31 / 164
2.推しカプのために
このヘタレに惚れるように仕向けて欲しい
しおりを挟む
「それで、私が呼ばれたという訳ですか、エドヴィン王子」
「あら、とても有能そうな子。あなたのような子は好きよ、私」
「やめてください、そんなことうちのリーゼ様に聞かれたら、発狂されます私」
リーゼの付き添いとして来ていたニーナを、あれこれ言い訳をつけて呼び出したエドヴィン王子は、アレクサンドラと引き合わせをした。
普通のメイドであれば、アレクサンドラの神々しさに一歩引くところだったが、ニーナは恐る様子を一切見せなかった。
それが、アレクサンドラの面白レーダーに引っかかったらしい。
「ぜひ、うちのメイドにならない?」
とアレクサンドラはニーナを誘ったが、秒でニーナは断った。
「1週間の婚約者試験延長戦ですか……」
「ああ。ここで彼女を堕とさなければ、後がない気がするのだが」
「あなたなら、その1週間でどうすれば、リーゼ様がそこの顔だけのヘタレに心惹かれるかわかるんじゃなくて?メイドならば、主人のことは朝の目覚めから夜の眠りまで知っているのが普通ですもの」
「…………はぁ…………」
確かに、ニーナは知っている。
朝から晩まで、ただひたすら「推し!好き!!」と言いながらエドヴィン王子とアレクサンドラを妄想した、ちょっとえっちい本の執筆をしていることは。
ただ、それは名誉のために言わなかった。一応、まだ今の職を失いたくなかったから。
「あの…………私が聞くのも変な話かもしれませんが……お二人は本当に、何もないのですか?」
「「あってたまるか」」
息がぴったり合った、即答だった。
「こんな、人の弱みを突き回すようなどSな女は、こっちから願い下げだ」
「あら、私の方こそ、たかが女ひとり口説くこともできず、ぐじぐじと泣いている男と恋なんて、死んでもごめんだわ」
今の会話を聞いたら、リーゼは何て言うのだろうかと、ニーナはふと考えてみた。
でも、あのリーゼのことだ。
「喧嘩しているのに息がぴったりだなんて、運命の相手としか思えない!」
と発言するだろうことは、ニーナには簡単に想像ついた。
だが、ニーナがこれから不労所得で生活という夢を叶えるかどうかも、この1週間にかかっているということになる。
「それで、私は一体何をすれば……?」
ニーナが尋ねると、アレクサンドラがこう言った。
「リーゼ様が、このヘタレに惚れるように仕向けて欲しいのよ。できれば、寝室で共寝してもいいと思わせられるくらいに」
「それは無理だと思います」
ニーナは再び即答した。
それは、主人の性癖をこの世の誰よりもよーく知っているから。
「あら、とても有能そうな子。あなたのような子は好きよ、私」
「やめてください、そんなことうちのリーゼ様に聞かれたら、発狂されます私」
リーゼの付き添いとして来ていたニーナを、あれこれ言い訳をつけて呼び出したエドヴィン王子は、アレクサンドラと引き合わせをした。
普通のメイドであれば、アレクサンドラの神々しさに一歩引くところだったが、ニーナは恐る様子を一切見せなかった。
それが、アレクサンドラの面白レーダーに引っかかったらしい。
「ぜひ、うちのメイドにならない?」
とアレクサンドラはニーナを誘ったが、秒でニーナは断った。
「1週間の婚約者試験延長戦ですか……」
「ああ。ここで彼女を堕とさなければ、後がない気がするのだが」
「あなたなら、その1週間でどうすれば、リーゼ様がそこの顔だけのヘタレに心惹かれるかわかるんじゃなくて?メイドならば、主人のことは朝の目覚めから夜の眠りまで知っているのが普通ですもの」
「…………はぁ…………」
確かに、ニーナは知っている。
朝から晩まで、ただひたすら「推し!好き!!」と言いながらエドヴィン王子とアレクサンドラを妄想した、ちょっとえっちい本の執筆をしていることは。
ただ、それは名誉のために言わなかった。一応、まだ今の職を失いたくなかったから。
「あの…………私が聞くのも変な話かもしれませんが……お二人は本当に、何もないのですか?」
