この恋の先にあるもの

愛優

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美沢彩

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性行為についてはよく知っていた。いつが初めてだったかそんなことは覚えていないが演技でも役者としては何度化したことがあった。私自身売り物で衣服と同じ。そう自分が誰よりも思っていたから。何もいらない。自分からはしたくなかったし、この先もする気はなかった。「最近演技に力入ってますね。何かあったんですか?」
マネージャーに声をかけられ窓の外へと目を向ける。今日の仕事は終わり駅までの道を送って貰っている最中だ。
「いつも通りですよ」
そう笑いつつ忙しなく動く人の流れを見る。夜だからかそれとも東京の中心だからか人は大勢いてその人たち全てが濃い桃色が包んでいる気がした。
「週刊誌が最近彩さんに力入れてるって聞いたので気おつけてくださいね」
「どうして?」
「ほら、彩さんスクープというスクープ出したことないじゃないですか?だからそういう色恋沙汰?みたいなを狙って貼りだそうって訳」
このタイミングでそう思う記者はどこの誰なのか少し興味が湧く。あながち君の勘は間違ってないと伝えてあげたい。そしたらその記者はなんというか。
「じゃあ、気おつけてくださいね」
「ありがとうございました」
駅の駐車場で別れ自分の車へと乗り込む。エプロンをつけ私の帰りを待つ彼女の姿が脳裏に浮かぶ。伊達にスクープ無しで数年表舞台にいる訳では無い。巻いて早く帰ろう。あの城はバレてはいけない。絶対に…
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