40歳88キロの私が、クールな天才医師と最高の溺愛家族を作るまで

和泉杏咲

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3.信じられると、ようやく思えたのに……

初めての幸せ 1/私の日常

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一人暮らしの部屋というものは、自分にとっての居心地良さを最大限追求するものだろう。
人によっては、ピカピカに磨かれ、整理整頓された美しい部屋をキープし続けることはできるだろうが……ほとんどの人はいかにグータラするための城へと作るのではないだろうか。
ちなみに私は、断然グータラ派。

人をダメにするフカフカクッションも、しっかり予算組みをして無事購入。
ちょっと手を伸ばせばお菓子やお酒、服に漫画、ゲームなど、欲しいものがすぐ届くように配置にした、格安のネットショップで購入した家具。
そして……敷きっぱなしの布団。

それが……私、森山優花の日常。

しかし、グータラ屋敷だったはずの私の部屋は、今この時はどこかの雑誌から抜け出たかのように、おしゃれ部屋風に作り替えられている。
そんな部屋の変化の根源が、これからやって来てしまう。
残り、ほんの数分で。

(だ、大丈夫だろうか……)

今の私は、この部屋に引っ越してから1番、緊張していた。
綺麗に整えたローテーブルと座椅子の側で、私は正座をしながら、本日の流れをもう1度思い出す。

おもてなしの料理は……自炊の自信はなかったからデリバリーで頼んでおいた。
自分以外の人間には見られたくないものは、急いで契約したトランクルームに押し込め、100均で買ったおしゃれな雑貨でできる限り、飾りつけた。
……クリスマスでもないのに。

(……や……やばい……)

私は、何度も時計を見てはため息をついてしまう。
気を紛らわせようとつけたTVの内容は、全く入ってこない。


(断るべきだったか……)

数日前の自分の判断を、心の底から後悔をしていると、ピンポーンと無情のチャイムが鳴り響いた。
心臓が痛くなってきた。

(きっ……来てしまった……!)

急いで、インターホンの受話器を取る。

「も……もしもし?」

(違う!電話じゃないから!もしもしはおかしい!)

「……じゃなくて……どなたですか?」

言い直してたところで、もう遅い。
くすくすと、微かな笑い声の後に、待ち人は言う。

「もしもし?」
「……からかってますか?」
「からかってないから、早く入れてくれ」

急かされた私は、震える指で第1の扉を開けるスイッチを押す。
迎え入れた待ち人が来るまで、私は第2の扉……私の空間の入口の前に立つ。
足が、震えている。
心臓の音が、ますます激しくなる。

そして数分後。
もう一度チャイムが鳴る。
深呼吸を2回程してから、私は扉を開ける。
風が室内に入り込むと同時に、待ち人が私に覆い被さるように抱きしめてきた。

「ちょっ……樹さん……!こんなところで」
「会いたかった、優花」

そう言うと、私の待ち人……氷室樹さんは、優しいキスを私の唇に落とした。
それから、私の耳元に囁いてくる。

「今日は招いてくれて、ありがとう」

体の芯まで届く、低くて聴き心地が良い声を受け止め、腰が砕けそうになりながら……私はついさっきまで考えた、この後のプランを必死に思い出していた。
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