36 / 164
3.リーゼVSそれぞれ
リーゼの優先事項
しおりを挟む
「まあ!とても素敵なお部屋ね……」
「そう……ですねぇ……」
リーゼとニーナが案内されたのは、リーゼが1週間滞在する部屋。
キラキラと輝くシャンデリアに、天蓋付きのベッド、細かい細工が施されたレースがふんだんに使われたクッションやカーテン。そして裸足で歩いても心地良さそうなふんわりなカーペット。
ニーナはここが、将来の王妃のために作られた特別な部屋であることを、嫌と言う程聞かされていた。
飾られている花が、アレクサンドラに似合うような大きな薔薇ではなく、小さくともその可憐さに心惹かれるような、ピンクな紫のスイートピーだったことからも、明らかにリーゼのために用意された部屋だと言うことは分かる。
普通の令嬢……いや、女であれば、こんな部屋を用意されたらコロリと落ちるところだろう。
一生、死ぬまでここに住みたいと考える令嬢は、この世界に大勢いるはずだ。
だが、リーゼの優先事項はそれではなかった。
「ねえ、ニーナ」
「……何でしょう?」
「ここで彫刻を掘ったら、木屑で部屋が汚れてしまうわよね」
「そうですね。カーペットについたらなかなか掃除しても取れないかと」
「そうなると、次、ここを使う方に大変失礼よね」
「……かも、しれませんね」
もっとも、エドヴィン王子にとっては、この部屋をリーゼ以外が使うことなど想像したくないだろうが。
「ねえニーナ。あなたはどんな部屋に泊まるの?」
「どんなって、普通の使用人部屋ですが……」
と、そこまで話して気づいた。
リーゼは、自分の屋敷でも、自分の部屋にいるより使用人部屋にいることの方が多かった。
例え使用人が
「リーゼ様!おやめください!」
「ここはリーゼ様のような方が来るような場所ではありません」
と優しく、だがしかしはっきりと拒絶をしたとしても、このお嬢様は聞かない。
「だって、こちらのお部屋の方が、作業で汚しても目立たないんですもの」
リーゼにとって、自分の居心地など二の次以上。
いかに創作活動がしやすい環境かそうじゃないか。
それしか、興味がないのだ。
「ま、まさかリーゼ様……」
「お部屋、交代してくれな」
「できるわけないでしょう」
あなた本当に貴族ですか?とニーナは声に出したかったが、無理やり唾と一緒に言葉を飲み込んだ。
「そう……ですねぇ……」
リーゼとニーナが案内されたのは、リーゼが1週間滞在する部屋。
キラキラと輝くシャンデリアに、天蓋付きのベッド、細かい細工が施されたレースがふんだんに使われたクッションやカーテン。そして裸足で歩いても心地良さそうなふんわりなカーペット。
ニーナはここが、将来の王妃のために作られた特別な部屋であることを、嫌と言う程聞かされていた。
飾られている花が、アレクサンドラに似合うような大きな薔薇ではなく、小さくともその可憐さに心惹かれるような、ピンクな紫のスイートピーだったことからも、明らかにリーゼのために用意された部屋だと言うことは分かる。
普通の令嬢……いや、女であれば、こんな部屋を用意されたらコロリと落ちるところだろう。
一生、死ぬまでここに住みたいと考える令嬢は、この世界に大勢いるはずだ。
だが、リーゼの優先事項はそれではなかった。
「ねえ、ニーナ」
「……何でしょう?」
「ここで彫刻を掘ったら、木屑で部屋が汚れてしまうわよね」
「そうですね。カーペットについたらなかなか掃除しても取れないかと」
「そうなると、次、ここを使う方に大変失礼よね」
「……かも、しれませんね」
もっとも、エドヴィン王子にとっては、この部屋をリーゼ以外が使うことなど想像したくないだろうが。
「ねえニーナ。あなたはどんな部屋に泊まるの?」
「どんなって、普通の使用人部屋ですが……」
と、そこまで話して気づいた。
リーゼは、自分の屋敷でも、自分の部屋にいるより使用人部屋にいることの方が多かった。
例え使用人が
「リーゼ様!おやめください!」
「ここはリーゼ様のような方が来るような場所ではありません」
と優しく、だがしかしはっきりと拒絶をしたとしても、このお嬢様は聞かない。
「だって、こちらのお部屋の方が、作業で汚しても目立たないんですもの」
リーゼにとって、自分の居心地など二の次以上。
いかに創作活動がしやすい環境かそうじゃないか。
それしか、興味がないのだ。
「ま、まさかリーゼ様……」
「お部屋、交代してくれな」
「できるわけないでしょう」
あなた本当に貴族ですか?とニーナは声に出したかったが、無理やり唾と一緒に言葉を飲み込んだ。
1
あなたにおすすめの小説
転生したら地味ダサ令嬢でしたが王子様に助けられて何故か執着されました
古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され
恋愛
皆様の応援のおかげでHOT女性向けランキング第7位獲得しました。
前世病弱だったニーナは転生したら周りから地味でダサいとバカにされる令嬢(もっとも平民)になっていた。「王女様とか公爵令嬢に転生したかった」と祖母に愚痴ったら叱られた。そんなニーナが祖母が死んで冒険者崩れに襲われた時に助けてくれたのが、ウィルと呼ばれる貴公子だった。
恋に落ちたニーナだが、平民の自分が二度と会うことはないだろうと思ったのも、束の間。魔法が使えることがバレて、晴れて貴族がいっぱいいる王立学園に入ることに!
しかし、そこにはウィルはいなかったけれど、何故か生徒会長ら高位貴族に絡まれて学園生活を送ることに……
見た目は地味ダサ、でも、行動力はピカ一の地味ダサ令嬢の巻き起こす波乱万丈学園恋愛物語の始まりです!?
小説家になろうでも公開しています。
第9回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作品
【完結】騎士団長の旦那様は小さくて年下な私がお好みではないようです
大森 樹
恋愛
貧乏令嬢のヴィヴィアンヌと公爵家の嫡男で騎士団長のランドルフは、お互いの親の思惑によって結婚が決まった。
「俺は子どもみたいな女は好きではない」
ヴィヴィアンヌは十八歳で、ランドルフは三十歳。
ヴィヴィアンヌは背が低く、ランドルフは背が高い。
ヴィヴィアンヌは貧乏で、ランドルフは金持ち。
何もかもが違う二人。彼の好みの女性とは真逆のヴィヴィアンヌだったが、お金の恩があるためなんとか彼の妻になろうと奮闘する。そんな中ランドルフはぶっきらぼうで冷たいが、とろこどころに優しさを見せてきて……!?
貧乏令嬢×不器用な騎士の年の差ラブストーリーです。必ずハッピーエンドにします。
【完結】初恋相手に失恋したので社交から距離を置いて、慎ましく観察眼を磨いていたのですが
藍生蕗
恋愛
子供の頃、一目惚れした相手から素気無い態度で振られてしまったリエラは、異性に好意を寄せる自信を無くしてしまっていた。
しかし貴族令嬢として十八歳は適齢期。
いつまでも家でくすぶっている妹へと、兄が持ち込んだお見合いに応じる事にした。しかしその相手には既に非公式ながらも恋人がいたようで、リエラは衆目の場で醜聞に巻き込まれてしまう。
※ 本編は4万字くらいのお話です
※ 他のサイトでも公開してます
※ 女性の立場が弱い世界観です。苦手な方はご注意下さい。
※ ご都合主義
※ 性格の悪い腹黒王子が出ます(不快注意!)
※ 6/19 HOTランキング7位! 10位以内初めてなので嬉しいです、ありがとうございます。゚(゚´ω`゚)゚。
→同日2位! 書いてて良かった! ありがとうございます(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
年増令嬢と記憶喪失
くきの助
恋愛
「お前みたいな年増に迫られても気持ち悪いだけなんだよ!」
そう言って思い切りローズを突き飛ばしてきたのは今日夫となったばかりのエリックである。
ちなみにベッドに座っていただけで迫ってはいない。
「吐き気がする!」と言いながら自室の扉を音を立てて開けて出ていった。
年増か……仕方がない……。
なぜなら彼は5才も年下。加えて付き合いの長い年下の恋人がいるのだから。
次の日事故で頭を強く打ち記憶が混濁したのを記憶喪失と間違われた。
なんとか誤解と言おうとするも、今までとは違う彼の態度になかなか言い出せず……
【完結】何故こうなったのでしょう? きれいな姉を押しのけブスな私が王子様の婚約者!!!
りまり
恋愛
きれいなお姉さまが最優先される実家で、ひっそりと別宅で生活していた。
食事も自分で用意しなければならないぐらい私は差別されていたのだ。
だから毎日アルバイトしてお金を稼いだ。
食べるものや着る物を買うために……パン屋さんで働かせてもらった。
パン屋さんは家の事情を知っていて、毎日余ったパンをくれたのでそれは感謝している。
そんな時お姉さまはこの国の第一王子さまに恋をしてしまった。
王子さまに自分を売り込むために、私は王子付きの侍女にされてしまったのだ。
そんなの自分でしろ!!!!!
記憶喪失の私はギルマス(強面)に拾われました【バレンタインSS投下】
かのこkanoko
恋愛
記憶喪失の私が強面のギルドマスターに拾われました。
名前も年齢も住んでた町も覚えてません。
ただ、ギルマスは何だか私のストライクゾーンな気がするんですが。
プロット無しで始める異世界ゆるゆるラブコメになる予定の話です。
小説家になろう様にも公開してます。
転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎
水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。
もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。
振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!!
え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!?
でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!?
と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう!
前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい!
だからこっちに熱い眼差しを送らないで!
答えられないんです!
これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。
または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。
小説家になろうでも投稿してます。
こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。
婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました
Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。
順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。
特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。
そんなアメリアに対し、オスカーは…
とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる