この恋の先にあるもの

美沢彩

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彼女の姿を思い守りたい対象がありそのために生きる人生は悪くなかった。けどそれは私の女優人生において悪種であることに薄々気が付いていた。普通の男性と出会い結婚して子供を産む。それは在り来りの人生であり成功の道と言っていいだろう。男女の恋愛は動物の子孫繁栄するための本能的なものだと聞いたことがあるがならば私たちの恋愛はなんだと言うのか。新しい感覚の恋愛に新鮮味を覚え新し目当ての一時的な感情なのか。
「彩さん？お仕事大変だったんですか？」
「あ、新しい映画が始まって数日帰れなくなるかもしれない」
「わぁ、それは大変ですね。少し寂しいですけど彩さんの映画楽しみにしてます！一緒に見ましょうね！」
そういって嘘偽りのない笑顔が返ってくる。それだけで私のさっきまでの考えがくだらなく思えてくる。いいじゃないか。好きな人と過ごし好きな人と会話ができるだけで。子供を産めなくても普通の道を歩めなくてもそれでも私は彼女をあの場所で手を差し出してしまったのだから。
「頑張ってくださいね！」
そういう彼女の笑顔が消えていくことに私は気がついていなかった。