40歳88キロの私が、クールな天才医師と最高の溺愛家族を作るまで

和泉杏咲

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1.人生最後のデートだと思っていたのに

運命の日 3/勘違いなんかしない

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あのタワマン婚活事件から今日まで、氷室さんと私が直接会ったのは2回。

1回目は、あの日私が写真を見せた最寄駅のカフェを案内した時。
Tシャツ、ジーンズというラフな格好に、質の良いジャケットを羽織った姿を待ち合わせ場所の駅で見かけた時は、あまりの神々しさに目が潰れるかと思った。

そんな私はと言うと……。

(……うわぁ……あそこまじで行きたくない……)

氷室さんのような人の近くにいても、それなりに許されるようにと……ファッションやメイクを動画でもう1度勉強をして、それなりに良さそうなものをECサイトで揃えた。
だけど、1度家で身につけてみた結果、思ってしまった。

(豚に真珠って言葉……最初に考えた人すごいわ……)

どうせ最初から何もかも違うのだから、いっそ割り切って今日を乗り越えようと考えた。
なので、買い揃えたものは封印し、いつも通りの格好であえて行くことにした。

(勘違いするな……これはデートではない……私は案内人……黒子なのだ……)

だが、今こうして氷室さんを見ると、無理してでもあの服を着てくれば良かったかもしれない、と後悔した。

「森山さんこんにちは」
「……こんにちは……」

私が、氷室さんにおそるおそる近づくと、どこからともなく

「え、あのイケメンあんなデブが彼女なの」
「だったら私もいけるかも?」

という声がちらほら聞こえてきた。
私は、その場で俯き、聴覚をシャットアウトする。
そして、脳内で

(彼女?おこがましい。これは、デートではない。断じて。勘違いなんかしない。そう、私は……)

と繰り返し念じた。

「……どうしました?森山さん」

(……よしっ!)

「さあ氷室様!目的地はこちらでございます。おほほほほ」

(今日は、氷室様御用達のカフェガイド!そう、私は雇われた身!であれば分不相応の格好も……許される!!)

「あ……はい……」

氷室さんの表情は、相変わらず変化はなかったが……。

(引いてる……氷室さん、絶対引いてる……)

きっと、氷室さんと会うのは今日で最後だろう。
今度こそ。
そんな風に思っていたので、今日さえ乗り切ればいいだろうと、思っていた。
というのに……。
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