい。

「ともかく、アウルにこの地図を渡せば、次の街まで行けるわね」

 私はそこでふと思う。
 村の子供が地図を持っていると知っているなら、アウルが取りに来ても良かったのでは?
 というか、アウルはこの街に入ってからずっと入り口から動いていない様な……?
 この村に用があると言っていたけれど、何だったのだろう?

「いや、それを気にし出したらキリがないし、恩人にそこまで深掘りしても駄目ね」

 私はそう気持ちを切り替えてアウルの元へと向かった。
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