息子が異世界から帰ってこないのでちょっと連れ戻しに行ってきます〜母・美智子の大冒険〜

本田ゆき

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第6話

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 アウルは相変わらず入り口に立っていた。

「あ、アウルさん。無事に地図を貰うことが出来ました。
ただ、魔王を倒して欲しいとお願いされてしまって」
「そうですか、それならまずは戦える様にならないとですね。
私が基本を教えます」
「え?戦う?基本?」

 私がまだ何も把握出来ていない中、アウルは一歩村から外へ出た。
 すると、ちょうど都合良く緑色のぽよぽよとした物体が現れたのだ。

「では、私が指示した通りに動いてください」
「え?どういう事?」

 しかし、何も分かっていない美智子を、アウルはその緑色の物体の前へと連れて行った。

「いいですか、まずはこちらの選択肢から『戦う』を選択します」

 アウルがそう言うと、私の前にまたあの選択肢が出てきた。

 選択肢には、『戦う』『魔法』『道具』『逃げる』と4つのワードが並んでいた。
 私は『逃げる』を選択したかったが、それを押すと、「今は選択することが出来ません」と出てきてしまう。
 因みに他のワードを押してもそのセリフが出てくる。

 つまり、『戦う』以外は選べないと言う事だ。
 私は仕方なく『戦う』を選択した。

 すると、私は腰に差していた短剣を取りその緑色の物体を切った。

 え、切った……?

 そもそも私短剣なんて持っていた事も知らなかったし、それに、選択肢で『戦う』を選択した途端、体が急に動いたのだ。
 まるで、自分の体とは思えない程、鮮やかな動きだった。

 しかし、緑色の物体は切られた所がすぐに回復し、私に体当たりしてきた。

「きゃあ!」

 地味に痛い、ぽよぽよしてるのに。
 何だろう、水に勢いよく飛び込んだ時にバチンッて体が叩かれるみたいな、そんな感じの痛みがする。

「今はまだ大丈夫ですが、HPが赤くなったら『道具』で回復アイテムを使った方がいいですよ
もしくは『魔法』でMPは消費しますが回復魔法を使うことも出来ます」

 そう後ろからアウルに言われる。
 HPって何?と思い周りを見ると、私の頭上に緑色の何かのゲージの様な物があった。
 その下には数字が書かれている。

「25/30?」
「因みに、その数字が0になったらゲームオーバーになりますので気をつけて下さい」

 やっぱり、ゲームオーバーなんて概念があるのか……
 それに、ゲームオーバーになったらどうなってしまうのだろう?

 私は少し怖くなった。
 元の世界へ帰れなくなるのでは?

 なら、絶対にゲームオーバーになってはいけない!

「続いて、『魔法』を選択してみて下さい」

 アウルがそう言うと、また私の前に選択肢が現れた。
 恐らく、他の選択肢を選んでもまた駄目なのだろう。
 私は渋々『魔法』を選択する。

「ここでは、貴方が覚えている魔法を選んで使う事が出来ます。
魔法には火、水、木、光、闇の5つの属性と回復魔法があります」

 何やら、急にまた難しい話になってきた。

「属性は敵によっては効きやすかったり効果がなかったりするので、選ぶ時は相手の属性も見て選びましょう」

「え、えーと……」

 『魔法』を選択した後、更に選択肢が出てきた。
 そこには良く分からないカタカナが並んでいる。
 それに、また良く分からない数字も出ている。

「この20/20とは?」
「それはMPと言って魔法を使う時に消費する数字です。消費した後はターン毎に少しずつ回復します」

「何だか難しいわ……」
「相手のスライムの上にHPと属性が書かれています。あのスライムは木属性なので、炎属性の魔法を使いましょう」

「炎属性、あ」

 私は『ファイア』の文字に目をやる。
 そう言えば、あの怪しげな女性が言っていたのは、これの事だったのか。

 私は『ファイア』を選択した。

 すると、私が持っていた杖から、ボウっと炎が出てきて、あの緑色の物体に当たった。

 そして緑色の物体のゲージが0になり、跡形もなく消えてしまった。

 すると、また私の前に選択肢が現れた。
 しかし、内容は選択肢ではなかった。

「スライムを倒した!
タナカミチコは500EXP手に入れた!
300G手に入れた!
レベルが1上がった!
攻撃力が1上がった!」

「え?何これ?」
「おめでとうございます。無事スライムを倒す事が出来ましたね。
モンスターを倒すと、報酬として経験値とGが手に入ります。経験値が貯まるとレベルが上がり強くなるので、積極的に倒しましょう!
でも、HPが少ない時や戦うのが面倒な時は『逃げる』を選択するのもありです」

「え、えーと」

 私は昔からゲームに疎いが、中々に難しそうだ。
 いつか慣れるだろうか……
 いや、何ゲームをマスターしようとしているの美智子!私は貴志を探しているのよ!

「と、取り敢えず、次の街まで行きましょうか」
「分かりました、では行きましょうか」

 そう私はアウルと次の街を目指し歩いていく。

「あの、所でアウルは何で私を助けてくれるの?」

 私はふと彼の目的を訊いてみる。

「それは、あなたを助ける事が私の役目だからです」

 と、アウルはそう返事をした。

「私を助ける為……?」

 それはどういう意味なのだろうか?
 しかし、イケメンな少年に助けるなんて言われたら、やっぱりドキドキしてしまう。

(私が後10、いや20位若ければ恋に落ちてしまいそうね)

 そう内心美智子は思った。
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