社長、嫌いになってもいいですか?

和泉杏咲

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はじまりはお金から

2.感謝している

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普通大学生にここまでの権利を与えるのだろうか。
大学生というのは、せいぜい、ちょっとした書類整理とか、電話番をするとか、その程度の仕事くらいかな……とネットの情報を見てなんとなくが考えていた。
けれども実際に入ってみると、そのサービスの企画から取引先との打ち合わせまで、ありとあらゆる業務をこなすことになっていた。
といっても私がすることは、パソコン一つでできる資料作成くらいなのだが、その量が桁違い。大学のレポートの10倍は作成したのではないか……。
なぜならば、この会社に居るのは社長と、数名のITエンジニアくらいで、事務作業が出来る人間というものが誰一人としていなかったから。

最も驚いたのは、お給料の振り込み忘れがあったこと。
聞いていたはずの日付にお給料が振り込まれていなかった。
「どういうことですか」
と社長を問い詰める私に、
「あれ振り込んだはずなのに、おかしーな」
と 慌てふためきながら 書類を探している社長。
その様子を見て、反射的に
「私がやりましょうか」
と言ってしまった。
それからは、経理や 総務と言った、会社の中枢に係る業務までこなすことになってしまった私。もう少し大学生活を楽しむことができるバイトがあったのではないだろうかと何度も思った。

テニサーなど、 文化祭が盛り上がるような、サークルに入って、彼氏でも作り、旅行をしたり、同棲生活も挑戦するとか……そういった普通の大学生らしいことができたらどんなに良かったのか……と思ったことも、1度や2度ではない。

でも、このバイトのおかげで、お金にはそこそこ困らず、就職活動もそこそこのところなら内定が出たので、それについては感謝している。
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