息子が異世界から帰ってこないのでちょっと連れ戻しに行ってきます〜母・美智子の大冒険〜

本田ゆき

文字の大きさ
7 / 8

第7話

しおりを挟む
「ではこれでタナカミチコさんも戦える様になりましたし、先へ進みましょうか」
「あ、やっぱり私これからも戦うのね」

 こうしてまたアウルと2人で隣の街を目指す事になった。

 しかし、道中は色んなモンスターとやらが出現する為、中々先へと進めない。

「しかも結構戦うのね、10歩でも歩けばすぐに出てくるなんて」
「魔王軍もそれだけ力を強めているという事です。これ以上モンスターが好き勝手しない様に倒さないとですね」

「うーん……」

 何だか、息子を探すだけの筈が、いつの間にか魔王退治に話がすり替わっている……
 正直魔王なんてどうでも良いのだが。

「まあ、途中で貴志を見つけて、現実に帰ればいいのだし、こうしないと話が進まないんでしょう、多分」

 そう美智子は自分に言い聞かせた。

「タナカミチコさん、そろそろ回復しないと、HPが危ないですよ」
「え?あ、本当だ」

 私は頭上のゲージを見ると、もう残りわずかになったせいかゲージの色が赤になっている。
 この世界だと、ダメージを喰らってもそのターンのみしか痛みがなかったから気付かなかった。
 もっと気にかけた方がいいんだろうな、気をつけよう。

 私は鞄から薬草を取り出した。

「これってどう使うの?」
「食べます」
「え?」

 食べるの?これを?

「そのまま?」
「そのままです」
「お腹壊したりとかしない?」
「え?お腹を壊すという状態異常はないですし、薬草なので毒状態にもなりませんよ」

 美智子はうーんと悩んだ。
 まあ、ここは現実世界ではないのだし、これを食べたからって、恐らく現実には影響しない……はず。
 それに、HPが0になってゲームオーバーになる方が腹痛より怖い。

「背に腹はかえられない……えい!」

 私はそう薬草をむしゃむしゃと食べる。
 うーん、特に味はしないけれど、何だか嫌だな。

 しかし、薬草を食べるとHPが半分以上回復した。

「この普通の薬草ではHPが20回復します」
「そうなのね、じゃあなるべく持っていた方がいいのね」

 こうしてまたアウルと進んでいき、やっと次の街へと着いた。

「ここがワラクワンタね」
「はい、寄っていきましょうか」

 私は辺りをキョロキョロと見回す。

「何だか、マフィより広いわね」
「マフィは小さな村ですが、ここは割と賑わっている街なので、人もお店も多いです」

「おーい、そこの旅のお方」

 私達に街のおじさんが話しかけてきた。

「道中お疲れなら宿に泊まっていきな!
一泊500Gだよ」

「いやいや、若い子と宿で泊まるなんて!」

 流石にそれは犯罪だろう。

「因みに宿屋に一晩泊まればHPとMPが全回復します」
「え、そうなの?」

 宿屋って回復する場所だったのね。
 私ってばとんだ誤解をして恥ずかしいわ!
 そう美智子は赤面する。

「あ、それと武器屋ではマフィより種類が増えてますよ?
寄って行きますか?」
「あ、いや、まずは貴志を探すわ」
「分かりました」

 私はまたアウルと別行動かと思いきや、今度はアウルも私の後をついてくる。

「あの、アウルも暫く自由にしていていいのよ?」
「え?」

 アウルは少し驚いた顔をする。

「……分かりました。それでは俺は門の近くにいますね」

 そうアウルは門の所まで戻っていった。

「あら、お店を見たりはしないのね」

 結構お店の情報とか詳しかったし、てっきり色々と見て回るものだと思っていたが、どうにも違うらしい。

「さ、私は貴志を探さなきゃ」

 そう気合を入れて街の人に話しかけようとした瞬間、また世界が音を立てて崩れ出した。

「あ、また!?
て事は、もう目覚めるのね」

 1時間というのも中々あっという間だなと美智子は思った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

妻を蔑ろにしていた結果。

下菊みこと
恋愛
愚かな夫が自業自得で後悔するだけ。妻は結果に満足しています。 主人公は愛人を囲っていた。愛人曰く妻は彼女に嫌がらせをしているらしい。そんな性悪な妻が、屋敷の最上階から身投げしようとしていると報告されて急いで妻のもとへ行く。 小説家になろう様でも投稿しています。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

そんなに義妹が大事なら、番は解消してあげます。さようなら。

雪葉
恋愛
貧しい子爵家の娘であるセルマは、ある日突然王国の使者から「あなたは我が国の竜人の番だ」と宣言され、竜人族の住まう国、ズーグへと連れて行かれることになる。しかし、連れて行かれた先でのセルマの扱いは散々なものだった。番であるはずのウィルフレッドには既に好きな相手がおり、終始冷たい態度を取られるのだ。セルマはそれでも頑張って彼と仲良くなろうとしたが、何もかもを否定されて終わってしまった。 その内、セルマはウィルフレッドとの番解消を考えるようになる。しかし、「竜人族からしか番関係は解消できない」と言われ、また絶望の中に叩き落とされそうになったその時──、セルマの前に、一人の手が差し伸べられるのであった。 *相手を大事にしなければ、そりゃあ見捨てられてもしょうがないよね。っていう当然の話。

処理中です...