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4.なぜ彼女を好きになったのか

今日からしばらく、殿下はいなくなってください

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「ニーナ?その、うすい本?どーじんっていうのは、面白いの?」

 アレクサンドラが、目をキラキラさせながら聞いてくる。
 
「あー……ええと……」

 ニーナは、リーゼから受けた同人誌の説明はこ難しくてすっかり忘れてしまったが、薄い本の説明ははっきりと覚えていた。
 でも、それは例え口が裂けても言ってはいけない。
 リーゼが、エドヴィン王子とアレクサンドラのベッドシーンを妄想して鼻血を出していたなんてことを教えたら、すでに床に転がりメソメソ涙を流しかけているエドヴィン王子が昇天するのではないか、とすら思った。
 それはいけない。
 将来の不労所得のために、この王子の命だけは、守らなくてはいけない。

「……忘れました」
「あら。じゃあリーゼ様にお聞きすれば」
「やめたほうがいいかと、絶対」
「そ、そう……?」

 ニーナは全力をこめた頷きをアレクサンドラに見せた。
 そわそわと、興味を失っていないことがわかるアレクサンドラの表情から目を逸らしながら、ふとニーナは、今の会話にこそリーゼをエドヴィン王子が攻略する方法があるのではないかと考えた。

「そうか……そうすればきっと……」
「ニーナ?どうしましたの?」
「うん……そうだ……それしかない……」
「ちょっと!何か思いついたのなら私にも教えなさないよ!」

 アレクサンドラが、ニーナの服の襟をぐいっと掴み、ブンブンニーナの体を揺らしたので、馬車揺れみたいな具合の悪さがニーナに襲いかかりそうになった。

「わかりました、わかりましたから!手!離してください!」

 アレクサンドラがぱっとニーナから手を離すと、ニーナはげほげほと咳き込んだ。
それからすぐ、ニーナはエドヴィン王子に近づき、肩をぽんっと叩いた。
 普通なら不敬な行為だが、今は許して欲しいと、ニーナは思った。
 何故なら、突破口を見つけたのだから。

「王子。吉報です。どうにかできる方法、見つけました」
「ほ、本当か!?」

 犬のしっぽの幻覚が、エドヴィン王子のお尻の辺りに見えたニーナは、ごほんと咳払いをしてからこう言った。

「今日からしばらく、殿下はいなくなってください」
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