この恋の先にあるもの

愛優

文字の大きさ
上 下
9 / 15
美沢彩

1

しおりを挟む
人生で苦労をしたことがなかった。中学生でアイドルデビューをして、高校生で初めてドラマに出て視聴率1位をとった。大学生になる頃には人気女優と名を知られお金にも困らず一生生きれるぐらいの収入源を手に入れた。私は前世どれだけいいことをしたのだろうかと思うほどに上手く行き過ぎている人生は周りにはうらやましがられた。小学生で亡くしている両親については記憶が無いのもあるが辛くはなかった。唯一の身内であったお婆ちゃんも私が高校で亡くなった。身内はいないことについてよく可哀想など言われるが、私自身特に悲しいと思わなかった。
「お疲れ様でした」
現場に声をかけて出ようとした時同じドラマの俳優が声掛けてくる。
「この後どう?」
そう言われ出そうになったため息を飲み込みいつもの笑顔を引き出す。
「明日も早いので…すいません」
少し残念そうにして
「そうだよね。ごめんね」
といって戻って行った。しつこくないのは凄い助かるが…。今度はため息をついて現場をでる。私のことが好きだという人には沢山あってきた。だが、私はそう思った人が一人もいない。何度も恋愛ドラマの主人公を演じたことがあるが理解出来たことがない。
「疲れた」
自分の車に乗り込みそう呟く。人に興味が無いのに芸能界に居るなど笑われてしまいそうだが私にとってこの道は自分が生きる手段でしかない。必要以上に関わりたくないのが本音だがそうもいかない現状につくづく嫌になる。そう思える人に出会えたらこの仕事もやめようと思いながら車を出した。
しおりを挟む

処理中です...