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第1章 聖女の口付けは誰のもの?
決戦
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1日目に仲間たちから煽られた不安の割に、クラウンの仕事は順調に進んだ。
3日連続の3連勝。しかも無傷。そしてその場での、チャンピオンへの挑戦宣言。
「明後日だ」
宣言終了後、控室に入ってしばらく待たされていたが、入って来た男は端的にそう言った。
明後日。つまり、5日目に女王への挑戦ができる。あとは盛大に負ければ、成功報酬で金貨10枚だ。
「分かったよ」
「おう。楽しみにしてるぜ……実の所、今のチャンピオンは不満もあってよ。アンタなら文句なしだ」
後半を小声でささやいた後、男は適当に別れの言葉を言って部屋を去った。
ここ3日のファイトマネーはずっと右肩上がりで、もしかしたら普通に戦ってるだけでも返済できたかもしれない。
まあ情報屋が去った今、クイームですらこの地下格闘技場への伝手は無かっただろうし、無為な仮定か。
脚本試合の件は、正直誰が把握していて誰が把握していないのかを把握していないので、基本的にスカウトにやって来た男以外には話さないようにしている。
◆◇◆◇
時間は過ぎて挑戦当日。
控室にいたクラウンは、もはや担当になったのかと思うぐらい同じ男から、万事問題無しと太鼓判を押され、まさに今日チャンピオンと戦う。
「まずは挑戦者から入場して、その後にチャンピオン。そしてルールの確認をして、ゴングが鳴ったら始まりだ」
「これまでに何回もやって来たよ。まあ、挑戦者とチャンピオンの順番は初耳だったけど」
そうやって軽い雑談をしていると、控室にもう一人別の人間がやってくる。
「ちょっと外して」
「ナ、ナリヌイさん。なんで……」
「外して」
「は、はい!」
それは1日目の時点でクラウンに声をかけてきたナンパ男だった。
「あんた、ナリヌイってんだね。しかも大物だったり?」
「はは、俺なんてまだまだ木っ端みたいなものさ……さて、例の件だ。君が負けた後は、この控室に待機してるんだ。報酬はその時に払いに来るから」
「分かった」
「じゃあ、行ってきな。一応言っとくけど、脚本試合が丸わかりって事にはならない様、ある程度演出ってのを頼むよ」
「お、おう!」
クラウンは自分がそういった小器用な立ち回りに向いていないことを自覚していた。
しかし仕事は仕事である。最大限努力するように気合を入れて、クラウンは入場ゲートに向かった。
そうやって気合を入れるから加減を間違えるのだという事に、クラウンは気付いていなかった。
◆◇◆◇
「青コーナーに入場するのは挑戦者、クラウン・ルールー! 5日前に突如現れたスーパールーキーです! その日の内に3戦3勝し、その場でチャンピオンに宣戦布告しました! そして最短ルートでの挑戦が、今日、幕を開けるゥウー!!」
観客の興奮を煽るかのように、大声でぶち上げられるクラウンの戦績。
それを聞いて観客たちは『コイツならば』と気炎を上げる。
ここまで期待されていると、裏切ること前提の自分に罪悪感を覚えてしまうが、まあ仕事なのでしょうがない。
「赤コーナーに入場するのはチャンピオン、スティーシー・フラン! 人気実力ともに絶対的であった前女王を打ち倒し、見事王位簒奪! しかし前女王が圧倒的過ぎたために、その実力には疑問が残ると人気は微妙! 挑戦者を打ち倒し、自らの実力を証明することは出来るのかァアー!?」
煽りの演説ですら若干疑義を呈されているあたり、このスティーシーなる人物の不遇が伺える。
クラウンほどではないにせよ鍛え抜かれた肉体と、確かに息づく女性的な魅力の同居は人気者になっておかしくなビジュアルのはずだが、やはり『卑怯な手を使った』と言うのはそれだけ大きいマイナスイメージなのか。
だとしたら脚本試合なんぞやってる現状は卑怯の上塗りだと思うのだが、それでいいのだろうか。
まあ彼女が八百長について知っているのかをクラウンは知らないので、何とも言えないが。
「武器の使用は認められません! それ以外は何でもあり! 敗北条件は、降参、戦闘不能、そして絶命! 運命のゴングが今……鳴ったァ!」
会場にゴングの音が鳴り響くと同時に、その音を追い越さんとばかりに襲い来るスティーシー。
その一挙手一投足を、クラウンは冷めた目でとらえていた。
なんだ、チャンピオンとは言うが、これまでの奴と何も変わらないな、と。
確かにその動きには、ある程度洗練されたものがある。滑らかでスピーディー、そして合理的だ。
だが、それだけだ。所詮は只人の域を出ない、単なる人間業。
魔法使いとの隔絶は、そんなものでは埋まらない。
「打つ! 撃つ! チャンピオンの打撃の連打が止まらないィイイ! 挑戦者、一歩も動けません!」
スティーシーの連撃を見極め、着弾の直前に魔力で防ぐ。
当然ノーダメージだが、一応効いたような感じでよろけておく。
それを見てスティーシーの顔つきが変わった。
勝利の確信ではなく、もっと別。奇妙な違和感によるものだ。
スティーシーは、これでも結構な実力者だ。今の実力に至るまで、何百何千と人を殴って来た。
だから、殴った時にダメージがどう効いて、人体がどう反応するのかを熟知している。
その経験からは完全に逸脱したよろけ方。
個人差、といってしまえばそれまでかもしれないが……同時に、積み重ねた経験が警鐘を鳴らす。
だからスティーシーは距離を取った。違和感の正体を確かめるために。
一方、クラウンは梯子を外された気分だ。
絶好のチャンスを演出したハズなのに、そこに乗ってくることなく距離を取られた。
これを受けて、クラウンはこう考えた。
そうか、確かにあのまま決めきったら、八百長がバレバレか。
ちゃんと戦って、その上で敗北するという筋書きが欲しいのだ。初動で一気に叩き潰した、では不意打ちの印象が強いだろう。
「……来ないのかい? じゃあ、こっちから行くよ」
ずん、と無造作に一歩踏み出す。
間合いの管理、制空権の削り合い。そんな武道武術の概念を嘲笑うかの如く、悠々自適に前へ歩く。
そしてスティーシーの間合いに侵入した瞬間。
スティーシーの右足が一閃される。
前蹴り。
狙いは鳩尾。
緊張感をいや増す間合いの詰め方から、爆発するかのようなその一撃。更に体重移動のタイミングを狙いすますことで回避も許さない。
前蹴りのリーチの長さも相まって、その一撃はまさに『狙撃』。
クラウンの鳩尾に狙撃が突き刺さり、その体が後方にたたらを踏む。
そのついでに、ぐしゃり。
「~~~~~ッ!!!」
前蹴りの為に伸び切ったスティーシーの脛に振り下ろされた手刀。
硬いはずの前面部をまるで意に介さず、関節を1つ増やした。
激痛とバランスの崩壊により、スティーシーがダウンする。
それを見たクラウンも、ここはダウンのしどころかと察して地面に寝転ぶ。
スティーシーの間合いに侵入してからここまで、0.5秒も無い刹那の攻防。
その結果は、世にも珍しいダブルダウン。
実の所、前蹴りを魔力で防御していたクラウンはほとんどノーダメージだったのだが、時間が無さ過ぎて手加減が雑になってしまった結果、スティーシーの足を盛大にへし折ってしまった。
これでも結構力を抜いたつもりだったのだが。
地面に寝転んだ体制のまま、スティーシーを観察する。
激痛に悶えているようだが、その全身からはまだまだ闘志が立ち上っている。折れた足をどうにかしてくれれば、彼女はまだ戦闘可能だろう。
さて、そうなるといかにして自分を戦闘不能に演出するかだ。
幸い、先程の攻防は魔法使いの視点で見てもなかなかの早さだった。戦闘に疎い一般人が遠目に見た限りでは、その詳細な内訳は判別できないだろう。
となると、演出さえできればこちらが負けたことに出来る。
視界の端で、審判がやって来たことを察知する。
あまり時間は無い様だ。これで行けるかは微妙だが、とりあえずやってみることにして、クラウンは魔法を発動する。
「大丈夫か?」
その審判の声掛けに返答せず、うつぶせにうずくまったままで、小刻みに震えつつ、透明な液体を口からぶちまける。
そして、震えを止め、力を抜いて地面に寝そべった。
それを見た審判は。
「勝負あり! 挑戦者、戦闘不能!」
◆◇◆◇
担架で運びこまれた控室にてケロッと復活したクラウンは、今回の自分は相当うまくやったのではないか? と自画自賛に浸っていた。
まああの審判が八百長について知っていた可能性もあったので、その場合はただただ忖度されたという事になるのだが。
「邪魔するよ」
そんな控室に入って来た男、ナリヌイ。
そして見覚えのない女性が1人連れ立っていた。
「ちゃんと持ってきたんだろうね?」
「ああ、勿論さ。だが、その前にちょっと話がある」
「話?」
少し長くなるのか、ナリヌイは適当な所に腰かけた。
「今日の試合、お前、めちゃくちゃ手加減してただろ」
「勿論。ちょっと力んじゃったけどね」
「おいおい、ちょっと力んで足折ったのかよ」
「折れた方が悪いってもんさ」
「違いない。なぁ、具体的にどれぐらい加減してた?」
「全力を100とすると……2か3って所かね」
「マジかよ」
「大マジさ」
それを聞いて苦笑するかのような声を上げた後、ナリヌイは続ける。
「本題だ。お前、俺らと一緒に来ないか?」
「……勧誘かい?」
「そうだ。お前ほどの実力者、その辺にほっぽっとくのは勿体ねぇ。ウチに来てその力、存分に振るって見ないか?」
その言葉を聞いて、数秒沈黙した後。
「悪いね。私はもう売約済みなんだ。今いるところは居心地も良いし、可愛い妹もいるしね」
「ちぇっ、そーかよ。やっぱ有望株は大抵そうだもんなぁ」
ほれ、といつもの麻袋を渡してきた。
なのでいつも通りに中身を検める。
「あん?」
「なんだよ?」
問いかけを無視して、テーブルに中身をぶちまける。
その中身は金貨10枚。今日は負けたのはファイトマネーが無いのは事前に聞いていたが。
「何か文句でも?」
「ああ、大ありだね。何だいこりゃ。ぺディール金貨じゃないか」
この大陸にて現在一般的に流通している通貨は、『グレゴリオ金貨』と呼ばれる物である。
これは4代前の教皇、グレゴリオ1世が発案・発行した通貨で、戦国時代での扱いに特化した高い金含有率を特徴とする貨幣である。当初は金貨だけだったのだが、教国の勢力拡大と共に使用可能な地域が増え、より細かい単位の貨幣が求められたことから、銀貨と銅貨も同じデザインで発行されている。
そのため特に断りを入れない限り、金貨、銀貨、銅貨といったら『グレゴリオ貨幣の』という暗黙の了解がある。
さて、今回クラウンに渡された『ぺディール金貨』と言うのは、主に大陸南方で使われていた通貨である。
教国の勢力圏は勿論、今や連盟の加盟国でも使えるグレゴリオ金貨だが、それでも教国の敵対勢力は存在するし、そういう勢力のお膝元ではグレゴリオ金貨は使えない。使えたとしても、支払いは割高になる。
そんなときに主に使われるのがこのぺディール金貨な訳だが、当然加盟国であるこの国においてはほとんど用無しの金貨だ。
おまけに金含有率もグレゴリオ金貨と比較して低く、地金としての価値さえ劣る。
金貨であることは間違いない。
だが、これでは支払いには足りない。
「俺は『金貨』としか言ってないぜ? なのに文句を言われちゃあ、契約違反ってもんだ」
「ふーむなるほど、確かにその通り。で? このぺディール金貨を使える店ってのは、この国にあるのかい?」
「あるともさ。両替商だ」
つまり、無いという事だ。
「わかったわかった。なるほどね、つまりアンタらは、この私を舐めてるって訳だ」
「その通り。さ、わかったらとっとと失せろ」
「有難い」
そう言ってのけたクラウンに対して、ナリヌイは怪訝な顔をした。
一見して、文脈が繋がっていないからだ。
「いやね? 私としても、正直気が引けるのさ。相手が筋を通すって言うのに、こっちが無法に振舞うのはね。そっちが無法をしてくれるんなら、こっちも気兼ねなく無法にやれる」
「ほーう? おい」
ナリヌイと連れ立ってきた女が、間に入って構える。
その全身から立ち上るのは、間違いなく魔力。
「そいつは……」
「前の女王さ。闘技者としては死んだも同然のこいつを、うちの主催者は慈悲深くも拾い上げ、世話してやってるって訳だ」
なるほど。魔力を使えるのであれば、そりゃあ絶対的な強さぐらいはあるだろう。徒競走に乗馬で出場する様なものだ。
「ま、そもそも勧誘を断った時点で、お前は抹殺対象でしかないんだけどな。やれ」
前女王がクラウンに襲い掛かる。
魔力を纏い、人知を超えた身体能力を得て、その上で凄まじい技量を有する前女王。300を超える戦績からなる重厚な経験の引き出しは、いかなる状況でも動揺しない鋼の精神力に繋がる。
そして前女王は、首から上を失って死んだ。
「……は?」
「なんだ。ただの魔力持ちか」
適当に手首を振って、血糊を払うクラウン。それを信じられないとばかりに見るナリヌイ。
「残念だったね。魔力があるだけの半端者じゃあ、魔法使いは倒せないよ」
「ま、魔法使い……?」
魔法使い。人類種のハイエンド。教会が崇め集める、使徒。
「じゃ、皆殺しにして……金貨10枚だけ貰おうかな。その前に、これは返しておくよ」
クラウンの弾いたぺディール金貨で眉間に風穴を開けたナリヌイは、自らが死んだ自覚すらなく息絶えた。
3日連続の3連勝。しかも無傷。そしてその場での、チャンピオンへの挑戦宣言。
「明後日だ」
宣言終了後、控室に入ってしばらく待たされていたが、入って来た男は端的にそう言った。
明後日。つまり、5日目に女王への挑戦ができる。あとは盛大に負ければ、成功報酬で金貨10枚だ。
「分かったよ」
「おう。楽しみにしてるぜ……実の所、今のチャンピオンは不満もあってよ。アンタなら文句なしだ」
後半を小声でささやいた後、男は適当に別れの言葉を言って部屋を去った。
ここ3日のファイトマネーはずっと右肩上がりで、もしかしたら普通に戦ってるだけでも返済できたかもしれない。
まあ情報屋が去った今、クイームですらこの地下格闘技場への伝手は無かっただろうし、無為な仮定か。
脚本試合の件は、正直誰が把握していて誰が把握していないのかを把握していないので、基本的にスカウトにやって来た男以外には話さないようにしている。
◆◇◆◇
時間は過ぎて挑戦当日。
控室にいたクラウンは、もはや担当になったのかと思うぐらい同じ男から、万事問題無しと太鼓判を押され、まさに今日チャンピオンと戦う。
「まずは挑戦者から入場して、その後にチャンピオン。そしてルールの確認をして、ゴングが鳴ったら始まりだ」
「これまでに何回もやって来たよ。まあ、挑戦者とチャンピオンの順番は初耳だったけど」
そうやって軽い雑談をしていると、控室にもう一人別の人間がやってくる。
「ちょっと外して」
「ナ、ナリヌイさん。なんで……」
「外して」
「は、はい!」
それは1日目の時点でクラウンに声をかけてきたナンパ男だった。
「あんた、ナリヌイってんだね。しかも大物だったり?」
「はは、俺なんてまだまだ木っ端みたいなものさ……さて、例の件だ。君が負けた後は、この控室に待機してるんだ。報酬はその時に払いに来るから」
「分かった」
「じゃあ、行ってきな。一応言っとくけど、脚本試合が丸わかりって事にはならない様、ある程度演出ってのを頼むよ」
「お、おう!」
クラウンは自分がそういった小器用な立ち回りに向いていないことを自覚していた。
しかし仕事は仕事である。最大限努力するように気合を入れて、クラウンは入場ゲートに向かった。
そうやって気合を入れるから加減を間違えるのだという事に、クラウンは気付いていなかった。
◆◇◆◇
「青コーナーに入場するのは挑戦者、クラウン・ルールー! 5日前に突如現れたスーパールーキーです! その日の内に3戦3勝し、その場でチャンピオンに宣戦布告しました! そして最短ルートでの挑戦が、今日、幕を開けるゥウー!!」
観客の興奮を煽るかのように、大声でぶち上げられるクラウンの戦績。
それを聞いて観客たちは『コイツならば』と気炎を上げる。
ここまで期待されていると、裏切ること前提の自分に罪悪感を覚えてしまうが、まあ仕事なのでしょうがない。
「赤コーナーに入場するのはチャンピオン、スティーシー・フラン! 人気実力ともに絶対的であった前女王を打ち倒し、見事王位簒奪! しかし前女王が圧倒的過ぎたために、その実力には疑問が残ると人気は微妙! 挑戦者を打ち倒し、自らの実力を証明することは出来るのかァアー!?」
煽りの演説ですら若干疑義を呈されているあたり、このスティーシーなる人物の不遇が伺える。
クラウンほどではないにせよ鍛え抜かれた肉体と、確かに息づく女性的な魅力の同居は人気者になっておかしくなビジュアルのはずだが、やはり『卑怯な手を使った』と言うのはそれだけ大きいマイナスイメージなのか。
だとしたら脚本試合なんぞやってる現状は卑怯の上塗りだと思うのだが、それでいいのだろうか。
まあ彼女が八百長について知っているのかをクラウンは知らないので、何とも言えないが。
「武器の使用は認められません! それ以外は何でもあり! 敗北条件は、降参、戦闘不能、そして絶命! 運命のゴングが今……鳴ったァ!」
会場にゴングの音が鳴り響くと同時に、その音を追い越さんとばかりに襲い来るスティーシー。
その一挙手一投足を、クラウンは冷めた目でとらえていた。
なんだ、チャンピオンとは言うが、これまでの奴と何も変わらないな、と。
確かにその動きには、ある程度洗練されたものがある。滑らかでスピーディー、そして合理的だ。
だが、それだけだ。所詮は只人の域を出ない、単なる人間業。
魔法使いとの隔絶は、そんなものでは埋まらない。
「打つ! 撃つ! チャンピオンの打撃の連打が止まらないィイイ! 挑戦者、一歩も動けません!」
スティーシーの連撃を見極め、着弾の直前に魔力で防ぐ。
当然ノーダメージだが、一応効いたような感じでよろけておく。
それを見てスティーシーの顔つきが変わった。
勝利の確信ではなく、もっと別。奇妙な違和感によるものだ。
スティーシーは、これでも結構な実力者だ。今の実力に至るまで、何百何千と人を殴って来た。
だから、殴った時にダメージがどう効いて、人体がどう反応するのかを熟知している。
その経験からは完全に逸脱したよろけ方。
個人差、といってしまえばそれまでかもしれないが……同時に、積み重ねた経験が警鐘を鳴らす。
だからスティーシーは距離を取った。違和感の正体を確かめるために。
一方、クラウンは梯子を外された気分だ。
絶好のチャンスを演出したハズなのに、そこに乗ってくることなく距離を取られた。
これを受けて、クラウンはこう考えた。
そうか、確かにあのまま決めきったら、八百長がバレバレか。
ちゃんと戦って、その上で敗北するという筋書きが欲しいのだ。初動で一気に叩き潰した、では不意打ちの印象が強いだろう。
「……来ないのかい? じゃあ、こっちから行くよ」
ずん、と無造作に一歩踏み出す。
間合いの管理、制空権の削り合い。そんな武道武術の概念を嘲笑うかの如く、悠々自適に前へ歩く。
そしてスティーシーの間合いに侵入した瞬間。
スティーシーの右足が一閃される。
前蹴り。
狙いは鳩尾。
緊張感をいや増す間合いの詰め方から、爆発するかのようなその一撃。更に体重移動のタイミングを狙いすますことで回避も許さない。
前蹴りのリーチの長さも相まって、その一撃はまさに『狙撃』。
クラウンの鳩尾に狙撃が突き刺さり、その体が後方にたたらを踏む。
そのついでに、ぐしゃり。
「~~~~~ッ!!!」
前蹴りの為に伸び切ったスティーシーの脛に振り下ろされた手刀。
硬いはずの前面部をまるで意に介さず、関節を1つ増やした。
激痛とバランスの崩壊により、スティーシーがダウンする。
それを見たクラウンも、ここはダウンのしどころかと察して地面に寝転ぶ。
スティーシーの間合いに侵入してからここまで、0.5秒も無い刹那の攻防。
その結果は、世にも珍しいダブルダウン。
実の所、前蹴りを魔力で防御していたクラウンはほとんどノーダメージだったのだが、時間が無さ過ぎて手加減が雑になってしまった結果、スティーシーの足を盛大にへし折ってしまった。
これでも結構力を抜いたつもりだったのだが。
地面に寝転んだ体制のまま、スティーシーを観察する。
激痛に悶えているようだが、その全身からはまだまだ闘志が立ち上っている。折れた足をどうにかしてくれれば、彼女はまだ戦闘可能だろう。
さて、そうなるといかにして自分を戦闘不能に演出するかだ。
幸い、先程の攻防は魔法使いの視点で見てもなかなかの早さだった。戦闘に疎い一般人が遠目に見た限りでは、その詳細な内訳は判別できないだろう。
となると、演出さえできればこちらが負けたことに出来る。
視界の端で、審判がやって来たことを察知する。
あまり時間は無い様だ。これで行けるかは微妙だが、とりあえずやってみることにして、クラウンは魔法を発動する。
「大丈夫か?」
その審判の声掛けに返答せず、うつぶせにうずくまったままで、小刻みに震えつつ、透明な液体を口からぶちまける。
そして、震えを止め、力を抜いて地面に寝そべった。
それを見た審判は。
「勝負あり! 挑戦者、戦闘不能!」
◆◇◆◇
担架で運びこまれた控室にてケロッと復活したクラウンは、今回の自分は相当うまくやったのではないか? と自画自賛に浸っていた。
まああの審判が八百長について知っていた可能性もあったので、その場合はただただ忖度されたという事になるのだが。
「邪魔するよ」
そんな控室に入って来た男、ナリヌイ。
そして見覚えのない女性が1人連れ立っていた。
「ちゃんと持ってきたんだろうね?」
「ああ、勿論さ。だが、その前にちょっと話がある」
「話?」
少し長くなるのか、ナリヌイは適当な所に腰かけた。
「今日の試合、お前、めちゃくちゃ手加減してただろ」
「勿論。ちょっと力んじゃったけどね」
「おいおい、ちょっと力んで足折ったのかよ」
「折れた方が悪いってもんさ」
「違いない。なぁ、具体的にどれぐらい加減してた?」
「全力を100とすると……2か3って所かね」
「マジかよ」
「大マジさ」
それを聞いて苦笑するかのような声を上げた後、ナリヌイは続ける。
「本題だ。お前、俺らと一緒に来ないか?」
「……勧誘かい?」
「そうだ。お前ほどの実力者、その辺にほっぽっとくのは勿体ねぇ。ウチに来てその力、存分に振るって見ないか?」
その言葉を聞いて、数秒沈黙した後。
「悪いね。私はもう売約済みなんだ。今いるところは居心地も良いし、可愛い妹もいるしね」
「ちぇっ、そーかよ。やっぱ有望株は大抵そうだもんなぁ」
ほれ、といつもの麻袋を渡してきた。
なのでいつも通りに中身を検める。
「あん?」
「なんだよ?」
問いかけを無視して、テーブルに中身をぶちまける。
その中身は金貨10枚。今日は負けたのはファイトマネーが無いのは事前に聞いていたが。
「何か文句でも?」
「ああ、大ありだね。何だいこりゃ。ぺディール金貨じゃないか」
この大陸にて現在一般的に流通している通貨は、『グレゴリオ金貨』と呼ばれる物である。
これは4代前の教皇、グレゴリオ1世が発案・発行した通貨で、戦国時代での扱いに特化した高い金含有率を特徴とする貨幣である。当初は金貨だけだったのだが、教国の勢力拡大と共に使用可能な地域が増え、より細かい単位の貨幣が求められたことから、銀貨と銅貨も同じデザインで発行されている。
そのため特に断りを入れない限り、金貨、銀貨、銅貨といったら『グレゴリオ貨幣の』という暗黙の了解がある。
さて、今回クラウンに渡された『ぺディール金貨』と言うのは、主に大陸南方で使われていた通貨である。
教国の勢力圏は勿論、今や連盟の加盟国でも使えるグレゴリオ金貨だが、それでも教国の敵対勢力は存在するし、そういう勢力のお膝元ではグレゴリオ金貨は使えない。使えたとしても、支払いは割高になる。
そんなときに主に使われるのがこのぺディール金貨な訳だが、当然加盟国であるこの国においてはほとんど用無しの金貨だ。
おまけに金含有率もグレゴリオ金貨と比較して低く、地金としての価値さえ劣る。
金貨であることは間違いない。
だが、これでは支払いには足りない。
「俺は『金貨』としか言ってないぜ? なのに文句を言われちゃあ、契約違反ってもんだ」
「ふーむなるほど、確かにその通り。で? このぺディール金貨を使える店ってのは、この国にあるのかい?」
「あるともさ。両替商だ」
つまり、無いという事だ。
「わかったわかった。なるほどね、つまりアンタらは、この私を舐めてるって訳だ」
「その通り。さ、わかったらとっとと失せろ」
「有難い」
そう言ってのけたクラウンに対して、ナリヌイは怪訝な顔をした。
一見して、文脈が繋がっていないからだ。
「いやね? 私としても、正直気が引けるのさ。相手が筋を通すって言うのに、こっちが無法に振舞うのはね。そっちが無法をしてくれるんなら、こっちも気兼ねなく無法にやれる」
「ほーう? おい」
ナリヌイと連れ立ってきた女が、間に入って構える。
その全身から立ち上るのは、間違いなく魔力。
「そいつは……」
「前の女王さ。闘技者としては死んだも同然のこいつを、うちの主催者は慈悲深くも拾い上げ、世話してやってるって訳だ」
なるほど。魔力を使えるのであれば、そりゃあ絶対的な強さぐらいはあるだろう。徒競走に乗馬で出場する様なものだ。
「ま、そもそも勧誘を断った時点で、お前は抹殺対象でしかないんだけどな。やれ」
前女王がクラウンに襲い掛かる。
魔力を纏い、人知を超えた身体能力を得て、その上で凄まじい技量を有する前女王。300を超える戦績からなる重厚な経験の引き出しは、いかなる状況でも動揺しない鋼の精神力に繋がる。
そして前女王は、首から上を失って死んだ。
「……は?」
「なんだ。ただの魔力持ちか」
適当に手首を振って、血糊を払うクラウン。それを信じられないとばかりに見るナリヌイ。
「残念だったね。魔力があるだけの半端者じゃあ、魔法使いは倒せないよ」
「ま、魔法使い……?」
魔法使い。人類種のハイエンド。教会が崇め集める、使徒。
「じゃ、皆殺しにして……金貨10枚だけ貰おうかな。その前に、これは返しておくよ」
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高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。
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賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。
アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。
小説家になろうにも投稿しています。
なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。
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坂上は彼らを拾い、ユニークスキル【酒保(PX)】を発動する。
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#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
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追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
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