40歳88キロの私が、クールな天才医師と最高の溺愛家族を作るまで

1.人生最後のデートだと思っていたのに

これが運命の出会い？ １／パーティーに行かない？

（やっぱり、帰ろうかな……佐野さんには悪いけど……）

私は今、六本木にある有名な高級タワーマンションのエントランスにいる。
現在の時刻は14時15分。
待ち合わせ予定時刻は14時。
相手は、佐野さん。

「私と一緒に、パーティーに行かない？」

それがあの、チャットツールでの誘い。

「差出人間違えていらっしゃいませんか？」

佐野さんの周りには、佐野さん程ではなくとも、おしゃれで可愛い女の子はゴロゴロいる。
少なくとも、異業種交流会のような外部が主催するイベントに、佐野さんはそういう人種と一緒に行っているのは知っている。
そこで撮影された写真をSNS用に加工しているのは、私だから。

なので今回も、そういうパーティーだと思ったので、佐野さんが誘おうとした人間では私ではないと思った。ところが佐野さん

「とんでもない。間違いなく、森山さんに話しかけてるわよ」
「そうですか」

一瞬の沈黙の後。

「文字だからって、もう少し人間味がある話し方をした方がいいわよ」

と何故か佐野さんからアドバイスをされる。
業務で使うチャットツールで人間味もないだろう、と思ったが、私は角を立てたくなかったので

「ご指導ありがとうございます」

とだけ返す。
そして、今度は数分の沈黙。
これで終わりだろうか？
きっと気の迷いか、私をからかっただけかもしれない。機嫌が悪くなり、私との対話をやめたくなった可能性もあるが。

この出来事が、私の契約更新に関わる可能性は0ではないものの、今の私は十分なスキルは持っている。
だから、そこまで気にすることではないだろう。
……そう、自分を励ましながら、与えられた業務に戻ろうとしたその時、また佐野さんからメッセージが送られてきた。
ある場所の地図と共に。

「どうしても森山さんといっしょじゃないと嫌なの。来週の日曜日の14時に、この場所に来て欲しい。お願い、森山さん助けて」