40歳88キロの私が、クールな天才医師と最高の溺愛家族を作るまで

和泉杏咲

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3.信じられると、ようやく思えたのに……

初めての幸せ 7/いつなら……?

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「外を歩くって……どこを?」
「君が行きたいところであれば、どこでも」

もちろん、必要であれば外出はする。
でも、極力は引きこもっていたい。
私は、そんな人種だ。
誰の目にも、自分を触れさせたくないと思っているから。
それは、こうして樹さんと一緒に楽しい話をしている今も、例外ではない。
さっきから、こちらをチラチラと何人かに見られている。
理由は間違いなく、樹さん。

「すごいイケメンがいる」
「ラッキー」

という女の子たちの微かな声が聞こえる。
それから女の子たちは、側にいる私を見てから、明らかな嫌悪感を抱くのだ。

「どうしてあんな奴が」

そう、言いたげな視線を、痛いほど感じる。
たかだか20人もいないカフェの中で、これだけ気になってしまうのだから。
これで樹さんを連れて、人気のデートスポットに行ってしまったら、ゾッとする……。
たくさんの視線に耐えられる気はしない。
せめて。

「外よりはまだ家の方が……」

まだ、他人の視線が一切入ってこない自宅デートの方が、ずっとハードルが低い。
私は本気でそう思ってた。
だから、提案したのだ。
ところが。
樹さんは、急に顔を真っ赤にした。

「あの……樹さん?」

樹さんは、口元に手を当てて、狼狽えた様子だった。

「ど、どうしたんですか?樹さん」

(どうしよう、具合悪くなったのか?)

「体調悪くなったなら、今日はもうお開きに」
「いえ、そうじゃなくて……」
「え?」
「つまり……家……ということは……」
「え?」
「つまり……そういうこと……で……いいんだよね?」
「そういう……こと……?」

樹さんが、宙を見ながら目線だけキョロキョロさせている。

(何をそんなに狼狽えているんだろう……?……って……ああ!)

樹さんのあまりの狼狽えっぷりと、自分の脳内に微かに残っていた少女漫画の知識のおかげで、自分が発した言葉の意味に……気づいてしまった。

「あ、あの樹さん!?そ、そんなつもりは……」

(これ、セクハラで訴えられる事案!?)

確かに、男女交際の中に体の関係を持つことが含まれていることは、私でも知っている。
だけど、まさか自分が誰かとそういう関係になるなんて思ってなかったので、完全に頭から抜けてしまっていた。
それこそ子供の頃、近所の友人に

「新しいゲーム買ったから一緒に家でやってかない?」

と誘うノリだったのだ。

(し、しまった……)

それから、お互い無言になり、お茶を啜っているだけの時間だけが過ぎていく。

(言葉と言うものは、無意識に言ってはいけないんだな……)

ということを教訓にしようと、私が決意した時に、樹さんがぼそりと

「……いつなら……?」

と遠慮がちに聞いて来た。
もう

「ゲームをしに行きたい」

というノリじゃないことは分かる。
私はまたぶわっと顔が熱くなってしまう。
次から次へと湧いてくる汗のせいで、べちょべちょに化粧が崩れてしまう。
そんな残念な顔を隠すかのように、小さく頷くしかできなかった。
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