「「あってたまるか」」
息がぴったり合った、即答だった。
「こんな、人の弱みを突き回すようなどSな女は、こっちから願い下げだ」
「あら、私の方こそ、たかが女ひとり口説くこともできず、ぐじぐじと泣いている男と恋なんて、死んでもごめんだわ」
今の会話を聞いたら、リーゼは何て言うのだろうかと、ニーナはふと考えてみた。
でも、あのリーゼのことだ。
「喧嘩しているのに息がぴったりだなんて、運命の相手としか思えない!」
と発言するだろうことは、ニーナには簡単に想像ついた。
だが、ニーナがこれから不労所得で生活という夢を叶えるかどうかも、この1週間にかかっているということになる。
「それで、私は一体何をすれば……?」
ニーナが尋ねると、アレクサンドラがこう言った。
「リーゼ様が、このヘタレに惚れるように仕向けて欲しいのよ。できれば、寝室で共寝してもいいと思わせられるくらいに」
「それは無理だと思います」
ニーナは再び即答した。
それは、主人の性癖をこの世の誰よりもよーく知っているから。
10
あなたにおすすめの小説
転生したら地味ダサ令嬢でしたが王子様に助けられて何故か執着されました
古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され
恋愛
皆様の応援のおかげでHOT女性向けランキング第7位獲得しました。
前世病弱だったニーナは転生したら周りから地味でダサいとバカにされる令嬢(もっとも平民)になっていた。「王女様とか公爵令嬢に転生したかった」と祖母に愚痴ったら叱られた。そんなニーナが祖母が死んで冒険者崩れに襲われた時に助けてくれたのが、ウィルと呼ばれる貴公子だった。
恋に落ちたニーナだが、平民の自分が二度と会うことはないだろうと思ったのも、束の間。魔法が使えることがバレて、晴れて貴族がいっぱいいる王立学園に入ることに!
しかし、そこにはウィルはいなかったけれど、何故か生徒会長ら高位貴族に絡まれて学園生活を送ることに……
見た目は地味ダサ、でも、行動力はピカ一の地味ダサ令嬢の巻き起こす波乱万丈学園恋愛物語の始まりです!?
小説家になろうでも公開しています。
第9回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作品
「白い結婚最高!」と喜んでいたのに、花の香りを纏った美形旦那様がなぜか私を溺愛してくる【完結】
清澄 セイ
恋愛
フィリア・マグシフォンは子爵令嬢らしからぬのんびりやの自由人。自然の中でぐうたらすることと、美味しいものを食べることが大好きな恋を知らないお子様。
そんな彼女も18歳となり、強烈な母親に婚約相手を選べと毎日のようにせっつかれるが、選び方など分からない。
「どちらにしようかな、天の神様の言う通り。はい、決めた!」
こんな具合に決めた相手が、なんと偶然にもフィリアより先に結婚の申し込みをしてきたのだ。相手は王都から遠く離れた場所に膨大な領地を有する辺境伯の一人息子で、顔を合わせる前からフィリアに「これは白い結婚だ」と失礼な手紙を送りつけてくる癖者。
けれど、彼女にとってはこの上ない条件の相手だった。
「白い結婚?王都から離れた田舎?全部全部、最高だわ!」
夫となるオズベルトにはある秘密があり、それゆえ女性不信で態度も酷い。しかも彼は「結婚相手はサイコロで適当に決めただけ」と、面と向かってフィリアに言い放つが。
「まぁ、偶然!私も、そんな感じで選びました!」
彼女には、まったく通用しなかった。
「なぁ、フィリア。僕は君をもっと知りたいと……」
「好きなお肉の種類ですか?やっぱり牛でしょうか!」
「い、いや。そうではなく……」
呆気なくフィリアに初恋(?)をしてしまった拗らせ男は、鈍感な妻に不器用ながらも愛を伝えるが、彼女はそんなことは夢にも思わず。
──旦那様が真実の愛を見つけたらさくっと離婚すればいい。それまでは田舎ライフをエンジョイするのよ!
と、呑気に蟻の巣をつついて暮らしているのだった。
※他サイトにも掲載中。
【完結】騎士団長の旦那様は小さくて年下な私がお好みではないようです
大森 樹
恋愛
貧乏令嬢のヴィヴィアンヌと公爵家の嫡男で騎士団長のランドルフは、お互いの親の思惑によって結婚が決まった。
「俺は子どもみたいな女は好きではない」
ヴィヴィアンヌは十八歳で、ランドルフは三十歳。
ヴィヴィアンヌは背が低く、ランドルフは背が高い。
ヴィヴィアンヌは貧乏で、ランドルフは金持ち。
何もかもが違う二人。彼の好みの女性とは真逆のヴィヴィアンヌだったが、お金の恩があるためなんとか彼の妻になろうと奮闘する。そんな中ランドルフはぶっきらぼうで冷たいが、とろこどころに優しさを見せてきて……!?
貧乏令嬢×不器用な騎士の年の差ラブストーリーです。必ずハッピーエンドにします。
【完結】初恋相手に失恋したので社交から距離を置いて、慎ましく観察眼を磨いていたのですが
藍生蕗
恋愛
子供の頃、一目惚れした相手から素気無い態度で振られてしまったリエラは、異性に好意を寄せる自信を無くしてしまっていた。
しかし貴族令嬢として十八歳は適齢期。
いつまでも家でくすぶっている妹へと、兄が持ち込んだお見合いに応じる事にした。しかしその相手には既に非公式ながらも恋人がいたようで、リエラは衆目の場で醜聞に巻き込まれてしまう。
※ 本編は4万字くらいのお話です
※ 他のサイトでも公開してます
※ 女性の立場が弱い世界観です。苦手な方はご注意下さい。
※ ご都合主義
※ 性格の悪い腹黒王子が出ます(不快注意!)
※ 6/19 HOTランキング7位! 10位以内初めてなので嬉しいです、ありがとうございます。゚(゚´ω`゚)゚。
→同日2位! 書いてて良かった! ありがとうございます(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
年増令嬢と記憶喪失
くきの助
恋愛
「お前みたいな年増に迫られても気持ち悪いだけなんだよ!」
そう言って思い切りローズを突き飛ばしてきたのは今日夫となったばかりのエリックである。
ちなみにベッドに座っていただけで迫ってはいない。
「吐き気がする!」と言いながら自室の扉を音を立てて開けて出ていった。
年増か……仕方がない……。
なぜなら彼は5才も年下。加えて付き合いの長い年下の恋人がいるのだから。
次の日事故で頭を強く打ち記憶が混濁したのを記憶喪失と間違われた。
なんとか誤解と言おうとするも、今までとは違う彼の態度になかなか言い出せず……
【完結】何故こうなったのでしょう? きれいな姉を押しのけブスな私が王子様の婚約者!!!
りまり
恋愛
きれいなお姉さまが最優先される実家で、ひっそりと別宅で生活していた。
食事も自分で用意しなければならないぐらい私は差別されていたのだ。
だから毎日アルバイトしてお金を稼いだ。
食べるものや着る物を買うために……パン屋さんで働かせてもらった。
パン屋さんは家の事情を知っていて、毎日余ったパンをくれたのでそれは感謝している。
そんな時お姉さまはこの国の第一王子さまに恋をしてしまった。
王子さまに自分を売り込むために、私は王子付きの侍女にされてしまったのだ。
そんなの自分でしろ!!!!!
記憶喪失の私はギルマス(強面)に拾われました【バレンタインSS投下】
かのこkanoko
恋愛
記憶喪失の私が強面のギルドマスターに拾われました。
名前も年齢も住んでた町も覚えてません。
ただ、ギルマスは何だか私のストライクゾーンな気がするんですが。
プロット無しで始める異世界ゆるゆるラブコメになる予定の話です。
小説家になろう様にも公開してます。
【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました
ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。
名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。
ええ。私は今非常に困惑しております。
私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。
...あの腹黒が現れるまでは。
『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。
個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる