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3.リーゼVSそれぞれ

だからこそ惜しいと思いました!

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 オードブルは、野菜のテリーヌと一口サイズのチーズタルト。
 さっぱりした塩味で、するっとリーゼの口に入っていった。
 スープはクリーミーなじゃがいものポタージュ。クルトンのサクサク感がより食欲を掻き立てる。
 パンは少し固めに焼かれたものが配られた。ポタージュに浸して食べるのをリーゼは気に入った。
 メインディッシュは魚と肉、両方出された。
 まず魚はオーソドックス白身魚のソテー。ソースはレモンのいい香りが漂うバターソース。濃厚なバターの味とレモンの爽やかさがミックスされ、これもリーゼのお気に入りとなった。
 口直しのレモンシャーベットを食べた後は、お待ちかねのお肉。
 レアな部分が瑞々しく光るローストビーフ。マスタードソースの辛味でしまった味だった。
 そしてラストは紅茶と共に出されたラズベリーのケーキ。チョコレートスポンジの甘味とラズベリーソースの酸味はリーゼの好みだった。
 それらを頬張っている間のリーゼは、ひたすらニコニコ楽しそうで、エドヴィン王子はほっとした。
 きっと、これなら褒めてもらえるだろう。そして自分への好感度も上がっていることだろう。
 でも、エドヴィンはリーゼから確かな言葉が欲しかった。

「どうかな?」

 エドヴィン王子は、緊張の面持ちでリーゼに尋ねた。
 リーゼがにっこりと微笑み返したので、エドヴィン王子の心臓が激しく鼓動した。

「とても素晴らしいものでした」
「お気に召していただけたなら良かったです」

 そして、アレクサンドラがぎろりとエドヴィン王子を見つめているのを知らないフリをしながら、用意していた

「俺の婚約者になれば」

 のセリフを言おうとした時だった。

「でも、だからこそ惜しいと思いました!」
「惜しい……とは?」
「はい。味はとっても素晴らしく、ぜひレシピを教えていただきたいところなのですが、見た目が……」
「み、見た目?」
「はい、そうです。例えば……」

 リーゼはそう言うと、一体いつ持ち込んだのかわからないスケッチブックを広げて

「例えばこのデザートであれば……」

 と、スケッチに装飾や形のアイディアを次々と描き出した。
 それがあまりにも素晴らしいものだったので、ローストビーフの給仕のためだけにきていた、エドヴィンご自慢のシェフもすっかり感心してしまい

「他にはどうすれば良いでしょうか?」

 リーゼに教えを乞うようになった。
 そうして、食後1時間程、リーゼの食にまつわる装飾論の講義を聞いたシェフは満足げに帰っていき、本題を話すきっかけを失ったエドヴィン王子は肩を落としたのだった。
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