前世の記憶を思い出したのはいいけれど、ここは異世界でもなければゲームの世界でもないでもないのに何かがおかしい

弓木しをり

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プロローグ

フィオリーナ6歳 4

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 目を開けたら、チームフィオリーナが大集結していた。

 っていうか、覗き込まれてる感じ?

 アマン夫人は何歳も老けた感じになっちゃって、グレースとニーナは泣きはらしたっぽくて、目は赤いし瞼とかパンパンになっちゃってる。レミーにいたっては、無精髭生えてきてませんか?

 せっかくの爽やかイケメンが台無し!

「……わたし……」

「座っていらしたし絨毯の上でしたけど、姫様は突然倒れられたのです」

 そう言って、また泣き出したのはニーナ。泣きすぎて身体中の水分無くなったりしないのかな。

「倒れられてから、三日もお目覚めにならなかったのですよ」

「……ごめんね、ばあや」

「いいえ、お目覚めになって安心致しましたよ。レオリオ先生がいらっしゃる時でようございました」

「先生? 先生いるの?」

 ぱちぱちとまばたきをするわたしに、乳母が頷いた。

 寝間着を替えて髪の毛を梳かしてもらって、顔を簡単に拭いたところで、レニーと入れ替わりでレオリオ先生がわたしの寝室に入ってきた。

 学究の徒であることを示す白いローブには学都で何を学んできたかを示す沢山の略綬がついている。四十歳にもなってないのに、これだけの量の略綬を授けられるのは珍しいらしい。そりゃあ、修了しないと貰えないものだもんね。

「やあやあ、フィオ姫。やっと起きたね」

「先生……地図のお勉強しようとしたら倒れちゃったみたいなの」

「そうみたいだね。寝言も変だったからね」

 乳母が座っていた椅子に先生が座った。乳母とニーナとグレースは寝室のドアに近くにまで下がってるのもいつものこと。

 それにしても寝言って。

 気を失って倒れてしかも寝言って、すっごい恥ずかしいじゃん!

 六歳で良かった。

「あまり聞かない寝言だからねぇ『逆ハー』、『ギャルゲー』、『強くてニューゲーム』っていうのは」

「⁉︎」

 乳母達に聞かれないように先生は小声だったけど、思わず硬直してしまったフィオリーナ六歳。思いっきり前世の黒歴史みたいなやつじゃないですか。

「地図を見て、何か思い出したかな?」

「思いだしてないよ。なんか頭の中でわたしの声が言ってたの」

「どんな? 覚えているかな」

「うーん……ようこそとか……サポートとか……」

 首を傾げて思い出そうとするけれど、靄がかかったみたいになってうまく思い出せない。

「まず、地図のどこをみたの?」

「真ん中!」

「海の?」

「うん、五つの島を見たの」

「ドクトリア王国だね、ここの国だ」

 その通りとばかりにわたしは頷こうとしたけれど、途中で止まってしまった。何故ならまだ教えてもらっていないからだ。

 どうして知っているのだろう。

 もちろん、わたしがドクトリア王国の王女であることは知っている。ミルクティー色の髪とぺリドットのような瞳は、ドクトリア王家の一員であることを示す色なのも知っている。

 乳母が教えてくれたからだ。

 でも地図上のどこに、この国があるかは教えてもらってない。

 そう、まだレオリオ先生にも教えてもらってないのだ。

 予習をしようと思ったのだから。

「わたし……知ってた」

 わたしの呟きに、レオリオ先生の目が細められた。

「うん、前世だね」

 ひゅっと息を飲んだわたしの頭を先生が撫でてくれる。

「とりあえず、先生からの提案を言うよ」

 わたしの頭をなでなでする先生の手をどうにもすることはできず、わたしはぎゅっと両手を握りしめた。

「お披露目の無期限延期を陛下に願い出るんだ。そのかわり、先生が後ろ盾になるから学徒を目指す」

「なんで?」

「学徒になったほうが、フィオ姫……君が生きやすくなるから、かな」
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